宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

宙域散歩(1.6) 268地域星域(詳細編2)

2012-05-09 | Traveller
ジュディス Judice 1337 E9B2000-8 低人・非工・非水 G Cs 研究基地η
 この星の環境は既知宙域内でも最も過酷なものの一つです。地表は想像を絶するほどの不毛な荒れ地で、気体の硝酸からなる腐食性大気が岩や砂を焦がします。「降雨量」は少ないものの、それは文字通りの酸性雨で、硝酸の「海」に流れこむ前に大地にぎざぎざのクレバスや渓谷を刻み込みます。重力は標準的で、平均気温は33度となっています。
 居住に向かないジュディスはあらゆる政府、企業、個人が1100年代まで所有権を主張しませんでしたが、最近になって硝酸海の地獄のような環境下で原初的な、しかしとても丈夫な生命体が発見され、異星生物学者たちの興味を惹きつけました。
 1103年に帝国はこの興味深い生物の調査のために、研究基地エータをこの惑星で最大の海の沖合に建設しました。
(※研究基地がTL8で稼働しているとは考えにくいので、研究員が外部からの輸入に頼らず確保できる生活水準がこの程度、という意味なのでしょう)

トレサロン Trexalon 1339 B361851-C 高技・富裕 G Na
 トレサロンは赤色矮星を周回するガスジャイアントの衛星です。水界は乏しく、南極の氷冠の下で地熱に温められて見つかるぐらいです。当然ながらこの衛星の動物は丈夫なバクテリア程度で、植物も苔類だけが地表で何とか生き残っています。その環境の過酷さゆえに、502年に帝国偵察局がこの星に鉱石や水晶の豊かな鉱脈を見つけなければ、入植は進まなかったかもしれません。
 探査が終わってから20年を待たずして6つの鉱業会社が衛星全土を所有し、200年後には5000万人が地下やドーム都市に住むようになっていました。鉱業会社たちは585年にトレサロン技術共同体(Trexalon Technical Consortium)を共同出資で結成し、当初はトレサロンの統一政府として統治していましたが、数十年後には7都市の富裕層にそれぞれの都市の内政権を売却しました。その後のTTCは独立都市群を束ね、星系内全ての宇宙港を管理し、恒星間取引や外交を統括して、トレサロンにはなくてはならない組織となりました。
 各都市の内政権を得た富裕層はやがて世襲の特権階級として君臨するようになりましたが、TTCから十分な利益分配を得ている都市群は、市民階級に対して無税で様々な公共サービス(医療、教育、運輸、水や空気の供給など)を与えることができています。トレサロン社会が全体的に保守的で変化を好まないこともあり、一般市民は都市政府やTTCに対しての従属関係に満足しています。
 トレサロン経済は鉱物精錬や耐久消費財製造による好景気に沸いています。ハイテク商品や(農世界連合から)多くの農産物は輸入しなくてはなりませんが、それ以外の分野ではトレサロンは自給が可能です。労働人口の4分の3はTTCに雇用され、大規模な鉱山や工業団地で働いています。
 各都市と防衛契約を結んでいるTTCは、星系外の軍事的脅威から自星を守るために惑星防衛艦を地元で建造したり、ソード・ワールズ製の巡洋艦の購入もしています。
 自分たちの拡張主義的野心の最大の障害が、268地域星域に影響力を広げつつある帝国だと考えているTTCは、反帝国的な外交政策を展開しています。TTCはソード・ワールズ連合と緊密な経済面や軍事面での連携を深め、帝国への嫌悪を共有しています。当然の結果として親帝国派のコレース(1237)に対しては、星域の主導権を巡って激しく敵対して「冷戦」状態にあります。
 帝国の施設や船を攻撃すれば強大な帝国軍の介入を招くことはTTCもわかっており、反帝国活動は控えめに行われています。しかし、TTCが親帝国世界での反乱や様々な問題などの裏で糸を引いている、コレース行きの船を特殊部隊が襲撃するために星域各地に秘密基地を建設している、などという噂は常にあります。さらに、星域内で海賊船が急増している背後にTTCがいるとも疑われています。噂によればトレサロンでは、帝国やコレースの船を襲う海賊船に対して、略奪品の売却、燃料や必需品の補給、新しい乗員の確保、修理施設の利用の面で便宜を図っているというのです。確かにアウトリム・ヴォイド方面から流入する海賊にとって、この星系は重要な補給拠点となりうる位置にあるのは事実ですが、今のところこれらの噂は立証されていません。
(※悪名高いマクレラン・ファクターズ社は、帝国企業でありながらこのトレサロンに「前線基地」を持っているので、TTCと共同歩調を取っている可能性はあります)

