20170214今日の一手
2月5日の名南将棋大会から、HさんとIさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
☆ 形勢判断をします。
駒の損得はありません。
玉の堅さは先手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は25銀55角で2枚。
後手の攻め駒は45桂と持ち駒銀で2枚。13角と33飛は今は働いていませんが36歩と突けば攻め駒になります。
総合すれば先手が指しやすい局面です。
☆ 大局観として
後手は32金が囲いから離れているので玉が薄いのですが、石田流から左桂を跳ねてどんどん攻めようとしたようです。先手は玉が堅いものの、攻め駒は少ない(29桂が攻めには働いていない)ので当面は受けるしかなさそう、なので交換した銀を25に打って守りを強化した、という図です。
普通の形は25に歩があるのでここには銀を打てないのですが、元は77飛戦法(本来は先手後手が逆)
だったのです。飛車先を交換して石田流のようになりました。後手Iさんは24飛とぶつける筋で25に歩を打たせるべきだったのでしょう。(後手は33飛の途中下車、24飛~34飛で3手かかり、先手は24歩の交換で手順に26飛と出来たので25歩と打った1手の損、あわせて先手の2手得ですが。)つまり問題図までは先手のAさんがうまく指していてかなりの作戦勝ちでした。
25銀と持ち駒を打つこと自体は損な手です。後手玉を寄せるのに役立つならばよいのですが、ここに打った以上はなにか代償がないといけません。(寄せになり、攻め駒を後手玉の囲いに利きのあるもの、で数えなおせばこの銀は入らない可能性が高い。)先手玉を固める駒にはならないのですから、駒得を目指す、というのがその目的です。どの駒を取りましょうか、という問題です。
× 77桂など待っていると、36歩同歩57桂成
と駒得(成桂ができた、あるいは金と交換できた)で攻められます。これがまずいのはすぐわかります。
× 66角と備えても、36歩同歩57銀
と打ち込まれるのは嫌ですね。これも駒損になりそう。
△ 46角なら
受けに利いています。36歩に13角成同香36銀
ならば歩切れの後手にたいした手がありません。先手の1歩得です。
おとなしい手ですが、15歩があるし、31角なら68角54歩46歩
という感じで桂馬を殺せそうです。
× 実戦は44角と1歩を取りました。
後手は当然36歩で、これに24歩
と頑張りました。37歩成なら飛車を取って攻められます。22角23歩成(飛車は取りにくい)同飛22角成同飛
と進んだ図は、歩得ではありますが、後手に持ち歩があります。駒得にもなっていなくて後手にさばかれたので大失敗。(後手は飛角銀桂が攻め駒、先手は持ち駒角くらいしか攻め駒といえない。)
途中23歩成では36歩
と取るほうが良いのでしょう。43飛なら22角成同金66角
とするくらい。とにかくこの筋に先手で角を据えてさばきを抑えるしかないです。
△ 14銀と歩を取る手は
対抗型ではまず見ない手なのですが、24角には25歩で角が死ぬのでどうにかなりそう。
22角25銀54歩44角36歩同歩
43金66角(すぐに飛車を取らないほうが良い)32飛22角成同飛
66角21飛46歩64角35歩
という進行でしょうか。とにかく後手に歩を渡さないこと、飛車をさばかせないこと、を心がけ、桂馬を取り切れれば優勢です。先は長そうですが。
なお、14銀22角25銀13角は続ければ千日手ですが、1歩もらったのは得なので、他の変化を探すことになりそうです。
○ 最後は46歩。
Aさんが重い銀を打ったのは、この歩を突きたいのだろうと思ったのですが(なぜか44角でした)。
37桂成同桂36歩に同銀
と取れます。54歩44角46角には38歩
これは桂得です。38歩は悔しいですが、銀を引けたので少し我慢です。35銀と打たれるのは嫌ですが、同銀同角に74桂
で、取れば35角から王手飛車、92玉には33角成~82飛93玉81飛成で勝ち。
戻って、46歩37桂成同桂36銀は
36同銀同歩25桂
がぴったりです。
もっと戻って37桂成の筋は怖くないので、36歩を見てみます。
36同銀57銀に45歩
これで74桂の筋があります。つまり、58銀不成同金68金に74桂92玉95歩54歩94歩
と踏み込んで、銀を持っているので詰めろですから先手の勝ち。
後手はどこかで(36歩の前か、金を取る前か)54歩44角を入れて
迫るのですが、47銀がぴったり。58金同銀68角成69金
として、24馬(くらいしかない)に同飛同歩17角打
この角筋が止まらず、4枚の攻めで寄せられます。
なお、68金に25桂は
58金13桂成同香62銀・・・として勝ちそうですが筋が悪いです。
☆ まとめ
その前に、おまけの話。
