アリの一言 

オキナワ、天皇制の現実と歴史などから、
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「天皇制廃止」はなぜ議論にならないか-2つの対談から

2017年05月16日 | 天皇制と憲法

     

 天皇の退位についての特例法案が19日にも閣議決定され、この問題は1つのヤマ場を迎えます(法案批判は後日)。
 昨年の「天皇ビデオ」以降の「退位問題」の致命的欠陥は、再三述べて来たように、廃止を含む天皇制自体についての議論がまったくないことです。なぜなのか。それを考える手がかりとして、2つの「対談」を紹介します。

☆1つは、テッサ・モーリス・スズキ氏(オーストラリア国立大教授・歴史学)と吉見俊哉氏(東京大大学院教授・社会学)の対談です(『天皇とアメリカ』集英社新書、2010年より)

 テッサ 不思議なのは、たとえば憲法改正論議のときに、そろそろ共和制(天皇制廃止―引用者)にすべきだという提案があっていいはずなのに、それがマスレベルでは出てこなかった。外から見ていると、共和制の議論は当たり前に存在すべきですよね。ところがそれが全然ない。実際に共和制に移行するかどうかはまったく別問題なのです。しかし討論がないことは大変不健全だと感じました

  吉見 日本でも、戦後憲法ができるころにはそういう議論があった。でも、今はなくなってしまった。それはタブーだからとか、検閲があるからとかということよりは、この国では人々の想像力そのものが、もうそこまで及ばないのだろうという気がします。そして現在では、日本国民の約八割が、象徴天皇制が現在のまま続くことを望んでいるといいます。積極的に「天皇」に何か幻想をいだいているというよりも、特にネガティブな要素があるわけでもないので、天皇制は存続させるのが「自然」だろうという感覚だと思います。「安心・安全」の天皇制ですね。今では天皇は、積極的に求められているわけでも、積極的に拒否されているわけでもありません。むしろ日本人には、天皇制のない日本というものが、もはや想像することすらできなくなっているのではないでしょうか

 吉見 天皇の存在を根底から否定する議論は、右翼を刺激しますから、メディアも気軽に流すことができない。それで世論を醸成できない。…そうすると、人々の発想のなかから共和制論議ということがなかなか生まれなくなってくる。想像力の縮減ですね。

 テッサ 想像力の欠如こそ、危険なのです。おそらく現在の天皇制に関する議論、憲法に関する議論で、いろいろな難しい問題はあるのですが、最も大きな問題のひとつは想像力の欠如ではないかと感じます。天皇制がなくなっても、さほど世の中に変化はないはずです。いちばん変わるのは、想像力が解放される部分ではないでしょうか

 ☆もう1つは、奥平康弘氏(東京大学名誉教授、憲法学)と木村草太氏(首都大学東京教授、憲法学)の対談(『未完の憲法』、潮出版、2014年)です。

 木村 そもそもの話として、君主制―日本の場合は天皇制が、いったいなぜそんなにも強く日本人を惹きつけるのでしょう?その点に、私は素朴な疑問を感じてしまうんです。

 奥平 「天皇制は廃止すべきだ」という立場の議論は、残念ながら日本人一般の中でほとんど議論の土俵にすらのぼっていません。「天皇制はなんとなく日本の伝統に即している気がするし、日本人は調和を重んじる民族なのだから、いい国であるためには残しておいたほうがいいのではないか」という、まさに「なんとなく」の天皇制肯定が当然の前提となってしまっているんですね。

 木村 一つの合理的解釈として、人々が巨大な「惰性」「慣性」の中にいるのではないか、という推察が成り立つ気がするのです。…先生がおっしゃる「天皇制に対するなんとなくの肯定」を支えているのは、案外そうした「惰性」「慣性」かもしれません。

 奥平 理論的な根拠というものを示さないままで、いわば「慣性としての天皇制」ともいうべきものが、日本には成立している。しかし、それは慣性が根拠になっているからこそ、思いのほか強力なんですね。…そう考えてみると、敗戦後に天皇制を残すことに成功した日本の支配層のやり方というのは、ある意味ですごく巧みでした。

 2つに対談には、共通した指摘(問題意識)があります。「想像力の縮減・欠如」・「安心・安全の天皇制」と、「惰性」「慣性」・「慣性としての天皇制」。

 自分の「安心・安全」のために「惰性・慣性の天皇制」に安住していていいでしょうか。「天皇制」が日本の民主主義・人権・平和にとってどういう意味をもってきたのか、持っているのか、持とうとしているのか。いまこそ「想像力を解放」して議論しようではありませんか。

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