宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

星の隣人たち(3) 接触!ダリアン人

2017-03-15 | Traveller
ダリアン人の身体的特徴
 太古種族によってテラの約半分の表面重力の惑星に連れてこられたダリアン人は、30万年の間にその体を高く、細く変えていきました。純血のダリアン人の身長は2.1~2.3メートルに達し、ソロマニ人など他人類の血が混じっていても2.0~2.2メートル程になります。平均体重は男性78キログラム、女性は73キログラムですが、これはソロマニ人なら36キログラム程度しかないのと同じです。
 ダリアン人は皮下脂肪層が薄く、寒さに弱いように見えます。しかし彼らは摂取した食べ物を栄養や熱に変える能力に優れていて(食事量さえ確保できていれば)寒さを苦にしないだけでなく、その代謝能力は日頃減量に勤しむソロマニ人やヴィラニ人女性の羨望の的となっています。同時に、飢餓に強く発汗も少ないという特徴も持ち合わせています。
 遺伝的に低重力に適応したことはすなわち、高重力世界への入植には不利となるということです。生活のあらゆる面での不快感どころか、心肺機能への過負荷が寿命を縮める場合すらあります。この問題には医薬品の常用や、脆弱な骨格を支えるための外骨格機器の装着で対処されています。
 ダリアン人の肌は金色か灰色がかった黄色ですが、これは日焼けすることなく紫外線から体を保護するために有効です。また、白もしくは銀色の髪の毛も熱を反射するためにあります。ただしソロマニ人の血を引くダリアン人は濃い肌や髪の色をしている場合があります。
 自然と調和して生活していた期間が長かったためか、彼らは帝国人と比べて視力・聴力・反射神経に優れていて、特に印象的である尖った耳と合わせて「エルフ(古代テラの伝承に出てくる妖精)」の異名を持たせる理由になっています。加えて、母星のレトロウイルスの影響で高地の高濃度オゾン環境でも生活することができます(黄金時代にそれが解明されたので、ソロマニ人入植者たちもレトロウイルスの接種で同様の特性を得ています。よって現在のダリアン連合に住む全人類はこの特性を持ちます)。
 ダリアン人の約4割が両手利きまたは左利き(※両手利き2割・左利き4割・右利き4割とする統計もあります)のため、彼らの装置設計はどちらの手でも利用しやすいようになっています。これは解剖学的には、ダリアン人は左右の脳を両方とも均等に扱えることを意味し、彼らの優秀な数学的才能や創造性・歌唱力の高さもこれによるものです。
 彼らの骨盤は男女双方ともヴィラニ人より広いため、梁などの狭い場所での歩行は苦手としていますが、決して平衡感覚が劣っている訳ではありません。

ダリアン人の人生と家庭
 ダリアン人の妊娠期間は44週で、新生児は比較的脳が多い状態で生まれてきます(そして前述の骨盤構造が安全な出産を助けます)。そのため言語能力や運動能力は急速に発達し、出生後12週程度で走ることが可能になります。
 22歳から40歳ぐらいまでが彼らの身体的全盛期です。その後は緩やかに衰えていきますが、先天的な抗酸化体質によって温暖かつ低重力環境に居住しているのなら軽く100年は生きることができます。一方、寒冷地や高重力環境では心身に負担がかかって寿命が60年まで縮む場合がありますが、抗老化剤(アナガシックス)による寿命延長は可能です。
 ちなみに、晩年のダリアン人の多くは肉体的には健康でも骨粗鬆症に苦しみます。