問題図の前で
25銀33飛としたのは、ここで46歩は37桂成同桂36歩
が怖いからだろう、と思うのですが(そうではなくて、25銀33飛44角で1歩得でよし、とみていたのならかなり筋が悪い)ここで25銀も同じようなことになりそうです。
でもよく見れば74桂92玉95歩
で54歩にも94歩が詰めろなので先手の勝ち。
ということは46歩に54歩を入れて
66角に(36歩は同飛なので)37桂成同桂36歩25銀33飛34歩43飛36銀46角47金
という進行が普通かもしれません。戦いの中でも25銀は入りそうなのですが、54歩に66角くらい(44角とできない)ではつまらない、そこまで読んで25銀33飛46歩を選んだ、とすればAさんはかなりの強豪、という話でまとまったのですが。
でも25銀を打たないで46歩はかなり怖いです。桂馬を入手して74桂の筋で寄せてしまおう、という強い手でした。
☆(今度こそ)まとめ
25銀と打ったのは、36歩や37桂成の筋に備えるためです。備えたのですから46歩と突いてみたい、というのが本筋です。
なお、これは形勢が良い(少なくとも指しやすい)から選択できることで、自玉が薄い場合、あるいは後手玉が堅い場合、あるいは後手に持ち歩がある場合なら考えないほうが良いです。後手は飛角銀桂で攻められる(石田流としては理想)のですから。
25銀というのは筋の悪い手でして、一つ筋の悪い手を指すと、次も筋の悪い方に進んでしまうというのは将棋の面白いところです。その筋悪の銀を生かすのは何か、という問題でした。
筋の良さそうな77桂や66角などは攻められて悪くなります。(25銀を打っていなければ36歩に同飛などもあり、戦えます。)
44角と歩を得して角を働かせるのは本来筋の良い手。でも次に飛(本譜は角交換になりましたが)を取ったら25銀が空振りになるので悪い組み合わせなのです。さばこうとするとさばかれてしまいます。
25銀から14銀なんてかなりの筋悪なのですが、結構有力です。
46歩は飛角の利きを止めてしまうので筋としてはよくないです。55角を追って36歩同歩46角とさばかれそう。あるいは37桂成同桂36歩という手筋を食らいます。
でも25銀を打ってあるので36歩は同銀と取ればまあまあですし、55角を追われた調子で44の歩を取って桂馬の支えが無くなります(36銀から45銀が可能)。だから25銀と46歩の組み合わせはあり得る手なのでした。
2月5日の名南将棋大会から、HさんとIさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
☆ 形勢判断をします。
駒の損得はありません。
玉の堅さは先手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は25銀55角で2枚。
後手の攻め駒は45桂と持ち駒銀で2枚。13角と33飛は今は働いていませんが36歩と突けば攻め駒になります。
総合すれば先手が指しやすい局面です。
☆ 大局観として
後手は32金が囲いから離れているので玉が薄いのですが、石田流から左桂を跳ねてどんどん攻めようとしたようです。先手は玉が堅いものの、攻め駒は少ない(29桂が攻めには働いていない)ので当面は受けるしかなさそう、なので交換した銀を25に打って守りを強化した、という図です。
普通の形は25に歩があるのでここには銀を打てないのですが、元は77飛戦法(本来は先手後手が逆)
だったのです。飛車先を交換して石田流のようになりました。後手Iさんは24飛とぶつける筋で25に歩を打たせるべきだったのでしょう。(後手は33飛の途中下車、24飛~34飛で3手かかり、先手は24歩の交換で手順に26飛と出来たので25歩と打った1手の損、あわせて先手の2手得ですが。)つまり問題図までは先手のAさんがうまく指していてかなりの作戦勝ちでした。
25銀と持ち駒を打つこと自体は損な手です。後手玉を寄せるのに役立つならばよいのですが、ここに打った以上はなにか代償がないといけません。(寄せになり、攻め駒を後手玉の囲いに利きのあるもの、で数えなおせばこの銀は入らない可能性が高い。)先手玉を固める駒にはならないのですから、駒得を目指す、というのがその目的です。どの駒を取りましょうか、という問題です。
× 77桂など待っていると、36歩同歩57桂成
と駒得(成桂ができた、あるいは金と交換できた)で攻められます。これがまずいのはすぐわかります。
× 66角と備えても、36歩同歩57銀
と打ち込まれるのは嫌ですね。これも駒損になりそう。
△ 46角なら
受けに利いています。36歩に13角成同香36銀
ならば歩切れの後手にたいした手がありません。先手の1歩得です。
おとなしい手ですが、15歩があるし、31角なら68角54歩46歩
という感じで桂馬を殺せそうです。
