猿山政治論

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米国製薬会社が日本の薬価を決定??~年次改革要望書2008に見る横暴(2)~

2009-09-04 09:42:00 | 年次改革要望書
今回は、「年次改革要望書2008」に見る米国の横車についての第二弾として、日本の「医療機器・医薬品」「食品添加物」行政への米国の介入についてご紹介します。

1.薬価決定プロセスへの介入

[年次改革要望書2008抜粋]
II-A-2. 米国製薬業界の代表を中医協の薬価専門部会の委員に選任する。

ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、日本における薬の価格は、中医協(中央社会保険医療協議会)という厚生労働省諮問機関の答申に基づき決定されることになっており、具体的な検討は中医協内の「薬価専門部会」においてなされることになっています。

もちろん厚生労働省お気に入りの薬品会社・医者・学者等がずらりとならぶ御用機関ではありますが、いちおう日本人だけで構成されております。厚生労働省としても外国から口を挟まれるのはうっとうしいですし、自分の思いのままにならないのは困りますから当然のことです。

ところが米国は、ここに米国製薬業界の代表を参加させろといってきたわけです。

米国の製薬会社は、日本の製薬会社よりもはるかに巨大で、例えば国内最大の武田薬品工業ですら世界のトップ10に入っていません。新薬の開発力では日本の製薬会社も十分健闘していますが如何せん見劣りしてしまいます。

つまり新薬の特許を多く保持する米国の製薬会社としてはジェネリック品の拡大は望ましいことではなく、薬価を維持することでジェネリック品に対する価格競争力を維持したいという強い動機があるのです。

そこで、中医協の薬価専門部会に委員を送り込むことで、薬価をコントロールしようという腹積もりなのです。

せっかく日本で根付いてきたジェネリック品の使用を、尻すぼみにさせてしまっては、将来の医療コストの削減にも影響を及ぼすことになります。ジェネリック品の使用は、なにせ患者さんに損をさせることなく医療コストを引き下げるための最も有効な手立てだからです。

2.薬価の維持圧力

[年次改革要望書2008抜粋]
II-A-3. 新薬の革新的価値を初期価格に反映させ、特許期間中および独占権期間中はその既存価格を維持しながらジェネリック医薬品の促進を行うことにより、価格算定制度を改革する。
II-A-4. 革新的医薬品の価値を損なう毎年の価格改正を控え、革新的新薬の導入を促進させる。

ジェネリック品を注文してもあまり価格が下がらないということ出れば、どうしても患者・医者は「本物」を選んでしまいます。

新薬の特許を多く保持する米国の製薬会社はそれを狙って、価格改正を控えるよう求めているのです。

他の多くの分野では、自由競争による価格引下げを求めているにもかかわらず、この分野だけがそれに逆行しており、米国の身勝手さがとてもよくあらわれているケースです。

3.新薬の販売促進策

[年次改革要望書2008抜粋]
II-A-8. 新薬の処方期間を基本的に30日まで延長し、新薬が市場に出回ってから6カ月後に、30日を限度とする処方期間を終了する。特定の安全性に関する懸念により、新薬の処方期間を30日未満とすべき際には、透明で科学的根拠に基づいた方法により決定する。

新薬に限って処方期間を延長することで、新薬に強い米国製薬会社に便宜を図ろうとする意図が丸見えです。

[年次改革要望書2008抜粋]
III-A-4. 日本と類似する安全基準を持つ国において既に承認された医薬品について、負担がより少ない審査要件を検討するよう総合機構を奨励する。
III-A-5. 2012年までに、新薬の承認申請に関して厚生労働省の最終承認までの審査期間を2カ月以内に短縮する。
III-A-6. 承認後の変更に関する審査期間を国際的な基準である3カ月に短縮する。

この期間では、日本人のDNA特性、体質、食事、生活習慣等を考慮した治験を行うことは不可能で、きちんとやったのか疑わしい海外のデータを鵜呑みにせざるを得なくなります。