 ダリアンは一夫一婦制の社会ですが(興味深いことにダリアン文化に染まったアスランも一夫一婦となっています)、結婚するまでは性交渉も含めて様々な相手と関係を持つことが奨励されています。そしてその中から(異性に限らず)最良の伴侶を決めたら、その後は終生添い遂げるのも特色と言えます。彼らの寛容さと我慢強さゆえに離婚は非常に稀で、感情を出さないのが美徳なので情熱的な結婚生活というのもあまり聞かれません。
 各家庭は平均2~3人の子供を持ち、子の姓は父親のものが生涯受け継がれますが(婚姻による変更もありません)、代わりに母親は子に「幼名(birth name)」を付ける権利を持ちます。ちなみに彼らの名前は「姓・名」の順で、その前に称号が足される場合もあります(※社会身分度10+)。また幼名とは別に成人後に自ら決めて名乗る「選択名(taken name)」があり、成人は姓と選択名を合わせて名乗ります(他人から姓だけで呼ばれることもありません)。「姓・幼名・選択名」の3つが揃って書き込まれるのは身分証明書ぐらいです。
 子供たちは年長者や地域社会に敬意を持つように、感情を殺して知識を蓄えるように教えられます。ダリアン人の子供たちは5歳(約6標準年)で公教育が開始され、以後12年間に渡って幅広く教育を受けます。子供たちの憧れの職業の定番は冒険家や軍人ではなく、研究者、学者、哲学者、教師です。
 やがて14歳(16.2標準年)の青年になると、自立に向けての準備が始まります。青年期の反社会的行動は、自分が社会の一員として他者との関係なしに生きられないことを理解するまで衣食住から切り離される形で罰せられ、それでも更生しないようであれば文字通り野垂れ死にするまで社会の恩恵には一切与れません。これは帝国人から見れば残酷なようですが、彼らが数千年間の生き残りの知恵から編み出した手法であり、実際には死に至るようなことはほぼありません(多くは死ぬ前に亡命を選びます)。
 成人年齢は大学を卒業する17歳(19.7標準年)で、この時点で家を出て自立することが求められます。そこから徴兵されるか就職するか大学院に進むかを選択し、約半数の若者が特定分野の学問を更に極めようとします。自立したとはいえ家族の絆はそのまま維持されて、老齢の両親は子や孫から面倒を見られるのが普通です。

ダリアン人の食事
 彼らは「楽園」の時代からずっと新鮮な野菜や果物を好んで食べていますが、その時代でも狩った野生動物の肉で栄養を補っていました。現代のダリアン人は全ての生命を尊重していますが、畜産による食肉は普通に行われています。ただし無闇な虐殺や、残酷な手法による屠殺は避けています。
 またダリアン人は工場で人工肉を量産できる技術力を持ちながら、ほとんどの人は有機的に育てられていない肉を拒みます。

ダリアン人の社会
 ダリアン人は家族よりも大きな集団への帰属意識に乏しく、特に恒星間国家の一員という意識は希薄です。しかしメイギズ以降に星系ごとに築かれた文化や習慣に多少の差異こそありますが、連合加盟星系の文明水準は驚くほど均一です。また、ダリアン人、ソロマニ人、アスランと種族が異なっていても同じ「ダリアン市民」と考えられます。全ての市民は平等に扱われ、職位の上下はあまり重要視されないので、経営幹部が平社員と友人関係となるのは別に珍しくありません。
 ダリアン人は科学研究に限らず何事にも徹底して完成度を追い求めます。加えてダリアン社会は協調性も重んじるので、仮に仲間を踏み台にして個人が大きな成果を挙げたとしても、集団全体で成し遂げたものより価値は落ちるとみなされます。
 ほとんどのダリアン人は仕事を愛していますが、余暇も大事にしています。彼らにとって最大の関心事は知識の追求で、趣味として大学に通い直して専門分野を更に極める者も少なくありません。他者と議論をするにしても、それは政治ではなく科学に関することです。また、旅行も好まれていて、ダリアン連合最大の産業が実は観光業なほどです。芸術は娯楽でも重要な役割を持ち、生の演劇や演奏会は非常に人気があります(逆にホロ映画などの「人工的な」ものは好まれません)。更に共同娯楽として、聴衆も参加する即興演劇や集団舞踊も人気があります。その反面、スポーツは娯楽としては地位が低く、集団競技はあくまで楽しむ程度に留まり、長距離走のような個人競技はむしろ精神修行の領域です。
 ダリアン社会は他者に対して非常に寛容的と知られていますが、彼らの忍耐にも限界はあります。窃盗・傷害・研究不正などの犯罪は無慈悲に処罰されますし、それは観光中の異国人であっても例外ではありません。彼らは平和主義者ですが、戦争を避けるための交渉が失敗に終われば、彼らは自身が持つ卓越性が科学面に限られないことを証明してみせます。
 ダリアン人にとって宗教とはあくまで哲学的命題であり、他種族で宗教団体が担うような活動(慈善行為や心理相談)は、それに応対する団体組織や親族関係で賄われます。ダリアン社会は多様性と寛容を重んじる一方で、個人の哲学と政治的信念とは厳格に区別されていて、特定の哲学が政治勢力となることを忌避する傾向があります。