× 実戦は44角と1歩を取りました。
後手は当然36歩で、これに24歩
と頑張りました。37歩成なら飛車を取って攻められます。22角23歩成(飛車は取りにくい)同飛22角成同飛
と進んだ図は、歩得ではありますが、後手に持ち歩があります。駒得にもなっていなくて後手にさばかれたので大失敗。(後手は飛角銀桂が攻め駒、先手は持ち駒角くらいしか攻め駒といえない。)
途中23歩成では36歩
と取るほうが良いのでしょう。43飛なら22角成同金66角
とするくらい。とにかくこの筋に先手で角を据えてさばきを抑えるしかないです。
△ 14銀と歩を取る手は
対抗型ではまず見ない手なのですが、24角には25歩で角が死ぬのでどうにかなりそう。
22角25銀54歩44角36歩同歩
43金66角(すぐに飛車を取らないほうが良い)32飛22角成同飛
66角21飛46歩64角35歩
という進行でしょうか。とにかく後手に歩を渡さないこと、飛車をさばかせないこと、を心がけ、桂馬を取り切れれば優勢です。先は長そうですが。
なお、14銀22角25銀13角は続ければ千日手ですが、1歩もらったのは得なので、他の変化を探すことになりそうです。
○ 最後は46歩。
Aさんが重い銀を打ったのは、この歩を突きたいのだろうと思ったのですが(なぜか44角でした)。
37桂成同桂36歩に同銀
と取れます。54歩44角46角には38歩
これは桂得です。38歩は悔しいですが、銀を引けたので少し我慢です。35銀と打たれるのは嫌ですが、同銀同角に74桂
で、取れば35角から王手飛車、92玉には33角成~82飛93玉81飛成で勝ち。
戻って、46歩37桂成同桂36銀は
36同銀同歩25桂
がぴったりです。
もっと戻って37桂成の筋は怖くないので、36歩を見てみます。
36同銀57銀に45歩
これで74桂の筋があります。つまり、58銀不成同金68金に74桂92玉95歩54歩94歩
と踏み込んで、銀を持っているので詰めろですから先手の勝ち。
後手はどこかで(36歩の前か、金を取る前か)54歩44角を入れて
迫るのですが、47銀がぴったり。58金同銀68角成69金
として、24馬(くらいしかない)に同飛同歩17角打
この角筋が止まらず、4枚の攻めで寄せられます。
なお、68金に25桂は
58金13桂成同香62銀・・・として勝ちそうですが筋が悪いです。
☆ まとめ
その前に、おまけの話。
問題図の前で
25銀33飛としたのは、ここで46歩は37桂成同桂36歩
が怖いからだろう、と思うのですが(そうではなくて、25銀33飛44角で1歩得でよし、とみていたのならかなり筋が悪い)ここで25銀も同じようなことになりそうです。
でもよく見れば74桂92玉95歩
で54歩にも94歩が詰めろなので先手の勝ち。
ということは46歩に54歩を入れて
66角に(36歩は同飛なので)37桂成同桂36歩25銀33飛34歩43飛36銀46角47金
という進行が普通かもしれません。戦いの中でも25銀は入りそうなのですが、54歩に66角くらい(44角とできない)ではつまらない、そこまで読んで25銀33飛46歩を選んだ、とすればAさんはかなりの強豪、という話でまとまったのですが。
でも25銀を打たないで46歩はかなり怖いです。桂馬を入手して74桂の筋で寄せてしまおう、という強い手でした。
☆(今度こそ)まとめ
25銀と打ったのは、36歩や37桂成の筋に備えるためです。備えたのですから46歩と突いてみたい、というのが本筋です。
なお、これは形勢が良い(少なくとも指しやすい)から選択できることで、自玉が薄い場合、あるいは後手玉が堅い場合、あるいは後手に持ち歩がある場合なら考えないほうが良いです。後手は飛角銀桂で攻められる(石田流としては理想)のですから。
25銀というのは筋の悪い手でして、一つ筋の悪い手を指すと、次も筋の悪い方に進んでしまうというのは将棋の面白いところです。その筋悪の銀を生かすのは何か、という問題でした。
筋の良さそうな77桂や66角などは攻められて悪くなります。(25銀を打っていなければ36歩に同飛などもあり、戦えます。)
44角と歩を得して角を働かせるのは本来筋の良い手。でも次に飛(本譜は角交換になりましたが)を取ったら25銀が空振りになるので悪い組み合わせなのです。さばこうとするとさばかれてしまいます。
25銀から14銀なんてかなりの筋悪なのですが、結構有力です。
46歩は飛角の利きを止めてしまうので筋としてはよくないです。55角を追って36歩同歩46角とさばかれそう。あるいは37桂成同桂36歩という手筋を食らいます。
でも25銀を打ってあるので36歩は同銀と取ればまあまあですし、55角を追われた調子で44の歩を取って桂馬の支えが無くなります(36銀から45銀が可能)。だから25銀と46歩の組み合わせはあり得る手なのでした。