ここのところ更新が滞っていますが、試合自体はネット、オンデマンドにCS放送で
あれやこれやと見るものがあります。
おいおい、遅くなり、遡る形ではあっても何か書いていこうと思うのですが、
まずはそんな中、先週金曜日にホールにお邪魔して見た、坂晃典初防衛戦について、簡単に。
試合の終わり方がショッキングなもので、ネットニュースなどでも話題になっていたそうですが、
私としては、そこに至る試合展開と、そうなった原因の方が、より重大なテーマかと見えました。
8連続KO勝ちで日本王座に駆け上がった坂晃典は、従来は重心の降りたショートの強打が魅力でしたが、
最近は機動力が上がり、その上で強打を生かして倒す選手になりつつありました。
初防衛戦の相手は、強打では王者、上位と遜色ない大橋健典。
しかし総合的に見て、動きの質で上回る坂が有利だろうと見ていました。
ところが初回から、坂の動きの量が乏しいように見える。
そこそこ動けてはいるが、立ち位置が相手と近く、大橋にしたら、踏み込みに労力を割かず手が出せる。
坂はその位置関係にありながら、手が下がり気味でもあり、見ていて不安なスタート。
それでも序盤は左を当て、右のボディストレートが再三決まる。
大橋は早々にダメージを負ったように見えたが、耐えて反撃。
坂は普段より動きが乏しく、強打の大橋と、五分五分の力比べをするような展開。
大橋は坂のボディの打ち終わりを右アッパーで狙うが、外されていた。
ところが坂の動きが徐々に落ちてきて、4回、攻めた後にこのパンチを食って、ダメージを負う。
5回、大橋の右をまともに食い、必死にクリンチする場面もあり、劣勢。
この回ラスト10秒の拍子木をゴングと勘違いした坂に、大橋が右フックを決め、KOとなりました。
この場面については、坂がかなり追い込まれていた故に犯してしまったミス、ということなのでしょう。
安全管理の面で如何なものか、という問題提起は、勝負の是非論とはまた別にあるのでしょうが、
大橋健典の勝利自体は、何の問題もないと思います。
それよりも気にかかったのは、強打と頑健さという、大橋の長所を引き出してしまい、
それを外す、削ぐ闘いが出来なかった、坂晃典の状態にありました。
共に強打という武器を持つ者同士ながら、動きの質量、上体の柔軟さでは坂がはっきり上で、
実際にそれはこの試合の序盤でも出ていました。
しかし、動きの質が普段より悪く、早々に量も減る。優っている部分を切り捨てる形で、
五分五分の強打戦になってしまい、劣勢になって、最後には敗れてしまった。
実は試合前、坂と対面する機会があったのですが、顔色が悪く、締まったのでなく「削げた」表情に見えました。
計量から一日経って、当然栄養補給もしているはずで、これは体調面に不安でもあるのかな、と。
「相手は、強打と頑丈さは王者クラスだから、動いて、足で外して、左から、ですよ」と言いたかったのですが、
まさか素人の客が、試合直前のプロボクサーにそんなおこがましいことを言えるわけもありません。
しかし、いざ試合を見終えて、もはや狼藉の域ながら、言わせてもらった方が良かったのかな、と思ったりもしました。
いずれにせよ、今回の試合ぶりは、坂晃典本来のものだとは思えない部分が、かなりありました。
その原因が何だったのか、傍目に知れようもありませんが、厳しい分析が必要だと思います。
減量が厳しいのか、調整の問題なのか。最後の打たれ方のダメージについても、慎重に見極めるべきでしょう。
機動力に優れ、強打を秘める坂晃典は、非常に魅力あるボクサーだと思います。
極めて痛烈な敗戦でしたが、これを糧にしての再起を、ファンとして心から期待します。
公式動画がアップされていました。ご紹介します。
坂選手の敗因、大きく2つあるいは3つあると見ました。1つ目は、ご指摘の通り体調の問題だと思います。かなり顔色が悪く頰も削げて見えました。これでは、スタミナが必要な機動戦、あるいはタフネスのぶつけ合いの肉弾戦は厳しいと思いました。2つ目、或いは3つ目も含むかと思いますが、ガードの位置が距離で外す位置にずっとあった事です。これは、大橋選手の圧力との相対的な関係にもなりますが、やはり捌く足が要求されるレベルに達していない事もあると思われます。
すなわち、攻めは良いんですね。手が下がって上体が柔らかく動くため、攻めて打つ、これは良いと。ただ、強打と頑丈さで相打ちも含めて圧力を掛けてくる相手に対して、打ち間で手が下がり、外せないパンチ食って真っ直ぐ下がった時、追われて強打がぴったりの位置にいると。近距離でのボディワークやクリンチワークは良かったと思いますが、下がった時はまずい。今回は体調不良に加え、攻めと守りの機動力の棲み分けが出来なかったと思いました。
スタミナの問題と相手の圧力が予想外にあった事で今回はこの様な結果になったかと思いますが、魅力的な素材ですので、トラブルシューティングして克服し、頑張って貰いたいですね。
体調面は確たるものはなく、見た目の印象だとしても、距離の取り方とガードの高低、その辻褄があっていない面が一番気になりますね。ガードは、以前は今ほど動かない代わりに高く設定されていたんですが、最近は動ける代わりに広い視野で相手を見るため、リラックスして打つため、やや低めになる時間帯が増えてはいましたね。
今回は、動きが落ちて、しかしガードが上げられず、という悪い形のまま闘い、しかも強打の相手に力で張り合う展開になってしまいましたね。その原因が体調面にある、という印象でしたが、いずれにせよ的確な分析をした上で、再起を期待したいです。
>R35ファンさん
林との一戦では、優勢の中で少しミスをして打たれた、という形で、パワーでまさる確信のもと、すぐに巻き返して倒しましたが、強打とタフネスに秀でた大橋相手に、あれだけ長く悪い形で、相手の良さを引き出し、そこで張り合ってしまっては、悪い目が出ても仕方なかったですね。
拍子木に関しては、勘違いする選手はけっこう見ますし、安全管理の面で議論の余地はあるでしょう。そもそもあれはゴング間際のトラブル予防を目的にした、レフェリーへの合図だったと思うんですが、慣例化されたのがいつ頃だったか、30年くらい前でしたかね?当初は違和感ありました。
それに、ボクサーは3分という時間を感覚的に覚えているものだろう、という気もします。昔、TV番組の企画で、ファイティング原田でしたかね?時計を見ずに縄跳び跳んで、3分経ったと思ったら止める、という実験をしたところ、3分1秒だった、という話があります。まあ実際の試合、それもダメージを負う場面とはまた違うわけですが。