「スピンクルの囁き」

前世の記憶を持って『この世』に降り立った、スピリチュアル占師「スピンクル」が、日々感じるこの世の事象を綴っていきます。

時代小説「お幸と辰二郎」の前編です♪・・・第1章~第3章

2017年05月06日 10時30分29秒 | 小説・物語

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 皆さんこんにちは、スピンクルです♪
GWは順調に楽しんでいますか?(笑)

 GW期間中も、お仕事の方もいらっしゃるようで、本当にお疲れ様です♪

 さて、以前6回に分けて掲載した、セッションでの奇跡を題材とした時代小説「お幸と辰二郎」でしたが、ご覧になった方からのリクエストがありました。

 「一気に通しで読みたい!!」(笑)

 有難い事ですね♪
まさかここまで反響があるとは予想もせず(笑)、恐縮しきりです…(笑)

 という事で、若干修正も加えながら、一気に全編掲載したいと思います!(笑)
その方が読みやすいのかな・・?(笑)

 それでは、改めてご覧ください♪

と!思ったら、ブログの字数制限に引っ掛かっちゃいました・・(笑)
最大3万文字のところ、55000文字・・・。
気付かぬうちに、原稿用紙140枚強の長編になっていたんですね・・(笑)

 なので、前編と後編に分けますね。 

時代小説「お幸と辰二郎」・・・時代を超え再会した二つの魂

 第1章・・・「運命」 

 時は今から数百年前。
田園地帯が広がる、自然豊かなある地域で、一人の女の子が産まれました。

 しかし、6番目という事もあり、経済的には決して裕福ではない事もあり、周りの親戚や知人から、地域の慣習に従って「口減らし」をしろ!と、両親は勧められておりました。
とは言え、ようやくこの世に産まれてきたその娘に手を掛ける事など露ほども考えられず、幸せになって欲しいという願いを込め、「お幸」と名付け、愛情たっぷりに育てていったのです。

 そんな両親の愛情を受け、すくすくと育ったお幸でしたが、3歳のある日、経済的に困窮を極め、これ以上一緒にいると不幸になってしまうと考えた両親は、考えに考えた挙句、断腸の思いで知り合いの「大道芸人一座」の座長にお幸を預けたのです。

 若い女性におぶわれ、号泣し手を伸ばしながら両親を求めるお幸の姿を、一座が山あいの向こうに消え入るまで、両親はつい奪い返してしまう衝動を必死に抑え、見送っておりました。

 それからしばらくは、両親を思い、毎日泣いていたお幸でしたが、年が近い同じ境遇で引き取られた子供達と次第に打ち解けあい、また「子守役」の若い女性座員の優しさもあって、半年も過ぎる頃には、すっかり笑顔を取り戻しておりました。

 季節が何度も巡り、北は東北、南は九州まで一座は興行を繰り返し、お幸も最初はコマ回しや子供踊りで観客を賑わせておりましたが、天性の素質があったのか、17・8歳に成長した頃には、一座の目玉である「綱渡り」の看板へとなっておりました。

 
 そんな一座に、ある街の有力興行主から「長期公演」の話が舞い込んできます。
ある神社の「落成」を記念して、祭りを開催するから、そこで一定期間公演して欲しいとの内容でした。

