<病室>
入院患者にとって病室は、寝室であり、食堂であり
くつろぐ居間でもあります。
長く入院している女性の病室は、少しでも居心地がいいようにと
いろいろ工夫してあります。
ベッドには、きれいな花柄の大きなバスタオルが敷いてあり
サイドテーブルの上には湯飲みにコップ、小さなポット
造花や雑誌、うちわ・・・・・と、こぼれんばかりに。
ぐるりと囲んだカーテンレールには、カネのハンガーに
カーディガンや薄手のコートがかかっていて。
お風呂に入ったとき使ったバスタオルやタオルもかかっています。
私も15年前、長く入院した時は、時計やポータブルラジオ
手鏡まで持って来てもらいました。
あまりの寂しさに、ササミをバッグに入れて持って来てもらったことも・・・・。
でも今回は、早く退院できるだろうからと、私物は極力少なくしました。
枕の横にティッシュの箱と、スマホと眼鏡だけを出して、
後は全部サイドテーブルの引き出しの中に。
検査にきた看護師さんは、私の病室があまりに殺風景なので
「家族の人は、来ないんですか?」と。
『私の体調が落ち着いているので、あまり来ないんです』と少し寂しげに答えました。
15年前の私は、日によって体調が目まぐるしく変わったので
主人は必ず毎日顔を見せに来てくれました。
ベッドから降りようと、ユルユル靴下に、お気に入りのいつものショートブーツをはくと
「履物もこんなんで・・・・・・・・。ご主人にスリッパを買ってもらったら」と
本当に心配そうでした。
ユルユル靴下と、年季の入ったショートブーツは、
病院のツンツルテンのパジャマにピッタリ合って
私は気に入っているんだけど・・・・。