対米貿易で巨大な黒字を抱える「中国を為替操作国に認定する」ことを選挙運動期間中掲げていたトランプ大統領が昨日認定しないと発表した。
米国の財務書は年2回為替政策報告書を議会に提出し、為替相場を不当に操作している国を為替操作国と認定している。今週後半に同報告書が提出される予定だが、中国を為替操作国と名指ししないということだ。
WSJは大統領のコメントについて「大統領が意見を変えた理由は『数か月間人民元の操作を行っていないこと』と『為替操作国に認定すると北朝鮮問題での中国との協力関係を傷つける可能性がある』」からだと解説している。
またトランプ大統領はWSJのインタビューで「米ドルは強くなりすぎていて、米国経済を傷つけるかもしれない」「米国の金利が低い水準にとどまることを期待している」と述べた。
大統領が連銀の領域である金利についてコメントすることは異例であり、財務省の直轄事項であるドルの通貨価値に言及することも異例だ。
またトランプ大統領は連銀のイエレン議長を尊敬しており、彼女の2018年の任期終了はnot toastだと述べた。
Toastは「焼いたパン」だが、俗語で「だめだ。おいまいだ」という意味がある。つまりイエレン議長は2018年に更迭しないというメッセージを送った訳だ。うがった見方をすると「再任してあげるから、あまり金融引き締めをするな」というサジェスチョンと言えるだろう。
大統領選挙期間中、トランプ大統領は「イエレン連銀議長は金利を低過ぎる水準に据え置いている」と批判を繰り返してきたが、ここにきて前言を翻し、「高金利はドル高を招き、輸出産業と製造業を傷つける」と述べている。
市場ではトランプ大統領の発言を受けて、ドル、長期金利、株価が下落した。
対中国政策で選挙公約から離脱したトランプだが、高まる北朝鮮リスクを考えると中国に対して強硬姿勢を取るのは得策でないという判断が働いた訳だ。さて中国の「北朝鮮に対する経済制裁の本気度」はどれくらいなのだろうか?
昨日ロイターのニュースを見ると「北朝鮮から来た石炭輸出船をそのまま追い返した(中国の輸入業者に輸入を禁じた)」という記事が出ていた。もし外貨獲得の主要手段である中国に対する石炭輸出をストップされると、北朝鮮は本当に兵糧攻めにあう。
果たして金正恩は兵糧攻めに屈して核開発を思いとどまるのだろうか?あるいは捨て鉢的な行動にでるのだろうか?
ロイターによると、北朝鮮はピョンヤンにいる約200名の外国人ジャーナリストに「大規模かつ重要なイベントに備えるように」と伝えた。
4月15日の故金日成主席の生誕105周年の記念日に何等かの軍事的なイベントがあることを示唆するニュースだが詳細は分からない。
ただ不気味な緊張感が高まっている。