 通常は一週間単位で興行を繰り返し、次の興行地へ移動していた一座でしたが、安定した収入を見込めるならと座長は決断し、その話を引き受ける事に致しました。


 祭り会場の境内で公演が始まると、連日札止め大入り満員。 中には毎日通う「つわもの」もいたようです。

 そんな「常連」の中に、地元で大工を生業とする男「辰二郎」がおりました。

 口は悪いが心は正直者。大工の腕も天下一品の、母親と二人で暮らす根っからの職人でありました。

 そんな辰二郎の目的は、他の常連客同様、公演最後の目玉である「綱渡り」に出演する「お幸」であったようです。

 境内の一角に張り巡らせた綱の上を、命綱なしで右手に扇子、左手に傘を持ちながら軽快に渡るお幸を、辰二郎は興奮しながら見入っておりました。


 そんな大人気の一座も、週に一度は休息日。 座員は思い思いに街へ繰り出し、おいしい食べ物に髪飾りにと、休日を楽しんでいたようです。

 その中の一人に、一座の看板「お幸」の姿もありました。

 幸が街を散策していると、一人の若者が近付いてきました。 あの辰二郎でした。


 「お♪ これは一座の花形お幸さん! 街巡りですかい!」

 「えぇ。お店がたくさんあって、どこが良いのか・・笑」

 「おっと!それならあっしに任せてくだせぇ! この辰二郎がうまい饅頭やら名物やら食わしてやりますよ!!」

 
 張り切った辰二郎は、お幸を伴い賑わいを見せる「商店街」を歩き出しました。


 「こっちのソバ屋は食えたもんじゃねぇ、犬に食わせろってんだ!」

 「なにを~!! やい!辰! 商売の邪魔をしやがったら、承知しねえぞ!!」

 「うるせぃ!! なら美味いそばを出してみろってんだ!!」


 「ここの饅頭の味は街道一なんですがね! あのオヤジの顔がいけねえや! あれじゃせっかくの饅頭がまずくなる!」
 
 「こ~の野郎!! 誰の顔でまずくなるだと~!!」

 「うるせいやぃ!! このひょっとこオヤジが!! とっとと裏で饅頭こねてろってんだ!! なんなら頭の湯気でふかしてみろぃ!!」


 そんな辰二郎と店主のやり取りを見ながら、お幸は辰二郎お薦めのお店で、食事や買い物を楽しんでおりました。

 休日のたびにひょっこりと現れる辰二郎に伴われての「散策」は、お幸にとって恒例行事になり、丁々発止のやり取りもすっかり慣れ、逆に楽しみにもなっていたようです。


 そんなお幸でしたが、いよいよ公演も千秋楽が近付いた頃、この街での最後の「散策」で、例のごとく同行していた辰二郎にこう話しました。

 「もう少しで千秋楽ね・・・。こうして辰さんとここを歩くのも今日が最後ね・・・。」

 「よせやい!笑 話が湿っぽくなるじゃねぇか! なにもこれが今生の別れであるめぇし、千秋楽まで毎日見に行ってやるから心配するない!」

 「うん♪そうね笑 千秋楽は絶対!見に来てね♪ 千秋楽だけの大技に挑戦するから♪」

 「ほぉ!そうかい♪ じゃあ楽しみにしてねえとな!♪」

 
 そんな会話の数日後、公演は千秋楽を迎えたのです。

 会場は立ち見も出るほどの大入り満員。 ほとんどの住民が集まったかの如く賑わった公演は、いよいよ目玉の綱渡りへと移りました。

 その時、観客から一斉にどよめきが上がりました。

 昨日までとは打って変わり、渡された綱の長さは何倍にも伸び、高さも街全体が一望できるのではないかと思うほど高くなっておりました。


 「こりゃすげぇ!! あの高さは・・、とびのお前でもぜってぇ無理だな!!」

 「うるせぇ!! 大工のお前に言われる筋合いはねえやい!!」

 「ほら!お前さんたち! 始まるよ!!」

 「おっ、おう・・・。頑張れ!お幸ちゃん!!」


 会場の松明に照らされたお幸が、ゆっくりと静かに、足場の踏み台から綱へと、一歩目を踏み出しました。

 固唾を飲み、しーんと静まり返りながら見守る観客。

 二歩、三歩と綱の上を軽快に渡り始めたお幸。途中で傘を開き、扇子をクルクル回しながら、また一歩また一歩と順調に進んでいきました。

 その度に声なき声を上げ、手に汗を握りながら見守る観客・・・。
 
 あと数歩で到着と思われた次の瞬間、境内を駆け抜けるすさまじい突風!

 同時に、綱を結んでいた大木が大きく揺れ、綱の上で必死に耐えていたお幸を右に左に揺らします!!

 「うわぁ~! 危ない!!」

 会場中から悲鳴とどよめきが起こります!

