NPO法人 三千里鐵道 

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独裁者の復権?

2013年10月30日 | 三千里コラム

朴正熙元大統領の銅像



34年前の1979年10月26日、朴正熙・元大統領は女性を侍らせた酒宴の席で、キム・ジェギュ中央情報部長に射殺されます。絶対権力を謳歌した国家元首としては、公開するのも憚られる醜悪な末路でした。ともあれ、彼は波乱に満ちた62年の生涯を終え、18年間の軍事独裁政権に終止符が打たれたのです。

 政権末期だった当時、釜山・馬山地域をはじめ全国各地では、連日のように民主化を求める市民デモが展開されていました。しかし、市民革命で独裁者が打倒されず内部の権力抗争による政権崩壊だったために、全斗煥・盧泰愚ら新興勢力が軍事政権を延長することになりました。

 その後、光州民主化運動など民衆の献身的な闘いによって一定の民主化が達成され、朴正熙が乱発した大統領緊急措置令などは今、民主主義の根幹を蹂躙する憲法違反であったとの司法判断が定着するようになりました。

 朴正熙の長女である現大統領は、日ごろから「私が政治家になったのは、父の名誉回復を実現するためだ」と公言してきました。彼女にとっては、金大中・盧武鉉政権で下された実父への厳しい評価は、受け入れ難いものだったでしょう。そして、朴槿恵政権のもとで初めての10月26日を迎え、故郷の慶尚北道亀尾市では盛大な追悼行事が開かれました。言うまでもなく、朴正熙を英雄として美化し、その業績を最大限に讃える内容です。

 韓国社会で朴正熙ほど、その評価において保守派と進歩派の間で克明な対峙を示す政治家はいないでしょう。保守派が高度経済成長を実現した「祖国近代化の父」と崇めるのに対し、進歩派は、民主主義と人権を蹂躙した「軍事独裁者」と糾弾します。総括すれば、朴正熙時代には二つの厳然たる歴史的事実が存在したと言えます。一つは短期間の圧縮的な経済開発により韓国社会の産業化が促進されたことであり、もう一つは、朴正熙体制が下からの民衆の抵抗によって崩壊したことです。

 父親を尊敬して止まない現大統領の心情は充分に理解しますが、朴槿恵政権の誕生が必ずしも朴正熙神話の復活を意味するものではありません。なぜなら朴正熙体制とは、その執権18年のうち9年以上が、戒厳令や緊急措置などの暴力手段で延命された血みどろの体制だったからです。そして韓国社会の紛れもない特徴は、日本やドイツと違い、民衆の闘争によってファシズムが崩壊し民主化が進展したことです。その積極的で肯定的な側面に依拠してこそ、朴槿恵政権下でも、さらなる民主化を推進する原動力を結集できるのではないでしょうか。

 以下に、2013年10月28日付『ハンギョレ新聞』の社説を紹介します。
http://hani.co.kr/arti/opinion/editorial/608670.html?_fr=mr1 (JHK)



権力に便乗した“朴正熙の美化”を警戒する

 朴正熙元大統領の34周忌をむかえて、度を越した称賛と美化の発言が溢れ出ている。朴槿恵大統領の執権を契機として、より一層顕著になった朴正熙美化の動きは眉をひそめたくなる程だ。現在の権力に便乗した過去の独裁に対する美化は、韓国社会の健全さを損なうだけだ。

 西江(ソガン)大学の総長まで努めたソン・ビョンド氏の朴正熙追悼辞は、聞く人の耳を疑わせるような内容だった。 彼は、「スパイが欲しいままに暗躍する昨今の世の中よりは、いっそ維新時代(朴正熙時代:訳注)の方がよかったと庶民は叫んでいる。5・16(朴正熙による1961年のクーデタ:訳注)と維新を侮辱する声に、閣下(朴正熙:訳注)の心気も穏やかではないだろう。祖国近代化の道を邁進するお嬢さん(朴槿恵:訳注)への支持率が60%を越えた」など、詭弁をならべた。全て、時代錯誤的で権力にへつらう発言ばかりだ。

