さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

正念場の只中にいる拳四朗、一歩手前の比嘉大吾 揃って初防衛なる

2017-10-26 23:51:40 | 関東ボクシング



遅くなりましたが日曜の両国、他の試合など簡単に感想を。


拳四朗は初防衛から、元王者ペドロ・ゲバラを迎える。
木村悠戦の、彼の側から見ればはっきりと「取りこぼし」だった敗戦はあるものの、
日本上位相手に、その質の高さを見せている強敵で、初防衛からこの相手というのは、
昨今多い、最初は緩いのから、というパターンとは違う、厳しいものでした。


序盤4回は、二階席から見ていると、採点はちょっと難しい。いきなり逃げですが。
初回ゲバラの長いパンチが伸びる。これはゲバラかと思ったが、2回以降は微妙か。
少し距離が詰まれば拳四朗も左がよく出たように見えたが、採点はゲバラのリード。

ちょっと辛めの?採点だったこともあり、5回から拳四朗が出る。
ボディ攻撃から打ち合いに。6回は右のヒットが増える。
7回微妙。8回拳四朗連打するも、ゲバラの好打あり、拳四朗少し効いた?

ここでの途中採点は三者三様。
序盤の感じからいくと、思ったより拳四朗が巻き返せているという印象。

9回以降、拳四朗がボディから上に攻めていく。
10回も攻勢でややまさるが、11回はゲバラも鋭い連打返す。
最終回は拳四朗ボディで攻めるが疲れもあり、クリンチ増える。ゲバラのヒットが上回ったか。

迷う回だらけ、拳四朗僅差か、ドローか、という風に見えましたが、2-0で拳四朗でした。
またしても、鮮やかに勝つ、とはいかなかった拳四朗でしたが、
誰が行っても難しいガニガン・ロペスと、正統派の実力者ゲバラとの連戦で、
この両者相手に伍して闘い、続けて競り勝ったことは、彼の地力の証明だと思います。


今回も彼の試合がTVで生中継されることはないだろう、ならば...
というのが、今回の興行を観戦するために上京する、ひとつの理由でもありました。

拳四朗には、誰の目にも明らかな形で、その技量のレベルを証明してほしかったですが、
他の試合と比べれば、地味な攻防であっても、左の応酬で渡り合い、ボディから攻め口を拓き、
ロングのパンチに苦しみつつも、競り勝つ分だけの攻勢を取れたことなど、
私としてはまずまず、見たいと思っていたものを、最低限見られたかな、と思っています。

王座獲得試合、初防衛を成してなお、この次がロペスとの再戦とのことで、
拳四朗は、いわば「正念場」の真っ只中にいます。
その現状は、例えば、比嘉大吾と比べて、華々しいチャンピオンロードではありません。
しかし、彼の確かな地力、見た目の印象以上に「設計強度」の高いボクシング、
その質と内容は、一定以上の評価に値する、と改めて思った、そんな試合でもありました。


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比嘉大吾は、フランスのトマ・マソンに7回TKO勝ち。
こちらも初防衛なりました。

どうにもボクサーぽく見えない風貌のマソンですが、バランスの良いボクサー型。
しかし、意外に足が動かず、ガードを固める防御が多い。

比嘉は早々からボディ、外からフック、内にアッパーと、上下内外を打ち分けるコンビ。
何も、最初から全部手の内見せることもないのに、と思ったが、
2回からは落ち着いて、左から崩す。セコンドに何か言われたか。

3回、マソンはガード絞り、比嘉の打ち終わりにカウンター狙う。
比嘉は左ダブル、右アッパートリプル、右サイドに回って連打と、目先を変える。
4回は真ん中に右アッパーをまた連発。パチンコチューリップ攻撃か(古い)。

比嘉の攻勢が続き、6回はボディが効いて、マソン決壊寸前。
7回、左ジャブで跪いたマソン、チェックのあとTKOとなりました。


比嘉は終始攻勢を取り、順当に勝った、という印象でした。
ただ、見た目ほどパンチが乗っていないな、ちょっと軽いというか、
上滑り気味かな、という風にも感じました。

初防衛の重圧、調整の難しさなど、まだ、世界王者として何もかもが行き届き、
まんべんなく備わっている、という段階にはない「若手」な部分も残っている。
それが比嘉大吾の、偽りない現状なのでしょう。

