アリの一言 

オキナワ、天皇制、朝鮮半島の現実と歴史などから、
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「天皇退位特例法」審議の3つの欺瞞

2017年06月03日 | 天皇制と憲法

     

 「天皇退位」の特例法が1日の衆院議院運営委員会で全会一致(自由党は棄権)で可決され、2日衆院通過しました。9日にも成立する見通しです。
 法案自体の問題点については先に述べました(5月20日ブログ参照http://blog.goo.ne.jp/satoru-kihara/d/20170520)ので、ここでは、法案の審議をめぐる見過ごせない問題を3点にわたって述べます。

 ①憲法の根幹にかかわる前代未聞の法案の審議が、わずか2時間半

 「天皇退位」の特例法は、少なくとも憲法第2条、3条、4条に直接かかわる憲法上の重大問題です。憲政史上例のないまさに前代未聞の法案です。そのことは、法案への評価・賛否はともかく、誰も否定できないでしょう。
 にもかかわらず、その国会審議の時間はわずか150分。審議とは名ばかりの儀式的なスピード採決でした。しかも衆院では審議のための特別委員会すら設置せず、本来国会の運営問題を協議する議院運営委員会ですませるという手抜きぶりです。

 言うまでもなく、天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基づく」(憲法第1条)のが大原則です。わずか2時間半の審議でどうして「国民の総意」などと言えるのでしょうか。主権者・国民の考え、意思などお構えなしの馴れ合い審議ではありませんか。

 ②「天皇メッセージ」は「退位の意向ではない」という菅官房長官の大ウソ答弁

 政府を代表して趣旨説明・答弁に立った菅義偉官房長官は、昨年8月8日の明仁天皇による「ビデオメッセージ(いわゆる「お言葉」)は、「退位の意向を示されたものではない」と繰り返し答弁しました。

 冗談ではありません。あの「メッセージ」が天皇自身による「退位の意向」示唆であったことはあまりにも明白です。だから翌8月9日付の新聞は、1面の大見出しで、「天皇陛下 生前退位を示唆」(「読売」)、「生前退位強いご意向」(「産経」)、「生前退位強くにじませ」(「毎日」)、「退位の願いにじむ」(「朝日」)、「生前退位に強い思い」(中国新聞)など、例外なく天皇が「退位の意向」を示したと報じたのです。

 にもかかわらず菅氏が見え透いたウソ答弁を繰り返したのはなぜか。それは菅氏の答弁自体が語っています。
 「退位の意向を示されたものではない。政治的権能の行使には当たらない。陛下のお言葉を直接の端緒(特例法制定の―引用者)と位置づければ、憲法に違反する恐れがある」(2日付中国新聞=共同)
 「天皇メッセージ」が「退位の意向」を示したものと認めれば、「政治的権能の行使」を禁じた第4条に反する憲法違反が明確になるからです。そのために黒を白と強弁したわけですが、黒は黒。菅氏の答弁は「天皇メッセージ」およびそれに端を発した特例法制定が憲法違反であることを自ら認めたようなものです。

 ③数々の問題を指摘しながら日本共産党、社民党が「賛成」した怪

 共産党は質疑(塩川鉄也衆院議員)の中で、「(天皇メッセージは)直接の端緒ではない」とする菅氏の答弁のごまかしを指摘し、さらに法案が「公的行為」を無条件で肯定していることを、「公的行為の政治利用」の実例を挙げて批判。法案の「修正案」を提出しました。この限りでは妥当な態度です。
 しかし修正案は共産党だけの賛成で否決されました。そうなれば共産党は当然法案に反対すべきでしょう。共産党が修正を求めた2点はどうでもいいような問題ではなくいずれも憲法の根幹にかかわることなのですから。ところがなんと共産党は「法案には賛成します」の一言で賛成に回ってしまったのです。

 社民党(照屋寛徳衆院議員)も、「一代限りとすることには反対。皇室典範を改正すべき」と主張しながら、共産党の修正案には反対し、特例法には賛成しました。

 共産党や社民党が特例法の根本的な問題点を数々指摘しながら、それがことごとく否定されたにもかかわらず、法案に賛成したことは、きわめて奇怪であり、言行不一致も甚だしく、支持者・国民を愚弄するものと言わねばなりません。自由党が「反対」ではなく「棄権」したのも、「全会一致」の形を保つためにほかなりません。

 以上のように、「天皇退位特例法」は法案自体が憲法に反しているばかりか、その欺瞞に満ちた審議は、国会が、「天皇制」に関しては異議を申し立て歯止めをかける政党が1つもない翼賛議会になっていることを改めて浮き彫りにしました。
 2017年6月1日午後3時17分。「起立総員」の佐藤勉委員長の声で「退位特例法」が「全会一致」で可決された瞬間、憲法が音をたてて崩れていくような気がしました。

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