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「漢城別曲-正」・・・眠れぬ夜は“誰”のせい…?

2009年02月08日 07時48分46秒 | 韓国ドラマの話

「イ・サン」のあらすじ記事で少し触れましたが、先日やっと

「漢城別曲-正(原題:한성별곡-正)」
を観ました。

そのせいかどうか定かではありませんが、最終回を観終えた夜はなかなか寝付くことが出来ず…。
以前書いた、私の母が眠れなかった話とは少し違うと思うのですが、物語の余韻が延々と残った罪な(?)ドラマでした。

このドラマ、日本版のタイトルが「漢城別曲」になっていますが、物語を観終えて察するに、『正』はこの作品に必須の文字だと思い、私はこちらのタイトルを使用したいと思います。

で……実は、正直いって「漢城別曲-正」にはそんなに期待していなかったんです。
全8話の史劇(しかも“フュージョン時代劇”)で、こんなにクオリティの高い(←あくまで個人的感想)ドラマをみられるとは思ってもみなかったんですよ。

そもそもどんなドラマかといいますと── 以下ちょっとネタバレ注意

【あらすじ】

18世紀末の漢城(今のソウル)。

時の王、正祖(イ・サン)は汚職と腐敗にまみれた国政を改革しようと、遷都を計画していた。“遷都は豊かな朝鮮を作る道”と王は改革に燃える。
だが、王宮にも有力貴族にも多くの反対勢力がいた。そして市塵商人たち(王宮外郭にある特権的商人集団)は遷都による既得権の喪失を心配していた。

低階級生まれで庶子として身分差別と世の不公平を痛感しているパク・サンギュ
チン・イハン)の唯一の喜びは儒学者の娘のイ・ナヨン(キム・ハウン)。
ナヨンはサンギュの閉ざされた心を開かせようと、清で先進文明を学ばせるために留学へ旅立たせる。ナヨンのサンギュに対する憐愍はいつしか愛情に変わっていき、清から戻ってきたら彼の妻となり、明るい世界を夢見て生きようと思っていた。
しかし4年後、サンギュが戻ってくるとナヨンの姿はなかった…。

一方、ナヨンに好意を抱く使用人で幼馴染みのヤン・マノ(イ・チョンヒ)もナヨンから新しい思想を聞き、たゆまぬ努力とナヨンの父の推薦で通訳官になり、清との密貿易で巨額な資産を手に入れる。マノの秘めたる想いは、ナヨンを探して幸せにすること。しかし通訳官を辞して朝鮮全土を探してもナヨンの消息はつかめない。

そんな中、市塵商人、高利貸しが連続して不審死を遂げる。左捕盗庁の武将となったサンギュは真相究明に奔走。死因を調べるうちに、死穴に残された金の鍼(はり)と口腔に薬物の痕跡を発見する。
また、内偵していた密貿易船から中国の高級薬剤“八角”を発見。しかしその薬剤は“八角”ではなく、痕跡を残さない“毒の実”だった──。

このドラマははっきり言ってわかり難いです。
「どれどれ」と安易に手を出してもチンプンカンプンの可能性大。

私がなんとかストーリーについていけたのは、「茶母(チェオクの剣)」にかつて
はまったことと、今現在イ・ビョンフンPDの「イ・サン」を観ているからです。

雰囲気は「茶母」、時代背景は「イ・サン」。どちらかが×だと“わけがわからない”
ドラマになる可能性がとっても大きい。

ドラマそのものは、色彩を押さえたタイトルバッグ、暗いシーンのコラージュがとても美しく、流れる音楽も素敵です。カッコイイ!
回想シーンで映る春夏秋冬の美しい山河は、一枚一枚がまるで絵画のよう。
桜、松青、紅葉、雪など、自然の変化を追っていく映像はため息ものです。

本作は他のオーソドックスな時代劇より、絵づくりに多くの工夫が加えてあり、まるで映画のようでした。陰影の深いスタイリッシュな映像は見ごたえ充分です。

一方物語はというと、殺人、拷問、陰謀の連続…。「謎」の複雑さを予感させ、全く先が読めません。逆転に告ぐ逆転で、真の黒幕はなかなかわからない。
正祖王、大妃、サンギュ、ナヨン、マノ、そして重臣たち…それぞれの信念がぶつかり合い、運命が複雑に絡んでいて、最後までまったく飽きない展開でした。

<押さえどころその1~それぞれの果たされない『愛と夢』>

やっぱり一番私の心を打ったのは、サンギュとマノ、そしてナヨンの“愛”です。

「アガシー!」
と呼び掛け、本心を吐露するマノの純粋さ。

「ナンジャ~!(※最後に解説有)」
と叫び、涙をこらえるサンギュ。

「トリョンニム。希望を失うことと、叶わないの
はどちらが悲しいと思う?」
惨死を覚悟で正義を貫こうとするナヨン──。

やっと見つけたナヨンがまさか殺人者!?おまけにサンギュの父が黒幕!?