モトモス Motmos 1340 B68468B-5 N 低技・農業・肥沃・非工・富裕 Cs
 農業が盛んなモトモスは、スピンワード・マーチ宙域の端に位置する星系です。主星は冷たい赤色星ですが、赤色矮星の伴星の存在によって温暖な気候が維持されています。モトモスには小さな海や湖の連なり、そびえ立つ山脈、青々とした谷、色鮮やかな砂漠など、美しい自然が豊富です。
 帝国偵察局によってモトモス星系全体の探査が完了したのが502年のことで、その14年後には入植が始まりました。モーラ星域から来た400人強の最初の入植者たちは、「基本に戻る」ことを理念とした『分離主義者(Separatists)』と呼ばれた人々でした。彼らの哲学は自然保護を重んじ、知的生命は「大地の上で」自給自足で生きるべきで、科学技術も必要最低限にすべきと考えていました。そして彼らは、入植地で自給自足の農業集落を築き、意図的にTL5で技術開発を停止させました。厳しい環境保護法を施行し、実質的に全ての武器所持を禁止し、新たな移民の受け入れも控えました。
 現在の700万人の住民の大半は最初の入植者の子孫です。そのほとんどは主要大陸に点在する小さな農業集落に住み、唯一の大都市である首都キンニパック市(Kinnipac)には13万人が居住しています。宇宙港はそのすぐ近くに外世界資本によって建設され、運営されています。
 地元経済は農業を中心とし、268地域星域全域に穀物、果物、根菜類といった多種多様な食品を輸出しています。赤道地方の海や湖の沿岸部では耕作や牧畜が盛んで、険しい山の多い温帯の内陸部からは優れた材木が産出されます。産業発展に役立つ様々な鉱物資源も豊富ですが、住民は採掘を意識的に避けています。さらに分離主義の考えに合わせて、長距離通信は電話か電報であり、輸送手段は電気推進の地上車や列車、蒸気帆船や片手で数えられるほどのプロペラ飛行機に限られています。
 モトモス政府は、技能と分離主義哲学の試験に合格した官僚たちに導かれています。分離主義を保つために、政府は日常生活のあらゆる面で厳しく住民を管理します。環境破壊を防ぐ目的で技術開発を禁止し、人口増加を抑え、農産物の品質管理基準を満たさせるために、官僚機構は膨大な量の規制を厳密に、そして杓子定規にかけています。このため、小さな集落でさえも管理と法執行のために大量の警察官と下級官僚を必要とします。官庁ごとの権限は重複・混乱している面も多く、モトモスの迷宮のような官僚機構を相手にすると退屈で、非常に苛立たされることでしょう。ただし住民は出生時から分離主義の教えを受けているので、これが圧政的であるとは感じていません。
 780年にモトモスとターサス(1138)とターカイン(1434)は農世界連合を結成し、その本部はキンニパック市の外れに置かれました。840年にダリア(1435)が食糧問題の解決のためにターカインの征服を試みた教訓から、人口や技術力で潜在的侵略者に劣る農世界連合は農産物を「武器」として用いるようになりました。連合は加盟星系が侵略を受けた際には、侵略星系に対して食料輸出を全て停止するようにしたのです。
 しかし960年にターカインが海賊幇助を理由に帝国の介入を受け、風向きが変わったことを感じたモトモスは帝国の庇護下に入ることを決めました。963年に公式に帝国属領となり、その4年後には帝国海軍基地が建設されました。基地はキンニパック地上宇宙港に隣接し、軌道上には大規模な修理補給施設、衛星や他惑星には小規模ながら訓練施設や弾薬庫や早期警戒ステーションが築かれています。ただ、モトモスの住民自体は平和主義に傾倒しているため、いかなる種類の星系軍も存在しません。
(※ちなみに農世界連合が使用する大型貨物船は、マクレラン・ファクターズ社から提供を受けたものです)

ノクトコル Noctocol 1433 E7A5747-6 非水 G Na
 いつ何のために自分たちがこのノクトコルにやってきたか、住民の誰もわかりません。しかし調査の結果、彼らの起源は-1987年にこの星に不時着した第二帝国の探査船コーンメイラ(Connemara)の乗組員の子孫ではないかと考えられています。漂流者たちは誰にも発見されることなく(※実際にはダリアン人やソード・ワールズ人による星系探査がなされていたのですが、惑星ノクトコルには興味を持たれませんでした)、遭難から2500年経った501年にようやく帝国偵察局の探査で「救援が来た」のです。
 その間彼らは過酷な環境に適応した特徴的な社会を形成していました。TL6まで退行した住民は、異種大気を逃れるために地下に退き、第二帝国期のソロマニ様式の都市を建設し、活発な火山活動で生じる地熱から電力を得ていました。大気に充満した塵により無線通信やレーザー通信は不可能なため、その代わりに有線電話を埋設しました。TL6ではノクトコルの大気圏内を飛行できる航空機は造れないので、地下都市間を結んでいるのは最高時速160kmの電気鉄道です。その環境から孤立主義的になった彼らは都市ごとに独自の風習や言語を発達させたため、他都市からの訪問客すら外世界人のようです。なお大半の住民は極端に訛った古いリム方言の銀河公用語を話しますが、現在の公用語と共通する部分は25%程度しかありません。
 ノクトコルの住民は、水耕農業と鉱業と大気や大洋からの資源抽出で自給自足経済を営んています。これで十分人口を支えてはいますが生活水準は低く、外世界の商品を買う余裕はありません。そもそも孤立主義的思考から宇宙港が建設されず、恒星間通商路から外れているせいもありますが。ノクトコルを訪れた多くの宇宙船は、伴星軌道上に2つあるガスジャイアントで燃料補給だけをして去っていきます。
 惑星政府は議会制民主主義です。住民はそれぞれの都市人口に比例して定められた数の議員を選挙で選び、一院制の議会を構成します。脆い地下都市に住む関係上、法の執行は必然的に厳しくなるのですが、個人の権利は可能な限り尊重されます。ただし銃の個人所有は公安上の理由から禁止されています。

