アリの一言 

オキナワ、天皇制、朝鮮半島の現実と歴史などから、
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憲法違反を露呈した天皇の「誕生日会見」と識者の「自制」

2016年12月24日 | 天皇制と憲法

     

 23日の「天皇誕生日」に発表された明仁天皇の宮内庁記者会との会見内容には、見過ごすことができない重大な問題が含まれています。(以下、天皇発言の引用は宮内庁HPより)

 天皇が「今年1年を振り返ると、まず挙げられるのが」としたのが「フィリピン訪問」でした。その問題点については以前(2月1日、2日、4日)書いたのでここでは省略します。
 天皇はまた、「11月中旬には、私的旅行として長野県阿智村に行き、満蒙開拓平和記念館を訪れ…満蒙開拓に携わった人々の厳しい経験への理解を深めることができました」と述べました。

 天皇の「フィリピン訪問」と「満蒙開拓平和記念館訪問」には共通した問題があります。フィリピンに侵攻し現地住民に多大な犠牲を与え、また満州侵略と一体の開拓団を送り込んで多くの犠牲をもたらした最大の責任者はいずれも昭和天皇(裕仁)であること、にもかかわらず明仁天皇はそれに一切口をつぐみ、「友好」「理解」を強調することによって、天皇および天皇制帝国日本の加害責任を隠蔽する役割を果たしていることです。

 これはもちろん大きな問題ですが、ここでは、「生前退位」をめぐる天皇会見の問題を取り上げます。
 天皇はこの日の会見で、8月8日の「ビデオメッセージ」についてこう述べました。

 「8月には、天皇として自らの歩みを振り返り、この先の在り方、務めについて、ここ数年考えてきたことを内閣とも相談しながら表明しました。多くの人々が耳を傾け、各々の立場で親身に考えてくれていることに、深く感謝しています」

 問題は、「内閣とも相談しながら」です。「ビデオメッセージ」は自分の独断専行ではないとして「憲法違反」との批判をかわそうとしたのでしょうが、これは語るに落ちるの類です。憲法はこう定めています。

 「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負う」(第3条)
 「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない」(第4条)

 この規定に基づき、憲法は第6条と第7条で天皇の「国事行為」を合計12項目列記しています。この中に「ビデオメッセージ」で「生前退位」というきわめて憲法的・政治的な問題について私見をのべるという行為が含まれていないことは言うまでもありません。この点で「生前退位のビデオメッセージ」が憲法違反であることは明白です。

 これに対し、天皇およびその擁護者は、「ビデオメッセージ」は「国事行為」ではないが「公的行為」として許されるという「公的行為」論を持ち出します。しかし重要なのは、この説においても、「公的行為」に第3条の「内閣の助言と承認」が必要だという点では争いがないことです。

 「内閣と相談」と「内閣の助言と承認」がまったく別であることは言うまでもありません。天皇が「内閣とも相談しながら表明」したと述べたことは、あの「ビデオメッセージ」は「内閣の助言と承認」によるものではなかったと認めたに等しいのです。仮に「公的行為」論をとるとしても、それが第4条に抵触する「政治的」行為である上に、第3条の「内閣の助言と承認」にも反する二重の憲法違反であることは免れようがありません。

 憲法第99条によって、天皇にも憲法を「尊重し擁護する義務」が課せられています。〝天皇の憲法違反”を主権者である「国民」は絶対に許すことはできません。

 ところがこの重大な〝天皇の憲法違反”を指摘するメディア、「学者・識者」は皆無に等しいと言わねばなりません。深刻なのは、「体制寄りメディア・識者」だけでなく、「民主的」とみられている「識者」にも「天皇タブー」が蔓延していることです。

 例えば、権力に対する辛辣な批判で知られる作家の高村薫氏は、こう述べています。

 「八月にあった天皇のお気持ちの表明について新聞社から感想を求められたとき、反射的に<これは言ってはならない>という一定の自制が働いた結果、もっとも正直な思いを迂回して「これはたいへんな事態になったと思いました」と応えていた。…政治に関わってはならない天皇が、公の電波をつかって国民に表明してしまったこと、そのことである。…これは憲法に定められている象徴天皇の範囲を越えているのかもしれない、と考えていたのだが、初めに<これは言ってはならない>と自制したのは、まさにその「憲法違反」の一語である」(「図書」11月号、岩波書店)

 ここには、オピニオンリーダーと言っていいほどの識者の鋭い分析と、「自制」という名の天皇制・権力への迎合が混在しています。
 「象徴天皇制」によって政界、言論界にこうした「天皇タブー」「自主規制」が広く深く根を張っている現実を直視する必要があります。

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