嘆きをる夜ごとの緑深みゆき 亜紀子
揚羽出てけふの扉をひらきゆく
惜春や成せざりし日を重ねきて
亜紀子
チューリップ今朝は小蜘蛛の宿らしき 亜紀子
さとごころ若葉の雨の夜に入りて 亜紀子
朧 亜紀子
鴨うたひ膳所のかたへに暮れ残る
消防車到り火祭ととのふる
着ぶくれて畏き火種下げ来たる
悴みて待ちゐし葦火はや崩る
葦松明見しより後の星うるむ
炭竃の虚ろ燻れる榛の花
潮入りの閘門錆びて冴え返る
金の蕊にぎやかに梅ほほけをり
薬湯を捨てし香りや春の星
野も森も寒き頃なり営巣期
山茱萸の目くばせに春動きそむ
薄墨の子がさきがけの花ひらく
見送りに泣いて朧の鉄路かな
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