ターカイン Tarkine 1434 C466662-7 S 農業・非工・富裕 A Cs 帝国の傀儡政権
 ターカインは香辛料や家畜の生産で有名な、農世界連合に加盟している農業世界です。
 標準的な大気、温暖な気候、豊富な水、さらには壮大な熱帯雨林や息を呑むようなジャングルに覆われた谷間など、低重力で育まれた驚くほど繊細で多彩な動植物の生態系が織りなす、268地域の中でも最も美しいと言われる惑星です。慢性的な政治や治安の問題にも関わらず、ダイビングやサファリ体験、プロペラ機による空中観光ツアーを楽しむ観光客が多数やってきています。ただし観光客は、壊れやすいターカインの生態系を守るために、宇宙港の境界線外ではまず(厄介な)除染を行うことが求められます。
 840年にターカインや連合の農業生産力を手に入れようとしたダリア(1435)が、ターカインに侵略を行って政権を奪いました。長く悲惨な戦争の末に、この時は2つの強大な消費者世界(コレース(1237)とフォリン(1533))の干渉によりダリア軍は引き上げました。
 960年には、当時のターカイン政府が(主にソード・ワールズ系の)海賊船に人員や技術や燃料を供給する見返りに、略奪した物品の分け前を受け取っていたことが発覚し(この闇資金は国庫や政治家の懐を豊かにしていました)、帝国当局は特殊部隊を派遣して海賊船を破壊し、政権を交代させ、監視目的でこの地に偵察局基地を建設しました。
 現在、帝国の属領となることを良しとしない住民の継続的な蜂起や、ターカイン独立同盟(Independence on Tarkine Alliance, IoTA)による帝国の観光客や偵察局基地を狙ったテロ活動により、トラベラー協会は世界をアンバーゾーンに指定しています。

ダリア Dallia 1435 B8B5883-9 非水 Cs
 遥か昔の、いつ頃建設されたか不明の地下都市にダリアの全住民は住んでいます。太古種族の専門家は、この都市に用いられた技術は太古種族のものとは異なると主張しています。住民は危険な地表で化学物質を採取し、売却して利益を得ています。
 ここの住民は自分一人で、生命維持装置と水抽出装置を維持することができます。ガス弁が弱まっただけで数千人の死を意味するこの惑星では、住民は安全に関することから頭が離れることは出来ませんが、他の点ではそこまで厳格ではない社会です。しかし親帝国(そして親コレース)の政府に不満を持つ少数派は、帝国への抵抗活動を活発にしています。
 ダリアの腐食性大気により、惑星表面に宇宙船が着陸するのは安全ではありません。したがって、ダリアを訪れた全ての船はヘブンズゲート軌道宇宙港(Heaven's Gate Highport)に入港します。静止軌道上のこの軌道宇宙港は、長さ6.5キロメートルの円筒体を中心にして2本の巨大なリングが合わさって構成され、800万人がここで生活しています。
 ダリアは食糧問題の解決のために、かつて農世界連合の乗っ取りを行おうとしました。その時は失敗に終わりましたが、今もまだ連合世界への侵略を狙っているという噂があります。

タロス Talos 1436 E333532-9 非工・貧困 Na
 メイン上の重要な位置にあるこの星を所有するタロス家は、自分たちの今の生活様式を維持できる程度の商取引で満足しているので世界の発展は望んでおらず、宇宙港の拡張にも難色を示しています。しかし、ガスジャイアントのないこの星系を訪れた宇宙船が海で燃料補給することに対しては、自分たちの贅沢のために法外な税を課しています。
レフリー情報:このタロスが最初に記録に現れるのは-147年のソード・ワールズ人探検隊のものです。それによれば、軌道上にあった青銅色をした未知の形状の宇宙船から威嚇射撃を受けたとのことです。同様の記録はダリアン人による帝国暦0年頃のものの中にもありますが、帝国偵察局が151年に探査に訪れた際にはそのような宇宙船は存在していませんでした。その船が再び現れたのは708年になってからで、通報を受けて到着した帝国海軍とソード・ワールズ軍が共に追跡したものの、10~12Gという途方も無い加速度で星系外に逃走されました。少なくとも自動化されていると思われるその未知の古代船はそれ以来400年間現れておらず、帝国もアンバーゾーン指定を1008年に解除しています。

