スコッチダイアリー

盛岡の小さなショットバー「スコッチハウス」のサトコママの日記帳です。

シルヴァノ・サマローリ氏の思い出

2017年05月23日 | Weblog
 恒例になったインターナショナル・バー・ショーが、今年も東京・後楽園のプリズムホールでおこなわれたので、夫婦で行ってまいりました。一泊して翌日は、目白の田中屋でウイスキーを仕入れる、といういつも通りのスケジュールでしたが、今年に限っては「店長の栗林さんから、2月に死去したシルヴァノ・サマローリ氏の思い出話を聞く」という大きな目的がありました。

 前日の夜、有楽町のキャンベルタウン・ロッホでもその話題になり、そのときマスターの中村さんがぽろっと言った「今の若い人たちは、サマローリさんのウイスキーを知らないんですよ」という言葉が胸を刺しました。

 サマローリ氏は、ゴードン&マクファイルとケイデンヘッドの2社しかなかった、1980年代のボトラーズ業界に風穴をあけた、個人ボトラーのはしりというべき人です。「樽こそすべて、樽によってスコッチの味が決まる」という信念のもと、自ら選んだ樽にウイスキーを詰め、それをボトリングしました。それを1992年に日本に紹介したのが、栗林さんです。いわく「その頃サマローリのウイスキーを買ってくれたのは全国で10人足らず」その中に我が夫、関和雄も入っていたのです。

 さて、田中屋では、サマローリ氏の話で盛り上がりました。すると、スタッフの平田嬢がシンガポールのエマニエル・ドロン氏にTV電話をかけてくれました。エマニエル氏と会った、その帰途の飛行機で、サマローリ氏は死去されたのですが、フェイスブックの記事を見ていると、お二人は、年は違えど親友といっていい間柄だったようです。

 私は、エマニエル夫妻と会話ができて本当にうれしかったのですが、TV電話の背景に映る、サマローリ・ウイスキーの数々には度胆を抜かれました。数量が半端ではないのです。エマニエル・ドロン氏は、間違いなく世界一のサマローリコレクターでした。

 そのエマニエル氏が「最後に見せたいものがあるんだ!」と言ってプレジデント・デキャンターボトルを掲げたので、オーバン・・・かと思ったら違いました。夫が「おー珍しい!ポートエレン!!」一見しただけですぐに分かったのはさすがでした。「コレクターの心は、コレクターのみ知る」を目の当たりにしたのが、その日の一番心に残ったことでした。(文中のオーバンの形態は、スコッチオデッセイ新版P31参照のこと)

 エマニエル氏の奥様から、エマニエル&サマローリ両氏の写真を送っていただいたのでアップしました。かっこいいお二人ですね!

シンガポールからようこそ!

2016年12月07日 | Weblog
 スコッチハウスのお客様は、今や全国に広がっていますが、海を越えてやってくる方も増えました。先日は、シンガポールから、バー・オールドアライアンスのオーナー、エマニエル・ドロン氏と奥様(日本の方)がご来店になりました。事前に連絡頂いたので、マスターと私は、楽しみに待っていました。お会いしてみるとなんとも温和な物腰のご夫妻。初めて会った気がしなくて、すぐにうちとけることができました。そして、飲んでいただきました!お話しもたくさんしました!(通訳して下さった奥様に感謝です)

 エマニエル氏が飲んだことのないボトルをいろいろ提供しました。タリスカー1955、グレンファークラスデキャンター1955、グレンフィディック・シルバースタック・デキャンター、ソサエティのスプリングバンク64と65、ジャコーネボトル・・・奥様はバイセンテナリー、ドラゴン、ダンピ―と続けてボウモアを3種と、生まれ年のポートエレン。お二人で15種類ほど楽しまれました。これほど飲んでけろりとしているのには感心しました。お強い!現在オールドボトルの本を執筆中とのことで、出来上がりが楽しみです。日本語訳は、山岡さんでしょうか?

 スコッチハウスコレクションの中で、100年前のオールドオークニィには特に感銘したようで「是非開けて飲みたい」と言っていただきました。メンバーを集めていつか飲みましょう!と楽しい宿題になりました。

 オールドアライアンスの店名は、イギリスとフランスにまたがるアライアンス海峡が由来だそうです。お店にはこの二か国のお酒だけをおいているそうです。ネットで店内を拝見できますが、ほんとうに素敵です。シンガポールに行きたくなりました!

 最後に記念撮影。カウンターの中に入って写真を撮ったりしましたが、その時バックバーの奥の奥まで覗いたエマニエル氏。牽制してちらりとしか見せないスコッチハウスのマスター。はたで見ていると、なかなか面白い絵でした。写真は、エマニエル夫妻とスコッチハウス夫妻、そして仙台からのお客様。このようにしていろいろな方とのご縁がつながっていくのですね。

「スコッチウイスキー 迷宮への招待」発売!