そのクラスにおいて、世界上位に長い相手と連戦している拳四朗と比べると、
今回の比嘉は「正念場」の一歩手前というべき試合を闘っている、という印象でした。

とはいえ、噂される減量苦や、調整の厳しさもあった上で、筋の良い挑戦者を圧倒した攻撃力は、
他の選手にはない、魅力的なものです。
まずは順当に勝ち、ひとつ着実にキャリアを積めたことを評価するべきでしょう。


今後に関しては、井岡一翔の状況が不明瞭なこともあり、統一戦はまずないでしょう。
次が沖縄で、その次に指名試合が回ってくるとしたら、ちょうど16連続KOの記録がかかることになります。
もちろん相手次第ですが、そこがひとつの正念場になりそうですね。楽しみです。


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この日は前座に、フランス人とウクライナ人のスーパーミドル級、しかも4回戦という
普段滅多に見られないような試合がありました。
両者、レベルがどうと言う以前に、間断なく動き、手を出し、無駄な間や休みがほぼ無く、
能動的に試合を展開していこう、という姿勢が印象的でした。


具志堅ジムの新人、大湾硫斗は、5勝5KO1敗のフィリピン人をダウンさせて判定勝ち。
相手も健闘し、なかなかの熱戦でした。

大会場の前座ということもあり、大盛り上がりとはいかない試合でしたが、
もしこれが後楽園ホールで、日本人同士で、東日本新人王準決勝くらいの試合だったとしたら、
好ファイトとして、ファンの記憶に残っただろう、と思います。

大手ジムの新人が、世に言う「独自路線」をゆく場合、その内容次第で「如何なものか」と
思ったりすることもよくありますが、今回のような試合なら、充分納得がいきます。
大湾の今後に、ちょっと注目したいですね。


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5 コメント

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Unknown (R35ファン)
2017-10-27 05:42:13
やはりと言うべきか、ケンシロウ君の試合は全然見れませんでした。後日bsフジで放送あるらしいので期待します。

比嘉君は確かに連打にウエイト乗ってないかとは思いますが相手があれだけガード固いのをボカスカ叩き続けて最後決壊させたからまあ良いかと。連打のバリエーション多いし、ロマチェンコみたいな右(ロマチェンコは左ですが)打つし、色々試してる面もあると見ました。また、前回からジャブも良く出るなと言う印象でしたが最後あのジャブで相手の右目壊したので結構威力ありますね。今後も楽しみですが一つ残念なのはせっかくのインタビュー第一声が村田さんに繋げた、だった事で、フジが言わせたのかなと。きちんとファンを楽しませて勝ったなら自分第一で言って欲しかったです。
Unknown (hiro)
2017-10-27 21:07:14
比嘉選手、テレビ映えしましたね。日本人らしくないスタイルというか。今回は村田選手の陰に隠れましたが、連続KO記録の話題で良いカードが組まれる方向性になれば良いですね(今回の相手のガードも中々でしたが)。
拳四朗選手はハードコースですが、前日はホールにいて、ファンに驚かれたとか。案外大物で、伸び代まだありそうなのが良いです。
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2017-10-28 19:33:49
>R35ファンさん

比嘉の相手、マソンはガードは良いにしても、足を止める場面が多く、ちょっと不思議に思いました。比嘉がどんどん手を出せる展開で、勝つ自信があったのかなぁと。距離で外す選択を最初から切り捨ててくれたから、比嘉の良さが簡単に出せた部分があり、まあ初防衛としては充分なれど、本当の試練はまだ先だと感じた次第です。

>hiroさん

視聴率も高かった中継で「良いとこ」を見せた試合ではありましたね。会場でも人気が高く、盛り上がっていました。マソンについては上記コメントのとおり、ちょっと不足あり、と見ました。もっとも、弱い挑戦者というわけではありませんでしたが。
拳四朗は見た目と違った剛胆さがある選手ですね。関西の関係者の間では、アマ時代から非常に評価が高く、あれはプロなってもかなりいける、と評判だったそうです。爆発的な部分は、世界戦では出ていませんが、全体的にしっかり作られた技巧派ですね。