ドーンワールド Dawnworld 1531 E885000-0 肥沃・未開 G Na
 ドーンワールドはその名の通り、海で単細胞生物が動き始めた若い世界です。大陸はむき出しで、火山性であり、空には軌道上のガスジャイアントが緑色に輝く姿を日夜見せています。ドーンワールドはテラよりは少し乾燥していて、少し大気が濃いですが、それを除けばスピンワード・マーチ宙域では最も「地球的な」世界の一つです。
 -982年にダリアン人がこの地に植民し、ダン・ダリアン(Dand Daryene, 新しい家)と名付けました。しかし、惑星の生物学的に未確認の理由により、ここで生まれた全ての男性の生殖能力が失われていることが発見され、入植地は-941年に放棄されました。ダリアン人科学者は原因の究明を行いましたが、-924年のダリアン主星の大災害により、入植地についての全ての情報は失われました(※恒星フレアの爆発で人口の8割が死亡し、電磁波によって周辺星系の電子機器の多くが破壊されました)。
 その後、-154年にサクノス(スピンワード・マーチ宙域 1325)がこの地をホディング(Hoding)と名付けて植民地化しましたが、彼らも問題に気づいて-118年に世界を捨てました。サクノスは問題を調査するために科学者を派遣する予定でしたが、第一次反逆戦争(※-104年から-88年まで争われたサクノスとグラムの戦い)の勃発で頓挫しました。
 288年にはこれらの失敗を知らなかった帝国の理想主義者の集団によって再々入植されましたが、やはり312年には放棄されました。
 481年、グヴァードン宙域から来たヴァルグル亡命者の集団は、無人の惑星だったこの地を見つけ、今までと同様に無人だった理由を知らなかったため、この地に落ち着きました。そして506年に、研究者が全ての事実をようやくまとめ、ヴァルグルはシュピレール(同 1927)に移住しました。
 610年に帝国が268地域星域を制定すると、ドーンワールドは帝国の保護下に置かれました。問題が解決されるまで、種族に関係なく移民は禁止されます。一方で、世界への訪問は人体に何ら被害を与えないように見えるため、禁止はされませんでした。
 600年頃から現在まで、この謎を解くいくつかの試みが帝国とソード・ワールズの科学者によってなされました。しかし、ソード・ワールズ連合のこの世界への領有権主張に絡む政治的圧力などによって、全て失敗に終わりました。

エリサベス Elixabeth 1532 B426467-8 N 非工 G Cs フォリン領
 0.3Gという低重力に、汚れた薄い大気、平均気温マイナス2度の寒冷気候と、エリサベスは快適な世界ではありません。しかし、広大な土地、波打つ海、自生の植物や動物の存在は、過密で永久凍土のフォリン(1533)から見ればまるで「楽園」でした。
 973年にフォリンの支配者となったチョーニ・ノーレップ(Chorni Norep)は、その2年後にこの星への入植事業を開始しました。彼女はエリサベスを本星産業の資源調達先にすると同時に、大勢の政敵を目の前から「消し去る」ために利用しました。2000人の入植者のほとんどはフォリンの反体制派で、面従腹背の姿勢をその後15年間続けていました。
 989年、ノーレップはフォリンの余剰人口をエリサベスに移住させる計画を発表しました。それに対し、エリサベスの住民は自分たちの「楽園」が何百万もの貧困層移民の「ゴミ捨て場」にされることに憤慨し、ついに決起しました。移民の受け入れを円滑にするために、当時Eクラスだった宇宙港を拡張するようノーレップは命じましたが、住民は非暴力的に非服従の姿勢で応えました。自らの支配体制を揺るがす恐れを感じたフォリン本星からは治安部隊が派遣され、抗議集会への武力行使も許可されました。結果、数百人が死亡する流血の惨事となり、それ以降表立った抗議活動こそ粉砕されたものの、住民はサボタージュや小規模のゲリラ戦で抵抗を続けました。そしてフォリン軍による一斉検挙で、一時はエリサベスの成人のほぼ半数が軍の臨時営倉に収監される(※人口が少ないので、これまで刑務所が建設されていませんでした)という事態にまで至りました。急造された営倉では衛生状態が悪化し、相当数の収容者が病気に罹って死に始めました。
 この状況はスピンワード・マーチ宙域中に報道され、親ソード・ワールズ政策を展開していたノーレップを排除する口実を得た帝国は、介入姿勢を採るようになりました。990年中頃、帝国はフォリン政府に対し、反乱勢力との和平交渉に応じなければ「人道上の理由で」軍事介入をすると警告しました。その後に調印された和平協定では、植民星がフォリンから独立しない代わりに移民管理を含む内政自治権を得て、フォリン議会に人口比よりも多く代議員を送り込める、とされました。そして全ての勢力が協定を確実に順守するように植民星は帝国属領となりました。
 エオス軌道宇宙港(Eos Highport)はエリサベスの少ない人口に対して過大な軌道港ではありますが、帝国はこの星域内で哨戒活動をする海軍艦船のための修理施設を必要としており、海軍基地や帝国機関の出張所を併設する形で、第四次辺境戦争停戦後から1100年にかけて帝国からの莫大な助成金を受けて建設されました。
(※海軍基地同士をジャンプ-6で結ぶ「海軍連絡網(Naval Couriers)」の運用面でも、エリサベス基地はファイブ・シスターズ星域方面とグリッスン星域方面を繋ぐ重要な位置にあります)

