金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「捨てられる銀行2 非産運用」は中々熱い本

2017年05月15日 | 本と雑誌

先週日経新聞(ネット版)に「紀伊国屋書店大手町ビル店で『捨てられる銀行2 非産運用』が凄い勢いで売れていて入荷が翌週になりそうだ」という記事がでていた。

売れていると聞くと買いたくなるのが人情でさっそくアマゾンでチェックしたところ在庫があり直ぐ発送可能ということ。ただし電子版が少し安く売られていたので、電子本で読むことにした。電子本は人気絶頂でも売り切れることはないし、直ぐに読み始めることができるので楽だ。ただし添付されている「図」を余り大きくして読めないのが難点といえば難点だ(ただしこの本の「図」は多くない)。

大手町界隈でこの手の本がよく売れるのは、銀行・証券・生保などの本部・本店が集中しているからだ。筆者(共同通信 橋本卓典氏)も主な読者ターゲットを金融機関や資産運用会社の役職員においていると思うが、それだけで直ぐに12万部も売れるとは思えない。

資産運用業界の在り方に疑問を感じている一般消費者の方々も購入していると思われる。

読みだしてまず感じたことは「著者の資産運用に携わる金融機関を変えてかねばならない」という思いを熱く感じることだった。それは森信親金融庁長官の日本の資産運用を変えたいという思いが降臨したような熱い語り口である。

本のテーマは明解だ。それは顧客の資産運用に携わる金融機関はフィデュ―シャリー・デューティーを徹底しなければならないということに尽きている。フィデュ―シャリー・デューティーは従来「受託者責任」という訳語で語られていたが、金融庁は「顧客本位の業務運営」と再定義した。

具体的施策としては「手数料の開示」などが含まれるが、何よりもまず「金融機関が儲かる商品を販売するのではなく、顧客の資産運用目標に合った商品を販売する」という基本姿勢が大事だと本は主張する。

銀行や証券会社は投資信託や一時払い終身保険など金融商品の販売で手数料収入を上げることを目的としている。だからETF(上場型投信)など商品性は優れているが販売手数料や信託報酬の少ない商品より、コミッションが高いアクティブ投信に顧客を誘導するケースが多いと言われている。

この本でやり玉にあがっているのは、そのような金融機関でやがては「捨てられる銀行」になると著者は予見している。

私は概ね論旨に賛成である。だが金融機関が変わっていくためには「消費者が顧客本位の業務運営を行っている金融機関を選択する」必要があるが、これが中々難しいことに問題があると感じている。

その理由は「投資信託など商品の良し悪しが将来の運用成績に係るものを現在時点で評価することは難しい」という点が一番大きい。

過去の運用成績は重要な判断材料だが、将来のパフォーマンスを断言するものではない。

私はコアの投資信託の姿は「ノーロード(販売手数料なし)」で「信託報酬が低く」「世界の債券・株式にバランスよく投資」するものであると確信している。その一つの解答として現時点ではセゾン投信の「バンガード・グローバルバランスファンド」をあげたいと思っている。

この投資信託は銀行や証券会社では売っていない。セゾン投信の本社の窓口でも売っていない。買いたい人はネット等で申し込む必要がある。更には毎月積み立て型で銀行口座からの自動引き落としが主流になっている。

だが「ちゃんとしたビルディングの中の立派な窓口で買わないと不安だ」「ネット中心の取引では万一の場合不安だ」という人には向いていないだろう。

だが落ち着いて考えてみると銀行や証券会社の立派な窓口は誰が作っているのか?というとそれは消費者が払う販売手数料や信託報酬の中から支払われたお金で作られているのだ。したがって無店舗販売の方がローコストオペレーションを徹底できることは間違いない。

しかし一度限りの消費財はネットで買うことに抵抗を覚えない人も金融商品をネットで購入し長期保有することには、不安を感じるかもしれない。実際に店舗を見ないと安心できないという人もいるだろう。

ここに金融機関を選択する難しさがあるのだ。ブランドに頼るとブランドコストという形で見えないコストを払う必要があり、ブランドよりも実質(手数料等を差し引いた)リターンを求めると、一部の人には心理的な不安が高まるという問題だ。

金融機関は変わっていかなければならない。だが総ての商品やサービスが消費者の厳しい選択により淘汰されていくのと同じく、金融機関も消費者の選択で変革し、着いていけないところは淘汰されるというのが本筋なのだ。

だが「商品の見定めが難しい」ということと「大きくて立派に見える金融機関や身近にある金融機関が安心できる」といったバイアスが、捨てられるべき銀行を生かしているのではないか?と私は考えている。

 

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