 ソン氏の発言は要するに、独裁時代への回帰を煽動するものだ。憲政を蹂躪した5・16クーデターと維新体制が、今の自由民主主義体制よりましだというわけだ。銃剣で反体制勢力をひっ捕まえた朴正熙時代に戻ろうというのだ。ナチスを称賛するドイツの極右ファシズムを目の当たりにするようで、心配なことこの上ない。“スパイが暗躍している”という表現も、取って付けたようなゴリ押しだ。今ほど、北朝鮮の体制を追従する勢力が韓国内で孤立したことがない。“日々の暮らしに精一杯の庶民が、独裁時代を懐かしがっている”との発言は、庶民を冒とくするものに他ならない。我が国民の民主主義的素養を愚弄するものだ。

 慶北道の亀尾で開かれた追悼行事でも、政治家たちは“救国の決断、父なる大統領閣下”などの表現で、美化を越え権力に阿諛する発言を繰り広げた。ソウル市の江南(カンナム)地域にある大規模教会では、「第1回朴正熙大統領追慕礼拝」というとんでもない行事まで開かれた。死後34年が過ぎた今になって初めての追慕礼拝をするというのだから、どういう風の吹き回しなのかさっぱり分からない。

 故朴正熙大統領を美化して称賛する最近の動きは、相当な部分において、権力に便乗し何かの利得にありつこうとする下心があってのことだ。朴正熙を追慕したいのなら、それなりの手続きを経るべきだ。功過を明確にしなければならないのだ。国の経済を興した彼の業績を否認する者は殆どいない。だからと言って、維新独裁まで美化してはなるまい。 玉石を区分せずに、“維新がはるかに良かった”と見境なく突き進めば、本来の功績までも損なわれかねない。

 朴正熙を美化する動きが増幅している底辺では、朴槿恵大統領の権威主義的な統治スタイルが大きな役割をしている。父親の時代を克服できずに過去へと回帰するかのような現大統領の姿が、私たちの社会全体を過去に後戻りさせているのだ。朴槿恵大統領が自ら率先して、父親をどのように受け入れることが望ましいのか、熟慮するように願う次第である。

朴槿恵政権のアキレス腱

2013年10月21日 | 南域内情勢

第16回ローソクデモ(2013.10.19、ソウル広場)



昨年12月の大統領選挙に際し、国家情報院が組織的な選挙違反(インターネットやツイッターの書き込みを通じた世論操作)をしたことで起訴され、裁判が進行中です。ところが最近、国家情報院だけでなく、軍隊のサイバー司令部でも同様の違法行為があったと摘発されました。朴槿恵大統領は相変わらず、自身の関知せざることだとの立場で、諸国を歴訪しての首脳外交に余念がありません。

 また、平和と民主主義、人権を掲げた全国教職員労働組合(全教組)が、政府の不当な干渉(解雇された教員の組合員資格剥奪)を拒否したことで、非合法化の危機に直面しています。かつて、軍事クーデターで執権した朴正熙元大統領も民主的な教員労組を強制解散させました。そして朴槿恵氏は与党の代表委員であった頃から、全教組を“アカ”呼ばわりし露骨な敵意を表明してきました。どの国の歴史においても、言論と教育を掌握することで、権力者は独善的な政権運営を行ってきたものです。民主化運動の成果が、じわじわと奪われていく状況に憂慮を禁じえません。韓国社会の現状を告発した、2013年10月21日付『ハンギョレ新聞』の社説を紹介します。(事務局) http://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/607832.html


これでも「去年の大統領選挙は公正だった」と言うのか!