 どうにか体勢を整えようとしていたお幸でしたが、大木のしなりの反動で、身体が綱の上から投げ出され、遥か下の地面へと落ちてしまったのです。


 「お幸ちゃん!! お幸ちゃーん!!!」

 悲鳴と怒号が飛び交う境内の中を、野次馬を必死にかき分けながら近付く辰二郎。

 地面の上でピクリとも動かないお幸・・・。

 
 「おい!!お幸ちゃん!!しっかりしろい!!」
 
 必死に声を掛ける辰二郎。

 「おい!このでくのぼう! 突っ立ってないで戸板持って来い!!」

 辰二郎に言われ、慌てて本堂から戸板を運んでくる周辺の男性陣。

 
 そのまま意識を取り戻さないまま、近くの診療所に運び込まれたお幸なのでした。


 第2章・・・「二人を見守る月」

 それからしばらく昏睡状態が続いたお幸でしたが、奇跡的に命は助かり、ゆっくりと目を開け始めました。

 そこには心配そうに見守る座長、座員、そして辰二郎がおりました。


 「お!おい!じじい! お幸ちゃんが目を開けたぞ!!」

 「お、おぅ!! お幸分かるか!? 私が分かるか?」

 「ざ、座長・・・・、私・・・、ごめんなさい・・・・泣」

 「大丈夫だ♪ 大丈夫だよ♪ お前は頑張ったんだよ・・・泣」

 大事そうにお幸の身体を包み込み、愛おしそうに頭をなでる座長。
 

 「お幸ちゃん!! 俺の事覚えているか!!・・・?」

 そんな座長を押しのけて、お幸の前で自分を指さす辰二郎。

 「辰さん・・・、声が大きい・・・笑」

 泣いていたお幸が、辰二郎の仕草に笑顔を出した瞬間、診療所に詰め掛けていた一同から大きな歓声が上がりました。


 転落から数日、公演の荷物を積み終えた一座は、次の興行地へと向かう準備を進めておりました。

 
 「座長、私大丈夫ですから、一緒に連れて行ってください!」

 「いや・・、この身体じゃしばらく養生しなきゃいけない・・。万が一命に関わったらどうするんだい!」

 「でも・・・。」

 「私たちの事は心配しなくて良い♪ 幸いにもしばらくはお松がトリの綱は務めてくれるから、お前はしっかり養生しなさい♪」

 「そうだよ♪ 私もまだまだ捨てたもんじゃないよ!笑 さんざん子守をしてきたあんたに負けるわけにはいかないからね♪」

 「それでしっかりけがを治して、あとから追いかけて来れば良い♪ 私はいつでも待ってるよ♪」

 「ざ、座長・・・泣」

 お幸を心配させまいと、明るく振舞う座長と、子守役でもあり先代の綱渡り芸人だったお松ではありましたが、一つ気掛かりがございました。

 「とは言っても・・・、いつまでもこの狭い診療所でご厄介になるという訳にもいかないしなぁ・・・。」

 「誰かがお幸を預かってくれたら良いんですけどねぇ・・・。」


 「やいやいやい! 誰かぁ忘れちゃぁいませんかい!?」

 いつも声と態度だけはでかい辰二郎が二人に近づいてきました。

 
 「幸いにも、うちは棺桶に片足突っ込んだばばあとあっしの二人だけでさぁ! お幸ちゃん一人ぐれぇなんてこたぁ、ありませんぜぃ!」

 「とは言ってもねぇ・・、お前さんに預けるのは少々気乗りがしないねぇ・・・。」

 「やい!じじい!!もういっぺん言ってみろぃ!! こちとら大工の端くれでぃ! お天道様に誓って、やましい事はこれっぽっちも考えてねえってんだ!!」

 診療所の前でわめく辰二郎に、一人の恰幅の良い老女が近付いてきました。


 「こら!このドラ息子が!! 座長さんがあんたみたいなとうへんぼくに大事なお幸ちゃんを預ける訳ないだろ!!」

 「なにを~!!このばばぁ! まだ棺桶に入ってねえのかい!!」

 どうやらこの老女、辰二郎の母親のようです。

 「座長さん、うちにはあんなバカ息子がいるから、気乗りしないのは百も承知ですけどね。私が責任を持ってお幸ちゃんを預かりますから、どうか安心して下さいよ♪」

 「そう言ってもらえると私共も助かるんですがねぇ・・・。」

 座長はそう言うと、チラッと辰二郎の方を不安げに見つめるのでした。

 「おうおう!なんだ!その疑うような目つきは!! 俺が信用出来ねぇって訳かい! それならな!・・・」

 「うるさいよ!! 静かにおし!! 奥のお幸ちゃんが起きるだろ・・。」
 
 「お、おう・・・。」

 辰二郎は母親の言葉にシュンとしながら、お幸の方へ目を運ばせました。

 「なら、当のお幸に訊いてみましょうかね」

 座長はお幸の気持ちに判断を委ねました。

 「お幸どうなんだい? あのお方がしばらく面倒を見てくれるって言うんだが・・」

 「あの・・・、もし・・、お邪魔でなかったら・・・」

 お幸は遠慮がちにそう呟きました。

 「もちろんだよ♪ 私が責任を持って、お幸ちゃんの身体をしっかり治してあげるからね♪」

 母親はそう言うと、慈しむようにお幸の頭をそっとなでるのでした。

 「よし!そうと決まれば、こんな陰気臭い所とはおさらばでぃ!!」

 相変わらず辰二郎の態度はでかいようです。


 その翌日、一座は次の興行先に向けて出発しようとしていました。

 「どうか、お幸をよろしくお願いします・・。」

 「任せて下さいよ♪座長さん。しっかり!この吉がお幸ちゃんを守りますからね♪」

 「座長・・・、すぐに、すぐに治して行きますから! お松姐さんも無理はしないで!」

 「分かってるよ!笑 心配しないで早く傷を治しな♪」

 座長と松は、蚊帳の外でふてくされている辰二郎と、その母親「吉」に深々と頭を下げ、お幸に笑顔で頷きながら一座を引き連れ出発したのでした。


 それからしばらく奇妙な「同居生活」が続きました。

 お幸とお吉が奥の居間、辰二郎は土間の近くが「生活の場」となりました。

 寝たきりだったお幸も、献身的なお吉の看病や、辰二郎の天性の明るさが功を奏したのか、体調が日増しに良くなり、もともと鍛えていたせいもあってか、2,3か月過ぎる頃にはすっかり普通の生活に支障が無くなっていました。

 そんな日の夜の事でした。休む準備をしている二人に、お幸はこう切り出しました。
  

 「お吉さん、辰二郎さん、こんな私に本当に良くしてくれて、ありがとうございました・・。お陰様ですっかり身体も元に戻りました。なので・・・、そろそろ一座へ戻ろうと思います・・・。」