以前、香港で感染が広がったSARS(カナダでも発生しましたが感染者はアジア系)など気持ち悪いほどアジア人ばかりが感染する病気があるように、妙な病気が流行る時代ですので、こうした要求を鵜呑みにするわけには参りません。

他にも次のような審査期間短縮に関する要求があります。個々に検討してみると、とんでもない話のオンパレードです。

[年次改革要望書2008抜粋]
III-A-7. 新薬の薬事規制の改善と平行して、ワクチンの利用の促進および薬事規制を向上する。予防医薬品およびワクチン問題について米国業界と協議する。
III-B-4. 薬事承認を必要としない小さな変更、届出のみで可能な変更、また年次報告書への記載で可能な変更を明確にすることにより、一部変更に関する承認を迅速化し、その要件を削減するためのガイダンスを発行する。米国食品医薬品局の慣行と整合する変更については、「リアルタイム審査」手続きを導入する。
III-B-5. 厚生労働省の2008年9月5日付通知に基づき、加速化試験の方法の有効性が科学的に立証されているすべての場合において、医療機器の承認の基準として、加速化安定性試験のデータの受け入れを拡大する。
III-B-6. 一度の審査で科学的および規制的な問題を最も効率的に審査できる場合には、機器の一括申請を許可する。機器または適応症が類似している場合、添付データが類似している場合、および同一の審査チームにおいて審査が可能な場合には、一括申請を許可する。
III-B-7. 申請における原材料記載要件を簡素化し、原材料の化学組成を特定するための要件を通知19より削除する。日本の生物学的同等性試験の要件がISO 10993と十分整合していることを保証する。
III-B-8. 外国の工場について、現行の認定制度に代わり、国際慣行に一致した簡易登録制度を採用する。
III-B-9. 品目ごとの品質管理システム(QMS)調査を廃止し、工場ごとの定期的なQMS調査を採用する。
III-B-10. 審査の一環としての、国立感染症研究所による体外診断薬の事前承認審査を廃止する。治験から保険償還までの間に体外診断薬の使用を認める規定を設ける。

4.血液製剤の輸入制限緩和

[年次改革要望書2008抜粋]
IV-A. 原産国表示を認め、「任意」もしくは「非任意」表示制度を廃止する。
IV-B. 需給計画ならびにその他の措置が血漿タンパク製品の輸入を制限しないよう保証する。
IV-C. 血液製剤の製造や構造の変更の一部変更に関わる承認の迅速化を図り、審査の効率性を向上させる。
IV-D. 米国業界およびその他の利害関係者が規制当局へ有意義な意見を提出する機会を提供するためにコミュニケーションを向上させる。

とんでもない血液製剤を日本に押し付けて、深刻な薬害エイズ問題を引き起こしておきながら、あいた口が塞がりません。この問題では、何故か日本側当事者(厚生労働省と旧ミドリ十字)ばかりが槍玉に挙げられますが、輸出側にそもそも問題があったのです。

血液経由の妖しげな病気は他にもいろいろとありますので、このような要求を呑んではいけません。

5.食品添加物の輸入要件緩和

[年次改革要望書2008抜粋]
V-C-1. 食品添加物における新規ならびに変更の申請が、科学的な原則に基づき、透明かつ迅速に完了するよう、国内および国際的な団体を含む既存の科学的審査と評価を最大限活用する。
V-C-2. 安息香酸やソルビン酸等、食品添加物と分類される天然由来の物質の痕跡により、検疫所で止められている貨物の通関手続きに関するプロセスの一貫性を向上させ、体系的に問題に取り組む方法を策定する。

清涼飲料水(某大手コーラ会社製らしいです)において、安息香酸(保存料)とアスコルビン酸を使用している場合、ある条件下で反応しベンゼン(発癌物質です)が生成することが報告されたため、10ppbを超える製品の自主回収が要請されたという事実もありますので、とんでもない話です。

もしかすると当該某大手コーラ会社の圧力かも・・・。

続きは次回で

筆:猿山太郎


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