 国家情報院(旧中央情報部:訳注)の心理戦チーム職員は昨年の大統領選挙期間に、朴槿恵(パク・クネ)候補のオンライン違法広報運動員として活動したことが明らかになった。ソウル中央地検に設置された「国家情報院の大統領選挙介入事件特別捜査チーム」が裁判所に提出した「公訴状の変更許可申請書」がそれを実証している。申請書に記載された国家情報院の職員によるツイッターの内容を見れば、開いた口がふさがらない。

 野党候補に対する従北(北朝鮮の指令で動く:訳注)攻勢、地域感情の助長、野党候補への中傷宣伝、虚偽事実の流布など、最も低質で卑劣な方式が総動員されている。さらには、朴槿恵候補の後援口座を積極的に広報する内容まで入っていた。

 “湖南(全羅道=野党の支持地域:訳注)に心から接する朴槿恵と、湖南を利用するだけの安哲秀(アン・チョルス)、文在寅(ムン・ジェイン)”“文在寅が当選すればは従北政権だ。だまされるな。金日成王朝の治下で奴隷生活したいなら、文在寅に投票しろ”“安哲秀や文在寅が大統領になるぐらいなら、いっそ犬や牛にさせろ”“朴槿恵候補の後援口座です。大統領選挙の勝利に大きな力になります。ARS後援電話060-700-2013….”

 国家情報院はこれまで、自分たちの大統領選挙への違法介入疑惑について「北朝鮮と国内従北勢力の宣伝に対抗する目的でコメントを書き込んだ。選挙介入という意識はなかった」と主張してきた。だが、今回明らかになったツイッターの内容は、このような主張が真っ赤な嘘であることを証明している。朴槿恵候補の後援口座まで案内するほどの違法な選挙運動を行ったのに、“北朝鮮に対する心理戦”を云々するとは、盗人猛々しいと言わざるを得ない。

 伝達文の内容も衝撃的だが、この短文をばら撒いた方法とその規模も驚くばかりだ。「自動リツィット(再転送)」というプログラムを利用し、昨年9月1日から12月18日までツイッターによって、何と5万5689回も上記のような悪意に満ちた内容が配布されたのだ。オンラインによる書き込みコメントに比べ、規模とその波及効果において次元が異なる途方もない違法な選挙運動である。ツイッターが選挙に及ぼす強大な影響力を考慮すれば、去る大統領選挙の全体的な公正性について、深刻な疑問を提起せざるをえない状況と言えよう。

 検察が「国家情報院の大統領選挙介入事件捜査特別チーム」責任者であるユン・ソギョル驪州(ヨジュ)支庁長を、電撃的に捜査責任者から解任した本当の理由が何かも、より一層明確になった。国家情報院の職員を逮捕・押収捜索する過程で“上司に事前報告がなかった”という解任理由は、取って付けたような難癖に過ぎず、本当の理由は、捜査チームが新たに探り出した国家情報院の犯罪行為が、メガトン級の破壊力を持っているためだ。政権の正統性を揺さぶるまでの深刻な国家情報院の違法行為に、捜査の手が伸びることを何としても阻止したかったからだろう。

 検察の上層部が“公訴状の内容変更要請を撤回することもありうる”と話すに至っては、全く呆れてものが言えない。捜査チームがせっかく明らかにした不法行為の証拠を隠ぺいすることが、果たして正義と法治を前面に掲げる検察のなすべき事なのか。捜査チームが上層部に対し“秘密作戦”を選択せざるを得なかった事情も、より一層ひしひしと理解できる。裁判所に提出した控訴状の変更要請すら撤回しようというのだから、国家情報院の職員逮捕や押収捜索を、上層部が承認するはずはないからだ。

 検察の最近の姿を見れば、自尊心も誇りもない惨めな組織と思えて仕方がない。「国家情報院の職員を拘束するには、あらかじめ国家情報院長に通知しなければならない」という規定は、どこに由来するのか。当初「中央情報部職員法」を作る時に、何の立法的な根拠もなく中央情報部に絶対権限を与えるために挿入された規定だ。検察が本来の使命感を持っているなら、こうしたいかがわしい規定に問題意識を持って当然なのに、ナム・ジェジュン国家情報院長が部下職員の逮捕に“激怒”したという一言で萎縮し、検察庁が大騒動になったというのだから嘆かわしくて言葉も出ない。