ダリアン人の言語
 メイギズ以前は各盆地由来の5言語を公用語としていたダリアン人ですが、メイギズ以後はズローズ語(Te-Zlodh)が標準語となりました。なぜならメイギズからの大多数の生存者がズローズ(※の海底都市)に居たからです。
 ズローズ語は現在全てのダリアン人が話せますが、各世界ごとに訛りや方言が存在します。また、ソロマニやアスラン言語からの借用語も取り込まれています。
 ちなみに、ダリアン連合内のアスランは社会に同化する一方で自らの言語は守ってきましたが、近年では交易面を考慮してダリアン語(もしくは加えて銀河公用語)を学ぶようになってきています。

ダリアン人の技術
 星図に記された「TL16」の字に期待を膨らませてダリアンを訪れた観光客は、現地で大いに面食らうことになります。TL16は過去の遺物となっていて、実際に市場で流通しているのはジャサント産のTL13程度の製品がほとんどです。連合内の他の星系では生産基盤があまり整っておらず、それ以上の水準の物品は主に帝国からの輸入品となります。ただし兵器と造船の分野では質の高いTL15のものが製造されています。
 ダリアンの製品は人間工学に基づいた曲面で構成されているのが特徴です。そして修理が容易になるようにモジュール構造で作られていて、数十年分の修理保証を付けて販売されるのでかなり高価です。しかしこれは苦難の時代での資源節約から生まれた文化です。帝国からの輸入品は安価ではありますが、ダリアン人には「使い捨ての粗悪品」という悪い印象があります。
 もう一つの特徴は、あらゆる回路が電磁波から保護されていることです。それが例え電気髭剃りのような小物であってもです。

通信技術:TL14
 全盛期のダリアン人は中間子技術を通信に利用し、兵器転用はしていませんでした。技術を取り戻した現在でもそれは変わらず、星系内には中間子による軍事通信網が張り巡らされ、加えて旧式ながら信頼性の高い光ファイバーで二重化されています。一方でメイギズ以降に通信衛星が廃れたため、個人通信は低軌道距離(500km)の範囲内で、ただしそれでは大量の電力を消費するので実際はその10分の1程度に抑えて直接通話が行われています(※『トラベラー』の無線通信は、携帯電話普及以前のトランシーバー的なものが想定されているので注意が必要です)。
 ダリアン連合の通信網を独占するズローライル社(Zloril)は最近、自動応答サービスを開始しました。これは事前に利用者の容姿や個性をコンピュータに取り込んでおいて、通話を求められた際に仮想上の「自分」が高度なシミュレーションに基づいて応対(丁重に断るなど)をしてくれるものです。

電子技術:TL14
 前述した通り、ダリアンの電子回路は電磁波に耐えられるように防護されています。導電回路は廃れ、電磁波に強い結晶演算装置(crystal processors)を光ファイバーで結ぶやり方が採用されています。必然的にダリアン製のコンピュータはスピンワード・マーチ宙域で最も頑丈となりましたが、帝国製のコンピュータとは互換性がありません。データの格納についても複数のホロクリスタルに多重保存するのは当然で、政府機関や大学のコンピュータは地下数十キロメートルにある深度保管施設に中間子通信(に加えて光ファイバー)で送って複製データを保管しています。
 ダリアン人は製造業や建設業でロボットを活用していますが、それらは特定の用途に特化されたものです。汎用ロボットや擬生物型ロボットは非効率的とみなされ、鉱業や農業分野でも自律型ロボットは利用されていません。軍事用ロボットも乗っ取りの懸念から禁止されています。