 「お幸ちゃんなんだい♪やぶからぼうに。もうちょっとゆっくり養生してからでも良いんじゃないかい?」

 お吉が寝支度の手を止めながらお幸にこう言ったのです。 

 「そ、そうでぃ! お幸ちゃんの世話が出来ねえとな、このばばあが寂しがるからよ・・!」

 辰二郎も、お吉とお幸を交互に見ながら、彼なりに引き留めていました。

 「いえ・・、これ以上ご迷惑は掛けられないし・・、それに座長たちも待っていると思うので・・・」

 「そうかい・・・。そう言われると、引き留める理由も無いねぇ・・・」

 お吉は寂しそうにそう呟くと、ひとつため息をつくのでした。


 その夜の事です。

 お幸はなかなか寝付くことが出来ず、これまでお世話になっていたここでの日々を思い返していました。

 娘のように接してくれたお吉。

 興行中に散策した際に気に入ったお菓子や食べ物をさりげなく買ってくる辰二郎。

 そんな二人が毎日繰り広げる親子喧嘩。
 それでいてお互い思いやっている事が伝わる、暖かな家庭。

 「賑やかだったなぁ・・・笑 私も普通に育っていたら・・・泣」

 つい、嗚咽が出そうになるのを堪え、涙が頬を伝わりそうなのを布団で拭い、隣で寝ているお吉に気付かれないように、そっと裏庭へお幸は出たのでした。

 すると、庭の向こうに一つの影が月夜に照らされ浮かんでいました。

 そっと近づいてみると、それは腕組みしながら月を見上げている辰二郎でした。

 
 「・・・ちくしょう・・! なんで俺は『ずっといて欲しい』と正直に言えねぇんだ!! この口が!この口が!!」

 身体の奥から絞り出すように、まるで月に向かって言ってるかのように、頬を涙で濡らしながら呟いていたのです。

 お幸はその場所から一歩も動けなくなってしまいました。気付かれないように、悟られないように、じっと、じっと・・。

 「お幸ちゃんもお幸ちゃんだ・・。そんなに俺が嫌いなのか・・! 座長んとこがそんなに良いのか・・・!」

 その言葉を聞いた瞬間、お幸は思わず口から言葉が飛び出してしまいました。

 「違う!違うの・・・、ずっといたいけど・・・」

 驚いたのは辰二郎です。

 「うわっ!! お!お幸ちゃん!! な、なんでここに!!」

 「ち、違うんだ! これはな、そ、そのぅ・・・」

 自分の正直な気持ちを聞かれた辰二郎は、ひどく狼狽し、恥ずかしそうにお幸を見つめるのでした。

 「ありがとう辰さん♪ 私も正直に言うと、ずっといたいけど・・、小さい頃から大事にしてくれた座長に迷惑はかけられない・・・」

 そう言うとお幸は、今まで我慢していた感情を、辰二郎の胸に飛び込みぶつけるのでした。

 「そ、そうだよな・・うん・・。 座長はな、お幸ちゃんにとって親代わりだからな。 迷惑はかけられねぇやな・・。」

 辰二郎も自分の感情を必死に抑えながら、胸元で泣くお幸を優しく包み込むのでした。

 「本当に、本当に今までありがとう・・・。」

 そんなお幸の言葉に、辰二郎も自然と涙が頬を伝うのでした。

 いつのまにか起きていたお吉も、月夜に照らされた二人を見守りながら、涙を拭っておりました。


 第3章・・・「それぞれの想い」

 別れの朝のことです。

 お幸が、寂しさを見せまいと必死にこらえるお吉と、どこか落ち着きなさげな辰二郎に言葉を掛けました。

 「お吉さん、辰さん、本当に今までありがとうございました・・。またこの街に来た時は、必ず・・! 必ず・・・泣」