 ナム・ジェジュン国家情報院長の居直りと恫喝は、“国家情報院のオールマイティ時代”が再来したことを示している。部下組織員の途方もない違法行為が明らかになったなら、ひたすら自粛し謹慎すべきところを、あろうことか怒り猛って検察を責め立て、それに対し検察はひたすら平身低頭の有り様である。父親の朴正熙大統領が作った中央情報部の後身が、その娘のために不法選挙運動を行い、当時のとんでもない規定が彼らの違法行為を覆ってしまうというあきれ果てた現実。これがまさしく、逆立ちした大韓民国の現在の姿だ。

日本の集団的自衛権導入に関する韓国内の論議

2013年10月16日 | 東北アジアの平和

日米両政府の外交・国防長官が(2+2)会議を終え、安倍総理を訪問(2013.10.3)



10月3日、日米両政府の外交・国防長官が東京で会談(2+2)し、日本の集団的自衛権行使を米政府が全面的に支持すると表明しました。これを受け韓国では、与野党を問わず国会で批判の声が上がっています。以下に、10月11日付『統一ニュース』の記事を紹介します。http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=104454 (事務局)


日本の集団的自衛権導入に対抗するために、南北関係を改善すべき

「1993年の北朝鮮核危機が、日本の集団的自衛権導入において一つの転機になった。この事実が私たちには重要だ。南北関係の改善が、この問題に関する根本的な解決法になるだろう。」

去る10月3日、米国が安倍晋三内閣の集団的自衛権推進を公式に支持した。そうした中で11日、国会の「東北アジア歴史わい曲特別委員会」(委員長ナム・ギョンピル)公聴会に参加したイ・ハギョン『中央日報』論説室長は、集団的自衛権の導入と関連し、日米間で交わされた論議の歴史的な過程を概括しながら、上のように表明した。

イ室長によれば、米ソ冷戦期に米政府は、平和憲法の条文まで無視して集団的自衛権の導入を圧迫したが、日本政府は「経済再建が優先」との立場から躊躇した。ところが、1993年に起きた北朝鮮の核危機が基点となって、両国間ではこの問題に関し本格的な議論を交わすことになった。その結果、1997年には日米防衛協力指針の改正(新ガイドライン)につながったのだ。そして今回は、経済危機にあえぐ米国が“普通の国”を希望する日本の保守右翼勢力を先頭に押し立て、対中国牽制に日本が前面に出ることを望むなか、集団的自衛権導入に対する全面的な支持が現実化されたわけだ。

彼はまた、「安倍内閣が集団的自衛権を推進する名分が、中国の勢力拡大と北朝鮮の核武装であるから、南北関係の改善は、日米同盟の強化と日本の集団的自衛権推進、東北アジアの新冷戦秩序を切り崩す核心的な事項になる」と繰り返し強調した。

さらにイ室長は、「韓国政府の南北関係に対する認識が、画期的に転換されなければならない。機械的な相互主義(北が変わってこそ、南も一歩前に進む)では、何も解決できないだろう。北は韓国ではなく、米国を実質的な対話パートナーと考えているからだ。韓国政府が北当局を交渉テーブルに着かせるためには、もっと積極的な発想の転換が必要だ」と指摘した。

彼は「相手が躊躇し、慎重で、消極的であっても、先ず私たちの方から一歩進んだ措置を取る必要がある。交流と協力を進め緊張を緩和することが、私たちには絶対的な利益になる」と強調した。そして「北との緊張が減少すればするほど、そして南北間の交流と協力が強化されればされるほど、米国と日本が朝鮮半島に介入する名分は後退するし、日米同盟を中心にした新冷戦と集団的自衛権の必要性も萎縮する」と主張した。

一方、セヌリ党のキム・ヒョンスク議員は「原則的に同意するが、北朝鮮を信用することができない」と指摘した。これに対しイ室長は、「難しい問題だが、もう少し長い目でみるべきだ」と答えた。彼は「スポーツ競技ではたまに弱いチームに負けることがある。相手の動きに惑わされ対応するからだ。常に自分がなすべきプレーをすれば、弱者に負けることはない」と説明した。