2015年12月13日 | Weblog
 今年の春、スコッチハウスのボトルの写真を撮りにきた出版社二人組がいました。もちろん一日では足りず、日を改めて今度は二日がかりでの撮影。定休日はない我が店のこと、日中に撮影して、6時には現状復帰・平常営業とかなりハードなスケジュールでした。初回に撮ったカット数は1300!二度目に来たときは、撮影の他にインタビューもして、「本ができたら送ります」と言って、元気よく帰っていったのです。(正直、おやじパワー凄いと思った)

 さて、11月。予告通り「スコッチウイスキー 迷宮への招待」が送られてきました。スコッチハウス店内全景(天井の梁までバッチリ)とインタビュー記事、そして全体にちりばめられたスコッチハウス所蔵のオールドボトル。なかなかの出来で、楽しくて毎日眺めています。11月末にウイスキーフェスティバルで東京へ行った時、目白の田中屋に寄ったら「迷宮」が積んであって、仲良しの店員、平田さんが「お店の天井高いですね~。ところでここのミニチュアは何ですか?」と早速聞いてきました。さすが、プロは目ざとい!・・って、あなた、うちのバックバーは全部わかったのね。

 同じくインタビューを受けた、田中屋の栗林さんと本を手に記念撮影をパチリ。本は(株)スタジオタッククリエイティブから出ています。かなり厚め(383ページ)で定価2,900円(税別)あっぱれなふたりのおやじの名前は、高橋矩彦氏(文)と和智英樹氏(文・撮影)です。そのエネルギーに私は負けたよ。

 というわけで、是非、ご一読を!

さらば、昭和の名バーテンダー

2015年10月30日 | Weblog
 去る10月16日「銀座ダルトンⅡ」において、9月に逝去した「銀座ダルトン」のマスター石澤(こくざわ)実氏を偲ぶ会が行われました。夫も招待状をいただいたので、日帰りで参加しました。

 銀座ダルトンで、夫はスコッチウイスキーを学びました。初めてダルトンに行ったのは1985年。これからバブルに向かおうという華やかな時代でした。店内に並ぶマッカランに感銘を受けた夫は、それから年に1~2回、ダルトンへ通い、スコッチの情報収集に努めました。マスターの石澤さんは、親切にいろいろ教えてくれたそうです。「シングルモルトはダルトンで味を覚え、スコッチ関連の洋書はイエナで購入。東京に行かなければ何もわからないままだった。出張で東京へ行けて本当に良かった。」と、結婚したばかりのころ夫が話したのを覚えています。地方と東京の格差は本当に大きかったです。

 ダルトンのマスターも、盛岡に関和雄というスコッチのコレクターがいることを面白く思ったようで、盛岡の人がいくと夫の話をしたそうです。それがたまたま同級生で「関のことを銀座で聞いたんだよ!」と驚かれたりしました。夫が顔を出すと「盛岡にグレン・グラント残ってない?」と聞かれたり、こちらから石澤さんの好きなミルトン・ダフやストラス・コノンを持って行ったりと、スコッチの事で常に交流がありました。2000年にスコッチハウスが開店した時も、店の内装、特にバックバーは、ダルトンによく似た雰囲気になりました。夫はダルトンのマスターから薫陶をうけたのだと、私はうらやましく思います。

 偲ぶ会では、カウンターに真紅のばらが置かれ、参加者はそれを献花しました。粋ですね。石澤さんが50年間守った銀座ダルトンも、建物の取り壊しで12月には地上から消えてしまいます。けれども、お弟子さんが大勢独立なさっているので、昭和の名バーテンダーMr.マッカランの名は、これからも語り継がれていくでしょう。

同じだけど違う!? ~ボウモアテンペスト・バッチ5~

2015年05月02日 | Weblog
 仙台のコレクターM氏のブログに「ボウモアテンペスト・バッチ5が良いです」という記事が載っていました。スコッチハウスのマスターも「テンペスト・バッチ5には、60年代のボウモアテイストがある」という持論でしたから、我が意を得たりとばかりまとめ買いをしたのであります。

 そして仲良しご近所さんの「スパニッシュライツ」に一本ゆずって、その場でテイスティングしたところ「・・ボウモアテイストが無い?」ずーっと考え込んでいたマスター。営業中なのに、もう1本のテンペストをがっとつかんで「もう一度確かめてくる!」・・・まあ、スパニッシュライツまで徒歩5分だからね。でも、カウンターのお客さんは、あっけにとられてました。(笑)

 はい、見事に味が違っておりました。その後、4本味見しましたが、4本とも。で、タイトルの「同じだけど違う!?」になるわけです。クエスチョンマークは外せません。ボウモア・エニグマがありますが、我々にとってはボウモア自体が「謎(エニグマ)」のスコッチウイスキーです。

 テンペストのバッチ5の味の評価が、賛否両論なのもこれでうなずけます。「ラベルとロットが同じでも中の味が違う」というのは、誰も思いつかなかったでしょう。スコッチハウスで味比べしたお客様たちは、1800本のボトリングで、なんでこんなに違うの、と夢中になって原因を考えます。「樽の混ざり方が、均等ではない」「個性的な(変わった?)樽が入っている」そして「やっぱり、1本飲んだだけでは、そのボトルの評価はできないですね」というとろに落ち着きます。

 極論ですが、1本ではなくケースで買って味をみないと、ほんとのところはわからないって事?なんだか、ワインみたいですね。それにしても、ボウモアって、本当にお騒がせ銘柄です。逆に言えば、それだからボウモアが好きなんですが。