落合順平 作品集

現代小説を中心に、小説を書いています。

赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (22) 

2017-01-04 16:59:28 | 現代小説
赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (22) 
 会津若松の玄如節




 玄如節(げんじょぶし)は、福島県会津地方に伝わる民謡。
名称は「げんじょ見たさに朝水汲めば、姿かくしの霧が降る」という歌詞に
由来している。
げんじょという美しい僧侶を村の娘たちが慕って歌ったと言われている。
逆に、げんじょという美しい村娘に、若者達が恋して歌った
という説もある。


 玄如節の最大の特徴は、歌い手が交代で一節ごとに「掛け合う」 。
歌うとき、歌詞のあいだにハヤシの句が入る。
そしてこのおハヤシは、歌の合間に何度も繰り返されていく。



 ハー玄如見たさに 朝水汲めばヨー    男性 A
 サーサー     ヨイヤショーエ    女性 ハヤシ句
 姿かくしの    霧がふるヨー     男性 B
 ハー       霧がふるヨー     女性 B′
 姿かくしの    霧がふるヨー     男性 B
 サーサー     ヨイヤショーエ    女性 ハヤシ句



 玄如節のもう一つの大きな特徴は、歌詞が固定していないことだ。
そのつどに即興で歌詞が作られ、旋律に乗せて歌われる。
すべてが即興の場合もあるが、繰り返しみんなによって歌われてきた歌詞がある。
それらがストックされ、蓄積されている。
膨大なストックの中から、臨機応変に歌詞を選び、使う場合が多い。
一般的な民謡とは異なり、歌詞の順番が決っていない。


 昭和の初期。玄如節について、こんな記録が残っている。



 『若い頃こくぞう様で、玄如節の歌と踊りを見たことがある。
柳津にお篭りにいった時のことで、七日堂の裸祭りのときにお篭りした。
9月30日にも行った。玄如節をやっているのを 見たことがある。
ほっかぶりしたり、尻をまくったりして踊っていた。
戦後にも見た。 老人達が玄如節を歌い踊っているのを、
若者だったころ一人で見ていた。
栗や柿などが 振舞われると、それを歌詞に歌い込んで
「栗づくし」や「柿づくし」をした。
かなり長く続いた。60才に近い人が集まっていた。
間でみんなが休んでいるときに、長持ち歌などの民謡を歌わせてもらった。
自分では玄如節はしなかったが、柳津のお堂にある回廊 のようなところで
マイクを立てて、民謡を歌った。
聞く人たちは下に座ったり立ったり して見ていた。
本来玄如節は、特定の寺院や神社の行事に結びついたものではなく、
人が集まれば興がのって、どこでもおこなったものらしい』



 エンヤー会津磐梯山は 宝の山よ 笹に黄金が エーマタなり下がる
の歌いだしで始まる『会津磐梯山』は、福島県を代表する民謡。
明治の初め。新潟県西蒲原郡や五箇浜地方から、会津に出稼ぎに来ていた
職人たちの唄と、会津古来の「玄如節(げんじょぶし)」が混交して、
創作の歌詞が付け加えられ、今日の原型が完成した。


 昭和9年。この曲に、日本ビクターの長田幹彦が作詞した。
売れっ子芸者歌手の小唄勝太郎に歌わせて、大ヒットした経緯がある。
しかし。昔から伝わってきた地元の「会津磐梯山」とは、大きく異なっていた。
あまりにも異なるため、会津民謡会は『郷土芸術を冒涜するもの』と同社に
猛抗議した。
そんな過去のいきさつも残っている。
地元が認める『正調会津磐梯山』は、会津盆踊り唄として、全162番まで
歌詞のある、たいへん長い民謡だ。



 「2番目の歌詞で登場するのが、

 ”(エンヤー)東山から日にちの便り(コリャ) 
 行かざなるまい(エーマタ)顔見せに”


 と歌われる東山温泉。
 東山芸妓の始まりは、明治の初期。
 昭和30年代の最盛期には、なんと200名以上の芸妓がいたそうです。
 新選組の土方歳三や伊藤博文、与謝野晶子などに愛された温泉です。
 大小の滝を経ながら流れる湯川の渓流に沿い、20軒余りの旅館とホテルがあります。
 小原庄助が、朝からお湯を浴びていたのも、この東山温泉です。
 小春がここへ引っ越してくることで、2人は最初の危機を脱しました。
 その手引きをしてくれたのが、いまでは会津の街場にたったでひとり残っている、
 あたしの戦友の、芸妓の市さん。
 ほら。車の中で説明した、古い知り合いさ。
 その市さんと連絡が取れたそうです。
 その前に、これから東山のお座敷へ行きましょう。
 いつもはお座敷を務める立場ですが、本日はお客です。
 これ豆奴。お前さん、何を念入りに、お粉(おしろい)なんか塗っているんだい。
 言ったじゃないか。今日は、3人ともお客の立場だって」



 たまも清子も、あわてて豆奴を振り返る。
見れば、片肌を顕にした豆奴が鏡に向かって、一心不乱にお座敷用の
お化粧の真っ最中だ。



 「あら。そうでしたっけ、お母さん。
 お座敷と聞いただけでもう、手が、勝手にいつものように動いてしまいました。
 いやですねぇ。化粧する必要なんて、これっぽっちも無いというのに。
 だめですねぇ。本気で女を磨き始めてしまいました・・・
 これが職業病というものでしょうか。嫌になりますねぇ、我ながら。
 うっふっふ」


(23)へ、つづく

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2 コメント

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初仕事・・ (屋根裏人のワイコマです)
2017-01-04 18:30:22
お正月を過ぎると、何でもかんでも
初の文字がついてお仕事も電話も
メールも・・初が最初について正月
らしく飾りますよね。
初仕事・・ですか 私のように無職の
ものは初という言葉は少ないですね
お仕事頑張ってくださいね
お話の方は丁度面白くなって・・
でもお仕事優先で結構ですから
時間の余裕のときにアップして下さい
無理しないでくださいね (*^^*)
ワイコマさん。こんばんは (落合順平)
2017-01-06 18:52:23
朝8時から、午後5時までの仕事がはじまりました。
仕事の中味は、ホウレンソウ。
収穫してきたホウレンソウを下ごしらえして
機械で包装するまでの仕事です。
誰がいったい、こんな大量のホウレンソウを
食べるのでしょうか・・・
ポパイだって、もう満腹だからいらない、
というほど大量に出荷しています。
明日は、日曜・月曜と天気が悪くなるため
早めの露地のネギを収穫する予定です。
雨の予報が出ていますが、場合によると雪が
混じるそうです。
どちらかといえば、雪が降らないことを祈っています・・・

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