フォリン Forine 1533 D3129B8-A 工業・高人・非農・氷結 Na
 工業が盛んなフォリン星系には、主要惑星フォリンとその軌道に16億人、ドラガン・ベルト(Dragan Belt)と呼ばれる小惑星帯に計30億人、2ヶ所のトロヤ点に計13億人が居住しています。惑星フォリンは希薄な大気を持つ小さな極寒の世界で(平均気温は-146度)、自生の生命体はありません。地表はまるで一つの巨大ドームで密閉されているように見えますが、近づいていくと、住居や工場がとても高密度に整然と配置されていることがわかります。
 フォリン経済は輸出用の安い電子機器生産に特化しています。それらを恒星間市場に売却して得た利益を得られるのは住民の少数で、多くの住民は相対的に貧困状態にあります。持てる者は農世界連合から輸入された自然食品を口にできますが、持たざる者は政府から配給された無料ではあるが味気ない人造加工食品を食べるしかなく、「配給食は住民の死体から作られている」という悪趣味な冗談がしばしば囁かれます。
 フォリンの宇宙港は本来はAクラスなのですが、拡張工事に携わった建設労働者のストライキが暴動に発展し、宇宙港施設が広範囲に破壊された1104年以降はDクラス相当と判定されています。そして交通量の多さに対して受け入れられる規模が小さいため、管制の渋滞は慢性化してしまっています。
 1081年、抗老化薬で若さを保っていたチョーニ・ノーレップの独裁体制が暗殺により崩壊すると、現地警察に該当する「剣匠団(Sword Masters)」は、混乱するフォリンを治めるべく政治への不干渉の慣例を捨てて治安回復に乗り出しました。そして団の代表者である師範(Sword Lord)を中心とする政治体制に変わりました。剣と決闘による法執行という古めかしい体裁ではありますが、彼らは政治的権利のない住民たちのために公共サービスを維持しています。剣の評議会(Council of Swords)による「剣政体制」は帝国との友好路線を採りましたが、ソード・ワールズとの政治的緊張から帝国加盟は実現していません。

マータクター Mertactor 1537 B262732-B S Im 星域首都
 帝国領の最辺境に位置するマータクターは268地域星域の形式上の首都であり、マータクター侯爵(ことグリッスン公アヴァラヤ)の所領です。同時にこの星はグリッスン星域方面から続くXボート網の終端であり、グリッスン星域とファイブ・シスターズ星域を結ぶメイン上の商取引における重要な世界です。268地域星域の玄関口である非常に効率的なBクラス宇宙港には旅客船が頻繁に入港し、宙域中の批評家をうならせる美食の数々を楽しむことができます。
 恒星の可住圏内にある主要惑星は、直径3100kmと小さいながらも0.82Gの表面重力を持ちます。この矛盾は、惑星マータクターが既知宙域内でも極めて珍しい高密度で金属や重元素が集まって形成されているからです。惑星表面の7割ほどは「ドリスク(drisk)」と呼ばれている岩だらけの荒涼地帯で、森林の成長や入植者の拡張を妨げています。ちなみに、マータクターにおける1現地日は約14標準時間です。
 惑星の強い重力は人類の呼吸に適した標準大気を確保してくれると同時に、厄介な「ドリスク嵐」も引き起こします。ドリスク嵐とは突然に荒れ狂う強風のことで、ドリスク地帯の岩や小石を竜巻が巻き上げて周辺に文字通り岩の雨を降らすのです。ただし奇妙なことにこの嵐のほとんどはドリスク地帯で発生し、惑星内に点在するわずかな海と沿岸地域(合計で地表の2割程度)やその周辺の森林地帯は通常安全です。この危険な嵐さえなければ、マータクターは大量の金属や鉱物資源から莫大な富を得られていたでしょう。
 3100万人弱のマータクターの住民(その約1割は950年頃に帝国に雇われたアスラン傭兵の子孫です)は沿岸や湖畔地域に小さな町を作って居住しています。恒星間の政治課題は永続寡頭政体であるマータクター評議会(Mertactan Council)がグリッスン(スピンワード・マーチ宙域 2036)の貴族に上申する形でなされますが、内政面は主に家族間の討議や習慣に任されています。マータクターにおける「法律」はわずかで、他の星と比べれば退屈に見える文化を作り上げていますが、外世界人が住民の「家族法」に抵触して怒らせてしまうのはよくあることです。旅行者はここではなるべく文化的かつ保守的に振る舞うべきです。
(※マータクターの名の由来は、第二帝国の崩壊期にグシェメグ宙域の銀河核方向星域を荒らし回った海賊ヴィルヘルム・マータクターから、という非公式設定が存在します。また、この星系の人口倍率は「6」なので、残る3000万人は他惑星や小惑星帯に分散して住んでいると思われます)

タルチェク Talchek 1631 C7B1462-5 低技・非工・非水 A G Cs フォリン領
 タルチェクは平均気温が31度と高く、弗素と弗化水素酸から成る腐食性大気と、酸の海による居住向きではない世界です。それでも、価値ある化学合成物が大気から容易に抽出できることから、ダリアン人が-1000年頃に入植していました。その後入植地は放棄されて、彼らによって建設されたガス精製所は現在史跡として保存されています。現在全ての住民は、地上港も兼ねた密閉構造物に住んでいます。
 ずっと無人だったこの星が再び入植されたのは、975年のことでした。フォリン(1533)の独裁者チョーニ・ノーレップは、資源獲得と反体制派住民の流刑を兼ねてこの星に人々を送り込みました。同様に入植されたエリサベス(1532)で989年に動乱が発生すると、タルチェクの住民もそれに呼応して抑圧からの解放を非暴力で訴えました。フォリン軍の武力弾圧によって数百人の死者を出すなど騒乱は拡大していきましたが、990年に帝国の介入によって、独立は断念する代わりに内政自治権を獲得することができました。
 和平合意によって帝国属領となって以後、ノーレップの暗殺によるフォリン本星の混乱をも利用して、タルチェクは自治を徐々に拡大して独立同然の現在の地位を確立しました。タルチェクからの化学製品や銅の輸入が自星経済に不可欠であるフォリンは、それを黙認するしかなかったのです。
 十数年前に改築・改称されたバスティオン軌道宇宙港(Bastion Highport)は、その名の通り要塞のように外殻や武装や防御衛星に取り囲まれ、メインを旅する船の安全な避難所となっています。実はタルチェクの3つの衛星は海賊が隠れ家としていて、港を保持するために傭兵部隊や帝国海兵隊大隊が駐留しています。
 この世界は、大気の危険性や海賊の存在を理由にアンバーゾーンに指定されています。