などなど、役人として王様の命を受けて駆け回るサンギュには辛すぎる展開の連続。おまけに留学時代からの親友はナヨンと正義の間で揺れるサンギュを疑い始め、結局真相に一歩近づいたところで殉死…。

4年の間にナヨンに起こった出来事も悲惨としか言いようがなく、その運命を招いた王様の悲愴な決意、心情、そしてその最期も辛くて重いです。

本作のナヨンは自分の信念のもと、大義に身を殉じます。
観ていて、「逃げれば良いのに…」と何度思ったことでしょう。

そしてサンギュ(最初は眉毛の太さと、弱っちいキャラにちょっと驚いた)の優しく温かい声(もちろん心も)が重いテーマの中でオアシスのように感じられました。

正祖王とナヨンの数々のシーンはなんとも言えない緊迫感、そして底に流れる王様のあきらめに近い情熱も心打たれました。

更に、王様(正祖王)の最後の言葉──。

「それでもあきらめない余は“正”しいのか?」

何が、そして誰が正しいのかなんて誰にも分からない。ゆえに、この“正”という文字がこのドラマのキーワードだと強く感じられたのです。
これを抜いて単に『漢城別曲』としてしまった邦題はちょっと残念…。


<押さえどころその2~背景>

正祖王(イ・サン)は、実父の死に深い恨みを抱いていました。
王になったのち、恨みを胸に秘め、特権的な両班階級に対して改革を求めていきます。

ですが、正祖の早すぎる死によって改革は頓挫。若すぎる死は毒殺と囁かれていますが、証拠になる文献は残っていません。

以降、祖父英祖の妃“大妃”が実権を握り、勢道政治が中心となります。
キリスト教弾圧や、政争も激しさを増し、朝鮮半島は政治的な混迷の中に戻っていくのです。
このへんの李朝国史が少しでも判らないと『漢城別曲-正』は、残念ながら“意味不明”なドラマと化してしまうでしょう。

それにしても「イ・サン」を観ている(現在進行形)私としては、とても複雑な気持ちになるドラマでした。
「イ・サン」の解釈と「漢城別曲-正」の解釈は別物ですが、どちらも正祖王が改革を積極的に進めようとし、重臣や民(商人)がそれを阻むのは同じです。

サンギュが庶子なのに官職に就いていたので、「あ~あの改革うまくいったんだ」と少し嬉しくなるものの、結局“あの”結末です。
正祖王が最後の最後まで孤独であった姿をこちらのドラマで見て、ひとつの解釈と言えど、とても悲しい気持ちになりました…。

いずれにせよ、韓流時代劇がお好きな方には“超”おすすめ!

観て損はありません!!(出来れば先に「イ・サン」を数話でいいから観てね♪)

【※言葉解説--ナンジャ】

ナムジャ(男性)とは違います。もちろんナンジャタウンでもありません。
(検索したら『ナンジャタウン』だらけだったので…orz)

サンギュがナヨンを呼ぶときに、字幕では“ナヨンさん”とありましたが、とても響きが良い言葉を使っているので心に残りました。
「ナンジャ」はサンギュがナヨンを呼ぶときの韓国語です。

ここで使われるのは古語表現で、漢字で書くと「郎子」と「娘子」。
前者は独身男性を上品に呼ぶ語であり、後者は独身女性を上品に呼ぶ語です。

ちなみにナヨンがサンギュを呼ぶときは「(トリョンニム)」でした。
これは未婚の男子を敬う表現です。後半で再会する2人が互いを見つめて悲しそうに「ナンジャ」、「トリョンニム」と呼び合う場面は胸がいっぱいになり、涙が溢れてしまいます。
 
 

 


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4 コメント

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「食客」って (メロディ)
2009-02-08 20:17:33
以前にタイタンさんの記事で見たような気がして、
WOWOWで放映されるのを知って録画しました。

1日に2話ずつなのですが、結構長いドラマなのかしら?
2話まで観て、面白そうだなと思いました。
しばらく観るつもりです。

メロディさん (タイタン)
2009-02-08 21:29:46
コメントありがとうございます。
それ見たかったんです…(涙)
タイトルが「?」ですが(韓ドラは?なタイトルが多い)面白いと思いますよ。
後で感想を教えてください!!
20話くらいで終わると思いますよ。
Unknown (23時のシンデレラ)
2009-02-10 17:09:11
題名はズバリ直訳っぽいですけど、微妙に一文字抜いたのが謎ですね。密かに正祖ブームなんでしょうか。どちらかが先に当ったので二匹目の泥鰌を狙ったのかな^^?
23時のシンデレラさん (タイタン)
2009-02-10 18:50:18
ズバリ、密かにブームかもしれません(^_^;)
NHKで夏からドラマが始まるし、この短編のほかにも「正祖暗殺ミステリー8日」というドラマも近日…(三匹目のドジョウ)

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