忠治が愛した4人の女 (79)
第五章 誕生・国定一家 ⑬
(おっ、女渡世人の登場だ。助かったぜ。まさに渡りに船だ・・・)
おりんの登場に窮地の伊三郎が、思わず、にんまりとほほ笑む。
それほど、初めて見るおりんの姿は美しい。
壺が振れると聞いた瞬間。伊三郎の喜びがついに爆発する。
(捨てる神あれば拾う神あり。どうやら俺にも運が向いてきたようだ。
この女なら、間違いなく忠治の賭場の、お辰と対抗できる)
満面に笑みを浮かべる伊三郎に、「どうぞ、よろしく」とおりんが頭を下げる。
伊三郎の賭場のひとつ。桐屋でおりんが壺をふりはじめた。
年増とはいえ、衰えをしらないおりんの容貌が、男たちから注目をあつめる。
いい女が壺を振ると聞き、遠方からも客が集まって来るくる。
百目ろうそくが灯る中。片肌を脱いだおりんが、粋に壺を振る。
生唾が呑まれる中。「入ります」とおりんの声がひびく。
空中を舞った壺が、勢いよく盆に振り下ろされる・・・
伊三郎の賭場へ、ひさしぶりに活況が戻って来た。
人気者になったおりんは、伊三郎一家の最上級の客人として優遇される。
1年後。そのおりんが百々一家へ戻って来た。
「どうでぇ。伊三郎の弱点を見つけてきたか?」早速、円蔵が詰め寄る。
「お疲れ様を言う前に、それかい?。あんたもホントに甲斐性のない男だねぇ」
おりんが呆れ果てて、拗ねた目を見せる。
「身内にならないかと、何度も伊三郎親分に口説かれました。
こんなことなら、ハイと受け入れて、身内になってしまえばよかったかしら?」
「こいつは俺が悪かった。すまねぇ。長いあいだホントに御苦労だった。
で、どうなんでぇ。伊三郎の弱みは見つかったのか?」
「そうですねぇ・・・それほど悪い人には見えません」
「伊三郎が悪人には見えねぇ?。そいつはいってぇどういうわけだ?」
「人を殺したこともありません。ひとさまから、恨まれているわけでもありません。
利根川で働いている船頭さんや人足さんたちから、信頼されています。
利根川は大雨のたびに、洪水をおこします。
そのたびに伊三郎親分は、先頭に立って、普請をしているくらいですからねぇ」
「洪水がおきれば、伊三郎の本拠地の島村の宿がいちばん危ねぇ。
普請がはじまれば当然、おおぜいの人足が集まって来る。
やつの賭場が繁盛することになる。
伊三郎のやつ。そいつを当て込んでいるんじゃねぇか?」
「そうでもないみたいですねぇ。
江戸から偉い学者さんを呼んで、いろいろ普請の相談をしているもの」
「そうか。伊三郎に弱みはないのか・・・
さすがに2足のワラジを履きこなしているだけのことは有るな。
まいった。攻め手が見当たらないなぁ・・・」
「そうねぇ。
親分さんに弱みはないけど、島村一家には弱みがありそうです」
「なにっ、一家に弱みが有る!。
朗報じゃねぇか。そいつはいってぇ、どういうことだ!」
「島村一家はたしかに大きいけれど、一枚岩じゃないの。
伊三郎はもともと大きな船問屋の息子で、大勢の船頭や人足を使っています。
お金もたくさん持っています。
金の力で、利根川の川筋にいる親分衆たちを身内に引き入れてきました。
2足のワラジも、金で手に入れたようです。
でも。そんな島村一家ですが、早く言えば烏合の衆の、寄り合い所帯。
組織的に、もろい部分がありますねぇ」
「なるほど。作戦次第では、組織を分断できるということか。
そこを見抜くとは、さすがにおりんだ。
やっぱり。俺がしんそこ、惚れこんだだけのことは有る」
「いやだよ、この人ったら。
いまごろ惚れなおしても、見た通りの大年増です。
そんなに大きく持ち上げても、もう、なにも出ませんよ。うっふっふ・・・」
(80)へつづく
おとなの「上毛かるた」更新中
第五章 誕生・国定一家 ⑬
(おっ、女渡世人の登場だ。助かったぜ。まさに渡りに船だ・・・)
おりんの登場に窮地の伊三郎が、思わず、にんまりとほほ笑む。
それほど、初めて見るおりんの姿は美しい。
壺が振れると聞いた瞬間。伊三郎の喜びがついに爆発する。
(捨てる神あれば拾う神あり。どうやら俺にも運が向いてきたようだ。