ミラグロ Milagro 1632 E21178A-7 非農・氷結 Na
 古代ソロマニの言葉で「奇跡」というその名に反するかのように、低重力で希薄大気で、わずかな水界も平均気温-25度で凍りついているこの星の環境は過酷そのものです。
 700年代中期からここにはフォリン(1533)の流刑植民地が築かれ、犯罪者や政治犯のみが居住していました。990年にフォリンの植民地であるエリサベス(1532)とタルチェク(1631)で騒乱が起き、両星が自治権を拡大して帝国属領となった後、992年からフォリンはこのミラグロに棄民を始めました。惑星環境がとても厳しいのは周知の事実だったため、「入植者」たちは銃を向けられて「移民船」に乗せられました。
 ドームや地下の都市に押し込められた人々の2割は、飢餓や病気などで数年以内に死亡しました。それでも何百万人もの望まれない移民団が到着し続けたので、ミラグロの人口は増え続けました。フォリン軍の統治者は武器の個人所有を禁止した上で情け容赦無く弾圧を繰り返しましたが、反乱や食料を巡る騒動は日常茶飯事でした。
 1070年代後半には、ミラグロはフォリンの人的資源面でも財政面でも制御できなくなっていました。さらに、ミラグロの民衆の悲痛な声が帝国との外交関係を悪化させたため、1079年にフォリン政府は帝国に住民を押し付けるようにしてミラグロの領有を放棄しました。食料供給と法秩序が突如として失われたため、混乱に陥ったミラグロでは推計430万人が死亡しました。
 帝国当局は緊急援助を行い、秩序の回復に動きました。新政府は、帝国からの財政融資と助言に支えられた、試験によって選抜された官僚機構が担うようになりました。戒厳令は解除されましたが、些細なことでも無秩序状態に陥りかねない懸念から法執行は全面的に厳しいままです。当然新体制は人気がありませんが、大多数の住民は(フォリン支配の間にはそもそも無かった)個人の権利よりも秩序の維持が今は優先されるべきと妥協しています。帝国は準備ができ次第自由選挙を実施すると広報していますが、その機が熟すまでにはまだ数十年かかる見込みです。
 現在のTL7では9000万人のミラグロの住民を支えることはできず、帝国の援助なしに生き延びることはできません。多くの住民は、帝国の技術支援を受けた有機廃棄物の再生品や炭素小惑星で採取されたチョンプ(CHONP, 炭素・水素・酸素・窒素・亜燐酸の略)から作られた、食欲をそそらない合成食品を口にしています。
 帝国は過剰人口の解消こそが問題解決の近道と認識していますが、ミラグロの評判の悪さから大規模移民の受け入れ先はいまだに見つけられていません。むしろ、ミラグロからの逃亡を妨げるために、損傷と修繕不足のためにEクラス相当に低下している宇宙港機能の回復を帝国当局がわざと先延ばしにしている、とすら思われています。
 また、ミラグロの技術水準の向上も問題解決の糸口と考えられていますが、先進技術の急速な導入は社会的混乱をもたらすとの配慮で、慎重になされています。まず教育制度を劇的に改革し、先進技術を操る次世代の育成を進めてから、その後、1130年を目処にTL9まで進歩させる目標が立てられています。帝国当局がTL8への到達を認定するまではTL8以上の輸入品は禁止され、やがてTL9に到達した際には全ての規制は解除される見込みです。ただし、食料供給や健康維持など基本的人権に関わる分野の技術は例外とされています。
 一方で惑星経済はLSP社から提供される仕事に依存しています。現在、LSPの様々な生産プラントで労働人口の31%が従事しているのです。なぜLSPがそれだけの投資をミラグロに行っているか誰も知りません。しかし多くの人々は、それが帝国の法律を避けるためであろうと推測しています。