 必死に寂しさを我慢していたお幸でしたが、とうとう大きな瞳からは大粒の涙がとめどもなく溢れてきてしまいました。

 「なんだよぅ!お幸ちゃん♪ お幸ちゃんに泣かれちゃ、こっちまで涙が止まらなくなるじゃないか・・・泣」

 お吉もお幸と抱き合いながら、別れを惜しんでいたのでした。

 「そ、そのぅ、何だ! ま、又よ・・! こっちに来るときゃ、会えるってぇのによ! 二人して大袈裟ッてぇもんだ!」

 辰二郎もいつもの陽気さを出そうとはしていましたが、寂しさを隠しきれていません。

 「お幸ちゃん!達者でね! 座長さんをしっかり盛り立てるんだよ!」

 「はい・・! 本当にありがとうございました・・・!」

 残る未練を振り払い、お幸は真っ直ぐ前を向き、親しんだこの街を後にしたのでした。


 それから1か月を掛けて、一座の辿った場所を訪ね歩き、ようやくお幸は合流することが出来たのです。

 「座長! 本当に今までご心配をお掛けしました・・。」

 「おぅおぅ!お幸! すっかり元気になって♪ さぞ大事にしてくれたんだね・・・泣」

 座長も久しぶりに見る元気なお幸の姿を見て、ホッとした様子でした。

 「お松姐さんも、これまで本当にありがとうございました♪」

 「ひゃぁ!助かったよ♪ あの時ゃ・・あんな啖呵切っちまったけどね、もう・・いつ足がもげるかと思って生きた心地がしなかったよ・・・笑」

 お松もおどけるように、お幸の戻りを喜んでおりました。

 「さあさあ!今夜はお祝いだよ♪ みんな英気を養っておくれ♪」

 一座が賑やかに自分の戻りを喜んでいることに、お幸は心の中で、自分に言い聞かせておりました。

 『これで良い、これで良いんだ・・。普通の家庭なんて・・、自分には勿体ない・・・』


 その夜の事です。お幸は夢を見ておりました。

 「お吉さん! 大根貰ったから、今夜は煮物にしましょ♪」

 「そうだねぇ♪ じゃあ今日はお幸ちゃんに頼もうかね♪」

 「なんでぃ! いつもでっけぇ大根ぶら下げているくせに、そんなに大根が珍しいか、ばばぁ笑」

 「何を~! このすっとこどっこいが! そりゃ私の足のことを言ってるのかい!!」

 「へっ! わかりゃいいんだ!わかりゃ!」

 夢の中のお吉と辰二郎の掛け合いが愉快で、お幸は眠りながらも、二人に声を掛けていました。

 「もう♪ 二人ともやめて♪ 辰さんも火を起こすの手伝って♪ フフフ・・・」

 楽しそうな笑顔を浮かべ寝ているお幸の姿を、座長が複雑そうな表情を浮かべ、見つめておりました。


 「お話って何ですか?座長♪」

 翌日、復帰に向け必死に稽古に打ち込んでいるお幸を、座長は奥の座敷に呼び出しました。

 「お幸・・、正直に話してごらんよ。お前・・、ひょっとして、あの親子のもとへ帰りたいんじゃないのかい・?」

 唐突にそう言われたお幸は、一瞬戸惑いの表情を見せましたが、すぐに笑顔を取り戻し、こう言いました。

 「いえ♪ 大丈夫です笑 だって、私が早く元の感覚を取り戻して公演に・・・」

 「正直に言ってごらん!! あの親子、いや、あの辰二郎に惚れたんだろ・・・?」

 座長は真っ直ぐお幸の瞳を見つめながら、諭すように声を掛けたのです。

 「だ、だって、そんなこと・・泣 座長にこれ以上迷惑なんて…泣」

 お幸は、今まで必死に堪えてきた辰二郎への想いが再び溢れ、畳へと突っ伏してしまいました。

 「昨晩ね、お前の寝言を聞いちまったんだよ・・・。本当に!嬉しそうに寝ているお前を見て、私はピンと来たんだよ♪」

