橡の木の下で

俳句と共に

細川玲子句集『木のほとけ』紹介

2017-07-08 08:30:05 | 句集紹介

細川玲子句集『木の仏』

平成29年水無月吉日 発行

著者 細川玲子

発行 Baum

私家版

著者略歴:

昭和4年 東京生まれ

昭和50年 馬酔木入門

昭和59年 毎日俳壇賞受賞

昭和59年 「橡」入門

平成17年 「橡」同人

俳人協会会員

京都俳句作家協会会員

問合せ:

〒614−8367

京都府八幡市男山長沢22−1

 

『木のほとけ』に寄せて

            亜紀子

 細川玲子さんが処女句集を編むとうかがい、軽い驚きを覚えた。とうに第一句集を拝見していたような錯覚があったのだ。

 こころみに初期の作品からいくつか引いてみる。

鷹羽よと春蘭掘の呉れにけり

一茎の青蘆挿せり鑑真忌

蓑虫の衣紋抜きたる萩小袖

どの道もみ仏思慕の柿の村

空白に幸ひありし古日記

鴛鴦の淡きしぐさの妻選び

山霧のせめぎ入るなり竹伐会

白腹は野守のごとし落葉掻く

着眼と言葉の斡旋、調べが整い、端然として崩れざる風情、すでに及び難い境地である。一句の底に深い思慮と詩心とが一体となり、自ずと品格がにじみ出る。

 関西同人会の吟行句会でご一緒させていただく細川さんは寡黙である。歩いている間は観察怠りなく、鳥どちの声にも耳を澄ます。句会の席ではご自分から発言されることは少なく、人の話に聞き入る。こちらからお喋りをすれば正鵠を射る返事をいただき、安心と落ち着きを得る。

  集中二章以降の作品から挙げる。多彩な句材のどれも細川美学が貫かれている。

 柚子湯出でほのぼの老いの兆しけり

大佐渡に雪嶺ひとつ種下し

青梅雨の山の窪みに浄土院

雪吊りの弦に小をどり玉霰

子の妻と阿吽の厨月日貝

蜻蛉らも水に尾を挿す御田植

入浴介護しとどの汗に了りけり

暖かや来ては余談の往診医

昼眠る夫の辺にわが籠まくら

星寒し怠らざれど躓く日

大盃の月傾けて新仏

抽斗をひとつ引くにも風邪心地

屈託をさらりと躱しスイミング

独り住むことの涼しくすひかづら

邯鄲の近づくほどに声はろか

夕木槿音なく白帆畳みをり

夕蟬や怒髪しづかに木のほとけ

秋気満つ一山羅漢声もなく  

みんみんや黒光はなつエジソン碑

雪の降るこの静けさや星眠忌

文机へ夫の墓前へ水仙花

 

 星眠代理として初めて五月大会に参加した日、おろおろとしていた私に、お忙しいですねと細川さんが声をかけてくださった。常変わらぬその声を聞くと、咄嗟に、波に呑まれぬようにしなければと思いますと答えていた。爾来ものに動じぬ一本の芯を持つ細川さんは道しるべである。

 音楽家のお孫さんが欧州で活躍されていると漏れ聞く以外には細川さんの来し方など何も存じ上げないのだが、このたび昭和四年東京生れということを伺った。昭和六年東京生れの母が思い出され、いっそうこころ懐かしく、この機会を与えてくださったことに感謝するばかりである。 

 

 

ジャンル:
ウェブログ
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 草稿07/08 | トップ | 草稿07/09 »

句集紹介」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。