パガトン Pagaton 1634 C769873-4 低技・富裕 G Na
 パガトンは、様々な国々が自国をただ維持するだけで、戦争や大国化に関心がない古き良き低TL世界です。第三帝国初期のパガトンには、モーラ(スピンワード・マーチ宙域 3124)やトリン(同 3235)、デネブ宙域などから様々な集団が入植してきました。その頃の惑星は緑に溢れていて、それぞれの集団は別々の島に住み、あまり相互に干渉し合いませんでした。
 しかし600年頃から惑星は氷河期に入り始めました。スピンワード・メインの端という位置関係から交易は元々盛んではなく、さらに氷河期からの生き残りのために世界の資源の多くが振り向けられたので輸出も衰え、訪れる貿易商人はさらに減りました。その悪循環を繰り返すうちに、TL4まで技術水準は低下しました。
 この状況を打開すべく、パガトン史唯一の「共同の」惑星事業として(軌道上なのでどの国も直接利益を得られない)宇宙港建設が進められて、38国全てがこの計画に資金を供出しました。しかし主要輸出品が魚介類や毛皮という状態では外世界の関心を惹きつけることはできず、外貨を獲得しての大規模な再建には結び付いていません。
 人口はおよそ9億人ですが、居住に適した狭い地域の島々の人口密度はかなり高くなっています。そして食用の植物や海洋生物は、過酷な環境の赤道地帯のみに自生しています。

ビンジス Binges 1635 A800231-A 真空・低人・非工 Na
 ビンジスは大気も水もない岩だけの星と長らく思われていましたが、800年代初めにグリッスン(スピンワード・マーチ宙域 2036)の有名な投機家ミサリンコ・コリル(Mysalynko Ko'ril)の出資による探査で、この星にランサナムとズーカイ結晶(※両方ともジャンプドライブの製造に必要な鉱石)を含む著しく多様な鉱脈が発見されました。
 コリルはグリッスンの投資家たちから資金を集めてエクストラクト社(XTRACT Corporation)を設立し、812年にはBクラス宇宙港建設計画のためにグリッスン第一銀行(Glisten First Bank)から莫大な額を借り入れました。鉱業の専門家ではない彼は、採掘権を外部に売却した上で、鉱石によって得られた利益を宇宙港によって「上前をはねる」ことで、長期的な収益を得ようと考えたのです。株式市場の期待感は、多額の借入金にもかかわらず同社の株価を連日押し上げました。
 宇宙港建設は814年に始まり、818年に完了しました。その間に広範囲な地質調査が行われ、819年には有望な鉱脈がそれぞれ競売にかけられました。古参から新参まで様々な鉱業会社がビンジスの富を争い、百億クレジット規模の資金が飛び交いました。
 翌年から始まった採掘活動によって、821年には大量の鉱石を産出し始めました。ところが、全ての鉱脈がエクストラクト社が広報していたよりも遥かに小さな規模だったことが判明したのです。怒り狂った債権者は本社に押しかけましたが、コリルや役員たちは何処へと「長期休暇」に出発した後でした。更に悪いことに、社の口座の監査によって宇宙港を担保にいくつかのソード・ワールズ系金融機関からも借り入れを行っていたことが判明し、エクストラクト社の負債は推定で500億クレジットにも達していました。
 結局、役員は全て捕らえられたものの、コリル本人は捕まることはなく、取り戻されたのはわずかな金額だけでした。何千人もの債権者は一部でも損失を取り戻そうと、数十年に及ぶ法的闘争を開始しました。グリッスン第一銀行は宇宙港の差し押さえをしようとしましたが、帝国当局は当時ソード・ワールズに対して宥和政策を採っていたため、最終的に宇宙港を含めて星系の所有権がグリッスン第一銀行に移ったのは850年になってからでした。その頃には中小企業は破産し、大企業も債権回収を諦め、星系には何も残っていませんでした。
 そして銀行は、苦労して得たビンジスがジャンプ-1航路の袋小路に位置し、輸出する鉱石がない今、実際には何の利益も産まないことを思い知らされました。少数の管理要員を置いて宇宙港を保全しつつ売却先を探す懸命な努力が続けられましたが、結局875年には宇宙港機能の維持を断念しました。
 荒廃していた宇宙港にようやく買い手が付いたのは1053年のことです。コレース資本のドロイン系企業であるニルクアズート社(Nirkuazh't)は、宇宙港を1000トン級の造船能力を備えたAクラス港に一新して1057年に再開港させました。ドロイン美学と運用経費の削減を兼ねた内装は美しくもいささか窮屈ではありますが、新宇宙港はスピンワード・メインを旅するドロイン商人に好まれ、やがて他の種族にもその良さが広まっていきました。
 訪問客による犯罪行為に対処する法的根拠を得るため、ニルクアズート社は1058年に星系「政府」を設置しました。市民権は会社の株主に限定されましたが、同社の株式は非公開であるため、実質的に特権階級となっています。また社会体制は同時に、ドロイン流の身分制も模しています。なお、宇宙港の改築に携わった大部分の労働者はドロインであり、今でも700人の住民の3分の2を占めています。
 帝国外世界という地位に加えて少ない税と法規制は、自由貿易商人(特にいかがわしい者)にとってこの星は『便宜置籍』先とするのに非常に魅力的でした。そしてビンジス政府は船舶登録料や関連税から安定した収入を受け取っています。
(※Aクラス宇宙港で人口700人はかなり少ないように見えます。例えば、マータクターでは軌道宇宙港だけで約15000人(交代要員込みの数なので一度に働くのは3000人)、地上港も含めると約28000人が雇用されているようです。ただしビンジスのWTN値は補正込みで4(マータクターは6)で、WTN値の1差で貿易量や旅客数が1桁変わりますから、マータクターの100分の1規模と仮定しても300人程度で賄える勘定になります。そうだとするとかなり閑散としていそうなのは否めませんが(計算上、1日に自由貿易商船が1隻来るか来ないか程度?)。レフリーの判断次第ですが、もう少し賑わっているようにするためには、「700人は市民権を持つ登録住民で、宇宙港には臨時雇いが多数勤めている」と解釈した方が良さそうです)