Unknown (月庵)
2017-10-28 23:16:57
比嘉の試合、1R見終えた時点でこれは『事故』が起こらなければ比嘉が負ける事はないだろうな、と感じました。比嘉のようなタイプを相手に足を使わずガードを愚直に固めて攻防分離で攻撃を凌ぐというのは、率直に言って一番やってはいけない戦術だと思います。今回の試合を見てはっきり確信しました。マソンが悪い選手とは思いませんが、正直に言ってミスマッチな組み合わせでしたね。相性的にも。もっと足が使えればまた違う展開になったでしょうし、比嘉の身体が流れたところにカウンターを合わせられれば勝機もあったと思いますが。比嘉の出来は決して100%ではなく、まだまだ成長段階だと思います。同じゴリゴリ押していく村田とはガードの質の差が歴然としているとも感じますし。

比嘉を攻略出来そうな相手は、足を巧みに使ってポイントメイク出来るランナー、比嘉の攻撃に対して危険なタイミングでカウンターを放てるボクサー、そして比嘉の圧力に互角以上に渡り合えるフィジカルの持ち主あたりでしょうか。その全ての要件を満たす井上尚弥などは比嘉にとっては最悪の相性でしょうね。そこまではいかずとも上位ランカーのムハマド・ワシームやアンドリュー・セルビーはもし戦わば徹底して足を使ってポイントメイクに徹するでしょうから、そうしたボクサー相手にも押し切りが出来るなら楽しみが増えますね。

井岡戦は……実現するのなら日本人対決の枠を超えた好カード間違いなしですが、まずダラキアンとの試合が成立するのか、成立したとしてクリア出来るのかという大問題がありますからね……好き嫌いはさておき井岡一翔ともあろう男がこんな確執でグローブを吊るしたりキャリアに無意味な傷やブランクを作るのは本当にくだらない事だし、彼ら親子の確執と無関係な石田ら所属ボクサーが不遇をかこつのはもっとくだらない事です。

拳四朗については、正直本気モードのゲバラに勝てるとは思っていなかったので際どい勝負をものに出来ただけ立派だなと思います。試合はこれから見る事になるでしょうが。オープンスコアリングシステムの恩恵は確実にありますが、劣勢と認識して戦術を軌道修正してそれをやりきるのはなかなか出来る事ではないです。おっしゃる通り、ぱっと見た目ではわからない所に彼の強さと巧さ、そして強心臓が隠れていると見るべきでしょうね。

昔初代若乃花と栃錦が千秋楽での全勝対決を控えた夜、若乃花が極限の緊張から逃げるように映画館を訪れてみたら前の席に栃錦が居た、というエピソードがあるそうですが、拳四朗の場合はそういうものとは違うのかも知れませんね。
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2017-10-29 08:27:02
>月庵さん

比嘉の試合は、だいたい仰る通りの印象でした。マソンは闘い方次第で、もっと比嘉を苦しめられるタイプかと思っていましたが。足で捌こうとすると却って踏み込まれそうだから、最初止まって食い止めて、その後動こう、という目論見なのかと思ったらそうでもない。基本は出来ていて、筋の良い選手には見えましたが、その先の部分がまだ備わっていない段階の選手だったかもしれません。
比嘉と井上はもう体格が違うでしょうが...WBC上位陣に、ランク相応の完成度あるボクサータイプがいるとすれば、そこがひとつの正念場でしょうね。なまじ技巧頼みの、ヤワなボクサータイプでは比嘉が攻めたら保たないでしょうが。足、カウンター、フィジカル兼備となると、実はファン・エルナンデスがある程度まで備わっているかと思っていましたが、ああいうことになりましたね。
井岡の現状に関しては情報がまったく出ていませんね。海外報道では指名挑戦者の陣営が来日構想を語っているらしいですが...だとしたらもうジムワークを始めていないと無理でしょうが、そういう話なら、スポーツ新聞あたりが取材を許されていてもいいはずで、それが現時点では無いので、果たしてどうなるものやらと。
栃若エピソードとはお古いですが(笑)私もその話は何かで見聞きしました。最近のボクサーはその頃の勝負師的感性とはだいぶ違った情緒の持ち主が多いかもですね。


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