 座長は優しくお幸の背中をさすりながら、言葉を続けました。

 「お前が3歳の時、私はお前の親から預けられた時、こうお願いされたんだよ。『必ず!幸せにしてください!!』って」

 「そりゃぁもう必死だった。だから、私はお前を実の子供のように、これまで育ててきた。」

 「はい・・・、本当に大事に育ててくれました・・。だから!・・・」

 お幸は泣きはらした目で、じっと座長を見つめていました。

 「だから!私はずっと心に決めていたんだよ♪ この子に好きな男が出来たら、迷うことなく!そいつにお前を預けよう!って・・」

 そう言うと、座長もぎゅっとお幸を抱きしめながら、涙が頬を伝うのでした。

 「お前には普通の幸せを掴んで欲しいんだよ!・・」

 「座長・・・泣 でも・・、座長は辰二郎さんの事・・・」

 「ハハ・・、あのお吉さんが育てた息子だ。根は優しいに決まっているじゃないか♪」

 「あ、ありがとう、ございます・・泣」

 「しっかり胸を張って戻るんだよ♪ なにせうちの花形なんだから♪」

 座長とお幸は、実の親子のようにお互いへの思いやりを感じさせながら、頷くのでした。


 翌日、一座に事情を説明した座長は、旅支度をしたお幸の手に『支度金』を握らせ、こう言いました。

 「くれぐれも!無理をするんじゃないよ♪ そしてどんなことがあっても、夫婦として仲良く過ごすんだよ!・・」

 今まで手塩に掛けて育ててきた座長にとっては、実の娘のように思えたのでしょう。

 「はい・・・泣、本当に!本当に!ありがとうございます・・。そして、みんなも・・!!」

 一座全員が涙を浮かべ、お幸の門出を祝福してくれたのでした。


 それから数週間後、見慣れた街の、見慣れた家の前に、お幸の姿はありました。

 ガラガラ・・

 奥の座敷には、見慣れた、久し振りに見る二人の姿が・・。

 「た、ただいま・・・」

 「お!お幸ちゃん!! お幸ちゃんなのかい!!泣」

 飛び上がるように奥から飛び出してきたお吉は、お幸をしっかりと抱きしめるのでした。

 幽霊でも見たかのような表情を浮かべた辰二郎は、気を取り直して、こう言ったのです。

 「お、おう! やけに戻るのが早ぇじゃねぇか! さては・・!ばばぁの事が気になって戻ってきた口だな♪」

 「何言ってんだよ!このバカ息子が!! こんな時くらい正直になれないもんかね!!」

 涙でぐずぐずになりながら、お吉は辰二郎を睨みつけ、お幸を一層強く抱きしめるのでした。

 「辰さん・・・、ただいま・・♪」

 お幸が辰二郎の方へ向き直り、優しく言葉を掛けました。

 「お、おう・・。なんでぇ、改まって・・・」

 「ここに・・、いても・・、良い・・?」

 「お、おう!、一ヶ月でも半年でも・・・」

 「ずっと・・、ここに・・・、いても・・、良い?」

 「ず!ずっと‥!? お、おう! そうすりゃばばぁの面倒も見なくて済むし、助かるってぇもんだ・・」

 「本当に!この子は!! お幸ちゃん♪あんな馬鹿はほっといて、楽しく過ごそうじゃないかい♪」

 「ウフフ♪ はい♪ そうします♪」

 「何を~!! 女二人でバカにしやがって!! 勝手にしろってんだ!!」

 ふてくされるように寝転がり、向こうを向く辰二郎でしたが、顔には嬉しさと安堵が浮かんでおりました。



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