ミル・ファルクス Mille Falcs 1637 B9A2469-C NS 高技・非工・非水 G Im 軍政
 この星は268地域星域方面の帝国軍の拠点であり、星系は軍の戒厳令下に置かれています。宇宙港は軍艦の製造や修理をするためにあります。


【ライブラリ・データ】
バラッカイ・テクナム Baraccai Technum
 バラッカイ・テクナム社はトリン(スピンワード・マーチ宙域 3235)に本社を置く、宙域のリムワード方面に大きく商圏を広げている企業です。同社の主な事業は、工業生産およびその輸送、そして貨物の仲介です。さらに同社は、帝国外世界への「通商探査」のためにいくつかの派遣団と、彼らが乗り込むための3隻のリヴァイアサン級巡洋商船を保有しています。
 同社のスピンワード方面や帝国外での活動の統括はグリッスン(同 2036)の支社が担い、前線基地はパクス・ルーリン星域(トロージャン・リーチ宙域 C)の帝国領内各地に置かれています。
 現在同社はマクレラン・ファクターズ社とエジルン星域(同 B)を巡って競争を繰り広げており、その激しさは武力衝突寸前とまで言われています。

マクレラン・ファクターズ McClellan Factors
 本社をマータクター(スピンワード・マーチ宙域 1537)に置くマクレラン・ファクターズ社は、マクレラン貿易(McClellan Trading,LIC)の268地域星域やトロージャン・リーチ宙域方面における通商部門子会社です。そしてMF社の傘下企業は帝国内外に数多く存在します。
 同社は帝国内ではあくまで合法的に活動していますが、国境外では違法事業にも手を染める危険な綱渡りをしています。バラッカイ・テクナム社との長期に渡る通商戦争に敗れて268地域星域に「押し込められた」格好にはなりましたが、268地域星域ではいくつかの世界に確固たる市場を確保し、BT社による挑戦を撥ね除けています。
 同社は「前線基地」をトレサロン(同 1339)に持ち、エジルン星域(トロージャン・リーチ宙域 B)も商圏としています。

LSP Ling-Standerd Products
 帝国のメガコーポレーションの一つであるLSPは、創業当初は鉱業会社でしたが、その後は電子機器、地上および航空車両、宇宙船、ドライブやパワープラント、コンピュータやそのソフトウェア、ロボット、小火器、消費財、金融、保険などにも進出しています。特にハイテク機器や電子機器の分野では優秀な製品群で知られており、同社の鉱山や製造施設は、帝国内外を問わず様々な世界に存在します。
 LSPはそのきわどい商法でも知られていて、進出先の住民と揉め事を起こしがちではありますが、私設部隊を持たないので警備などには傭兵部隊を用いています。
 ちなみに、創業者一族のリーン家(Ling family)は既に経営からは手を引いて株式配当を受け取るのみですが、帝国各地の星域公爵家に名を連ねる名門貴族です。
株式保有比率:皇族 8%、オルタレ・エ・シェ 26%、GSbAG 23%、貴族 8%、マードック・ホールディングス 8%、その他 27%


(※人気の高い星域ゆえに、非公式設定同士どころか商業出版物の設定もあちこちで衝突を起こしています。今回は商業出版物に記載された設定を優先して紹介し、非公式設定を各所に盛り込んで肉付けする形を採っています。公式設定ではなく、あくまで私の独自解釈と受け取っていただければ幸いです)


【参考文献】
・Adventure 4: Leviathan (Game Designers' Workshop)
・Adventure 10: Safari Ship (Game Designers' Workshop)
・Double Adventure 6: Divine Intervention (Game Designers' Workshop)
・Book 7: Marchant Prince (Game Designers' Workshop)
・Supplement 3: The Spinward Marches (Game Designers' Workshop)
・Supplement 8: Library Data (A-M) (Game Designers' Workshop)
・Supplement 11: Library Data (N-Z) (Game Designers' Workshop)
・Journal of the Travellers' Aid Society #12,#18,#19 (Game Designers' Workshop)
・Beltstrike (Game Designers' Workshop)
・Tarsus (Game Designers' Workshop)
・The Spinward Marches Campaign (Game Designers' Workshop)
・Rebellion Sourcebook (Game Designers' Workshop)
・GURPS Traveller: Behind the Claw (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: First In (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Nobles (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Star Mercs (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Starports (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Sword Worlds (Steve Jackson Games)
・Third Imperium: The Spinward Marches (Mongoose Publishing)
・Third Imperium: Starports (Mongoose Publishing)
・Living Adventure 2: Spinward Fenderbender (Mongoose Publishing)
・Marches Adventure 1: High and Dry (Mongoose Publishing)
・Sign & Portents #80 (Mongoose Publishing)
・Snuff, Pipes and Wargames (Tony Barr)
・Mustered Out on Mertactor (Nick Pendrell)
・Savage Space (Lord Misha)
・Loukoum On Line
・Traveller Wiki


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