この女なら、間違いなく忠治の賭場の、お辰と対抗できる)
満面に笑みを浮かべる伊三郎に、「どうぞ、よろしく」とおりんが頭を下げる。
伊三郎の賭場のひとつ。桐屋でおりんが壺をふりはじめた。
年増とはいえ、衰えをしらないおりんの容貌が、男たちから注目をあつめる。
いい女が壺を振ると聞き、遠方からも客が集まって来るくる。
百目ろうそくが灯る中。片肌を脱いだおりんが、粋に壺を振る。
生唾が呑まれる中。「入ります」とおりんの声がひびく。
空中を舞った壺が、勢いよく盆に振り下ろされる・・・
伊三郎の賭場へ、ひさしぶりに活況が戻って来た。
人気者になったおりんは、伊三郎一家の最上級の客人として優遇される。
1年後。そのおりんが百々一家へ戻って来た。
「どうでぇ。伊三郎の弱点を見つけてきたか?」早速、円蔵が詰め寄る。
「お疲れ様を言う前に、それかい?。あんたもホントに甲斐性のない男だねぇ」
おりんが呆れ果てて、拗ねた目を見せる。
「身内にならないかと、何度も伊三郎親分に口説かれました。
こんなことなら、ハイと受け入れて、身内になってしまえばよかったかしら?」
「こいつは俺が悪かった。すまねぇ。長いあいだホントに御苦労だった。
で、どうなんでぇ。伊三郎の弱みは見つかったのか?」
「そうですねぇ・・・それほど悪い人には見えません」
「伊三郎が悪人には見えねぇ?。そいつはいってぇどういうわけだ?」
「人を殺したこともありません。ひとさまから、恨まれているわけでもありません。
利根川で働いている船頭さんや人足さんたちから、信頼されています。
利根川は大雨のたびに、洪水をおこします。
そのたびに伊三郎親分は、先頭に立って、普請をしているくらいですからねぇ」
「洪水がおきれば、伊三郎の本拠地の島村の宿がいちばん危ねぇ。
普請がはじまれば当然、おおぜいの人足が集まって来る。
やつの賭場が繁盛することになる。
伊三郎のやつ。そいつを当て込んでいるんじゃねぇか?」
「そうでもないみたいですねぇ。
江戸から偉い学者さんを呼んで、いろいろ普請の相談をしているもの」
「そうか。伊三郎に弱みはないのか・・・
さすがに2足のワラジを履きこなしているだけのことは有るな。
まいった。攻め手が見当たらないなぁ・・・」
「そうねぇ。
親分さんに弱みはないけど、島村一家には弱みがありそうです」
「なにっ、一家に弱みが有る!。
朗報じゃねぇか。そいつはいってぇ、どういうことだ!」
「島村一家はたしかに大きいけれど、一枚岩じゃないの。
伊三郎はもともと大きな船問屋の息子で、大勢の船頭や人足を使っています。
お金もたくさん持っています。
金の力で、利根川の川筋にいる親分衆たちを身内に引き入れてきました。
2足のワラジも、金で手に入れたようです。
でも。そんな島村一家ですが、早く言えば烏合の衆の、寄り合い所帯。
組織的に、もろい部分がありますねぇ」
「なるほど。作戦次第では、組織を分断できるということか。
そこを見抜くとは、さすがにおりんだ。
やっぱり。俺がしんそこ、惚れこんだだけのことは有る」
「いやだよ、この人ったら。
いまごろ惚れなおしても、見た通りの大年増です。
そんなに大きく持ち上げても、もう、なにも出ませんよ。うっふっふ・・・」
(80)へつづく
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露地ではこれから、大根やホウレンソウが
旬を迎えます。
キャベツも、あと半月ほどで出荷を迎えます。
年間を通じて何でも出来るため、これといった
特産がありません。
年間を通じて仕事できますので、あまり
贅沢はいえません・・・
信州は11月から3月まで完全休業
まだ長雨や夏の乾季での野菜不足が
長引いて、今でも高騰のままです
以前の小説にも出てきましたが群馬の
きゅうリ農家の若者・・今年は最高の価格でしょうから農業もやりがいが
ありますね いつもこうならいいのですが
無理してクラブが振れなくならないように
汗は大事です・・ストレス解消にいい
お疲れ様です