イ室長はまた、日本の右傾化を牽制するために、アジア地域で日本の植民統治や侵略戦争による被害国間での連帯も提案した。「連帯を推進するうえで、従軍‘慰安婦’問題がやはり共感を呼び起こす媒体になるだろう」と述べた。

韓国政府外交部が、「集団的自衛権の導入」に関して日米両政府に憂慮を明確に伝達したのか、追及する発言も相次いだ。パク・ジュニョン外交部東北アジア局長は、「以前はもちろん、去る3日以後にも日米両政府に私たちの立場を伝達した。今回のアセアン会議でも、ユン・ビョンセ外交長官がケリー米国務長官に会って、この問題について話した」と答えた。

パク局長は「平和憲法の趣旨が尊重され透明な議論がなされなければならない、周辺国の憂慮を尊重して地域情勢に不安をもたらしてはいけない、という程度の話はしている。だが、具体的なことは今後の議論を見て対応する予定だ」と説明した。そして「現在は、日米両国で安保専門家レベルでの議論が進行中であり、来年4月以後に、日本政府としての議論が始まるだろう」との見解を表明した。

ナム・ギョンピル委員長は「すでに集団的自衛権の導入は既成事実化されたのだから、政府も‘静かな外交’ではなく、積極的な意見を陳述する必要がある」と促した。セヌリ党のイ・ミョンス議員も、今回の事態を“第2の桂-タフト密約”に喩える世論を紹介し、「外交部の対応が過度に短期的であり、歴史意識も不十分なのではないか」と叱責した。

パク・クネ政府に登場した「新386世代」、過去への回帰?

2013年10月11日 | 南域内情勢

朴槿恵大統領とキム・ギチュン大統領秘書室長(右)



以下のコラムは、韓国のインターネットニュース『プレシアン』、2013年10月10日付に掲載されたものです。朴槿恵(パク・クネ)政権の人事動向を的確に分析しており、また、韓国社会の一面を反映していることから、参考資料として紹介します。(事務局)
http://www.pressian.com/article/article.asp?article_num=60131010094609§ion=062


パク・クネ政府に登場した「新386世代」、過去への回帰?

「新386」が話題だ。パク・クネ政府がスタートした以降、使われるようになった用語だ。 「新386」とは、1930年代(もしくは40年代前半:訳注)に生まれて、60年代に社会活動を始めた、現在は80才を間近にした世代をいう。1960年代に生まれ、軍事政権時期である80年代に大学に通った30代を称した「386世代」とは、その意味が全く違う。キム・ギチュン大統領秘書室長をはじめとし、イ・ギョンジェ放送通信委員長、ナム・ジェジュン国家情報院長、ホン・サドク民族和解協力汎国民協議会(民和協)常任議長などが政権に帰還したのを受け、本格的に使われるようになった用語だ。

パク大統領が「新386世代」を重用していることに対して、“彼らの経綸を重用した”という肯定的な論評の反面、“過去へ回帰している”という批判も起きている。評価は立場によって相異なり、両分されるようだ。概して保守陣営は前者を、進歩陣営は後者の立場だ。だが、度が過ぎれば問題になるものだ。保守陣営からも“過去への回帰”を憂慮する声が出てきている。

<中央日報>は10日付の4面トップ記事、“パク・クネ政府の「新386」時代…経綸重用?過去回帰?”という見出しの記事で“以前の政府では第2線に後退していた元老たちが、現政府の前面に登場した。その背景にはパク・クネ大統領の要人観がある。信任を最も重視するパク大統領だけに、忠誠心が確認できた人間は、時代を越えて再起用するという意思が読み取れる。"と説明した。

<中央日報> “ソ・チョンウォン氏への推薦、パク・クネ大統領も望んだことなのか”