エネルギー技術:TL15
 メイギズ以前のダリアン人は、大気汚染や原子力事故の反省から無公害の核融合技術への傾斜を加速させ、最終的には反物質炉の実用化一歩手前まで漕ぎ着けていました。しかし主星テーニス軌道上の施設はメイギズの際に消滅し、マイアの実験炉は電磁波による停止後に再起動をかけたところ爆発四散しました。
 メイギズ以後の各植民星系は様々な手段(水力・陽光・地熱・風力など)で電力を調達して、核融合炉の復旧が可能になるまでしのぎました。その間、節電技術は大いに発展しています。現在ではあらゆる電力は核融合炉から賄われ、ダリアン製の核融合炉は市場で最も小型化されていることで知られています。

医療技術:TL14
 ダリアン人の存在は生態系にとってそもそも異質であったため、彼らは医学を発展させる必要もなければ、発展させるヒントにも欠けていました。やがてダリアン人が惑星環境に馴染むと病に冒されるようになりましたが、本格的に医学が進歩したのはソロマニ人の到来以降です。彼らが持ち込んだ衛生学や抗生物質の概念は、ダリアン人にとって革命的でした。
 やがて遺伝子工学の発展によって植物由来の有益な医薬品の開発が進み、それらの品種の多くは(※植民星に移植されていて)メイギズを生き延びました。現在では多くの病気が新生児時の予防接種によって克服され、臓器や薬用植物のクローンを作るための装置は連合政府が資金を出して各世界に置かれています。

輸送技術:TL14
 ダリアン連合の多くの世界では、貨物輸送に地下鉄道が(地上を大型の物体が行き来するのは美しくなく、環境にも悪いと考えているのです)、個人輸送に反重力機器が用いられています。メイギズの悲劇の経験から反重力機器は滑空翼と一体化し、急に機能を停止しても無事に着地できるように設計されています。海では未だに帆船が見かけられますが、これは趣味で使われているものです。
 ダリアン製の宇宙船は宙域内で最も進歩していると言われています。ソロマニ様式に似ているのは元々ソロマニ人の宇宙船から技術を得たことに由来しますが、ダリアン人自身もソロマニ式の設計を好んで導入しています。デイリーエンやマイアの造船所はTL15艦船を造ることができ、ジャサントではほとんどの民間用のTL13船舶が製造されています。彼らはその気になればジャンプ-6の船も造れますが、国家規模が小さいので需要はジャンプ-3以下に集中しています。
(※GDW版とマングース版で貨物輸送に使われる「tube」の解釈が異なっているような気がします。アメリカ英語では「管・筒」ですから未来想像図にありがちなあのチューブ鉄道になりますが、これはイギリス英語では「地下鉄」の意味なので、そちらの方向性で設定が補強されてしまった感があります)

武器技術:TL15
 ダリアンはありとあらゆる最先端の兵器を製造・輸出しています。これらは極めて高価ですが、その信頼性と耐久性は一級品です。さすがにTL16の武器の入手は無理ですが、磁気ライフル、バトルドレス、フュージョンガンといった帝国では入手が難しい兵器ですら購入可能です。これらはあくまで輸出品なので一般のダリアン市民は所有が禁止されていますし、製造元が直接に国境外で商品を引き渡すよう厳重に管理されています。


【参考文献】
Alien Module 8: Darrian (Game Designers' Workshop)
GURPS Traveller: Behind the Claw (Steve Jackson Games)
GURPS Traveller: Humaniti (Steve Jackson Games)
Alien Module 3: Darrians (Mongoose Publishing)
ジャンル:
その他
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