宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

ぶらりTL11の旅(4) 『星々を我が手に(These Stars Are Ours!)』暫定レビュー

2017-03-06 | Alternative Universe
(※プレビュー版を基に文章をまとめたので、製品版との差異がある可能性があります)

 Stellagama Publishingから発売された『星々を我が手に(These Stars Are Ours!)』は、2D6 Sci-Fi OGLことCepheus Engine向け(当然ながらトラベラーシリーズも含めて)の設定集です。著者はかつてSpica Publishingで『Outer Veil』を発表したOmer Golan-Joel氏とRichard Hazlewood氏のコンビを主に、挿絵やデッキプランはトラベラー系宇宙船アートと言えばこの人、Ian Stead氏が担当しています。

 Golan-Joel氏が10年間温め続けたというこの設定、3年ぐらい前からその片鱗を見せ始めてついに発売に至ったという経緯があります。この『These Stars Are Ours!』は『Visions of Empire』という一大宇宙史構想の序章にあたる部分で、西暦2260年の地球近傍星域を舞台にしています。

 時は21世紀。人類はそれほど宇宙に興味を示さず、2043年に有人火星探査を行った程度でした。しかし2082年、太陽系の外から「彼ら」はやって来たのです…!
 突如としてレチクル星人(Reticulan)の大きな円盤型宇宙船が地球の大都市上空に現れました。彼らはレチクル座ゼータ星の知的種族であり(見た目は完全にリトルグレイです)、超光速航法技術で既に半径10パーセク規模の、いくつもの知的種族を従える星間帝国を築き上げていました。やがて彼らと地球との間には先進技術導入や星間貿易の推進などの条約が結ばれて、地球も独立国家の集まりから地球連邦管理局(Earth Federal Administration)の治める一極体制に変わりました。しかし、実はレチクル星人の傀儡政権に過ぎないEFAに反発した人々は地球防衛委員会(Terran Defense Committee)を結成して地下抵抗活動を開始し、EFAも「メン・イン・ブラック」と呼ばれる連邦保安機構(Federal Security Apparatus)がTDCの弾圧に向かいました。
 地球人には自治権こそあったものの、実際にはレチクル星人の支配下にありました。EFAは市民の自由を抑圧する一方、近隣の9星系に人類入植地を拡大していきます。
 レチクル星人による植民地支配が始まってから150年が過ぎた2232年、EFAによる不公平な税負担と弾圧に対し、ついに人類は蜂起します。地球や植民地で反乱の火の手が上がり、反乱勢力は団結して地球連合共和国(United Terran Republic)を標榜します。レチクル帝国は反乱の鎮圧を試みますが、反乱に呼応してレチクル帝国の支配下にあった一部種族も反旗を翻し、UTRと手を結びました。加えて、レチクル帝国側も一枚岩でなかったこともあり、2258年にレチクル帝国の前線拠点だったケイド星系の陥落をもって、レチクル側は停戦とUTRの独立を認める屈辱的な講和条約に署名しました。

 ということで、ゲーム『XCOM2』やドラマ『V ビジター』のその後を描いたかのような世界観で、特にATU(Alternative Traveller Universe)でも珍しくジャンプドライブを地球人が自力開発するのではなく外宇宙から新技術がもたらされる、というのが興味深い点です。そのおかげで地球人のTLは12~13程度まで進歩しています。
 『These Stars Are Ours!』は、そんな宇宙で生きるための情報が満載です。200頁超の本書には、今(西暦2260年)に至るまでの詳細な歴史、UTRの統治形態・軍組織、巨大企業、犯罪組織といった設定から、異星人も含めたキャラクター作成ルール、宇宙船のデッキプラン(中にはレチクル星人の600トン拉致船(Abductor)なんてものも)、各星系の詳細設定込みの星域図、12人のパトロン、ニュースサービスまで含まれています。プレビュー版では詳細不明でしたが、どうも超能力やサイボーグ化も解禁されているようです(レチクル支配時代に兵士の生体実験も行われてたらしいですし…)。

 さて、反乱を成功させて新国家を樹立させた地球人ですが、そんな宇宙でプレイヤーキャラクターは何をすればいいのでしょうか。いや、新国家を守るためにやらねばならないことは山ほどあります。経済浮揚のためには貿易商人が必要ですし、植民地の拡大のためにはまず探査をしなくてはなりません。UTRは良くも悪くも寄せ集め集団なので中には不心得者もいるでしょうし、宇宙海賊への対処も悩みの種です。味方になってくれた色々な異星人ともうまく付き合っていかなくてはなりません。そして何よりも、レチクル星人がこのまま黙って見ているはずがありません。「野蛮人」への逆襲の機会を伺って諜報戦を仕掛けているかもしれないのです…。
 つまり、従来のトラベラー型冒険は何でもできてしまうのです。新国家の勃興期らしく、かなり勇ましいイケイケな雰囲気が設定から伝わってきます。宇宙に危険は多いですが、可能性はもっと多いのです。立て人類の男女よ、地球の子らよ…星々を我が手に!
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