同紙の34面コラム“オールダー・ボーイ(older boy)の帰還”はさらに一歩踏み込んで、「新386世代」の起用がイ・ミョンバク前政権の人事に酷似していると批判した。コラムは最近、ソ・チョンウォン前ハンナラ党代表(朴槿恵大統領の最側近で、与党の事務総長や代表最高委員を努めたが、収賄罪で議員を辞職:訳注)を、京畿道(キョンギド)華城(ファソン)甲区の国会議員補欠選挙の候補者として推薦したことを、強く批判した。

コラムは“推薦を受けたソ・チョンウォン候補は、当選さえすれば、党代表にも国会議長にもなれる立場だ。それをパク・クネ大統領も望んでいるのだろうか”と反問した。

このコラムは“かつてパク・クネ大統領は、「何人かの有力者が、思いのままに推薦してはいけない(2011年)」、「推薦に私心が介入してはいけない(2008年)」と主張していた。パク大統領の政治における核心的な価値は、実践を前提とした言葉の一貫性であった。だが、今回のことで、その価値は損なわれるしかないだろう”と指摘した。

コラムはまた、大統領府の性質を熟知する人士の評として、“今回のソ・チョンウォン推薦を指して「報恩」と「役割論」を提示する者がいるだろう。しかし、わずか数年前の李明博政権下でも、院外の元老(パク・ヒテ氏)を補欠選挙に出馬させ、元老の実力者(イ・サンドク:大統領の実兄、後に収賄罪で拘束)が与党議員を統率した。しかし、そうした元老登用の効力は一時的なものだった。手中に握ろうとすれば、かえって逃げていくのが権力だ”と批判した。

それと共にコラムは、“パク大統領は公職者の要人において私的な縁故を排除する、と公言したではないか。なのに、大統領に馴染みの「古い履歴書」を持ちだすとは..."と反問した。

<朝鮮日報>“「新386世代」、時代に逆流している”

<朝鮮日報>も10日付34面のコラム“「新386世代」”で、“今の政界で脚光を浴びる386政治家がいないのを見ると、「386世代」は歴史的な役割を充分に遂行していないか、あるいは、もはや退潮したかのどちらかだろう。この間隙を利用して、「新386世代」が登場している”と説明した。

コラムは続けて“「新386世代」の登場は、パク・クネ政府の出帆とともに始まった「オールドボーイの帰還」と、密接に繋がっている”と付け加えた。

コラムは“社会的活動の適合性を測る唯一の尺度ではないが、「新386世代」という用語には、時代に逆流する現象を皮肉る意味が含まれている。彼らが今見せている旧態依然な思考と行動を見れば、より一層そのように感じる”と批判した。 ホ・ファンジュ記者。

『10.4宣言』から6年

2013年10月04日 | 南北関係関連消息

『10.4宣言』の6周年を記念する民族統一大会(2013.10.3,韓国江原道高城郡)



 6年前の2007年10月4日、盧武鉉大統領と金正日総書記はピョンヤンで首脳会談を開き、『南北関係発展と平和繁栄に向けた首脳宣言(以下、10.4宣言)』を採択しました。
 2000年6月の第1回首脳会談で採択された『6.15南北共同宣言』を具体化させた『10.4宣言』は、文字通り、南北関係を発展させ民族の平和と共同繁栄を目ざす実践綱領でした。

 とりわけ第4項では、南北が協力して朝鮮戦争の終結と平和体制構築に向け、主動的な役割を推進すると宣言しています。
 「南と北は現在の休戦体制を終息させ、恒久的な平和体制を構築していくべきとの認識を同じくし、直接関連した3カ国または4カ国の首脳らが朝鮮半島地域で会い、終戦を宣言する問題を推進するため協力していくことにした。」

 また第3項の「西海での偶発的衝突防止に向け共同漁労水域を指定し、この水域を平和水域とする」、第5項の「海州地域と周辺海域を包括する”西海平和協力特別地帯”を設置し」などは、そのまま履行されていたなら、2010年秋の痛ましい軍事衝突(延坪島砲撃)は未然に防止できたと思われます。

 しかし、李明博政権から朴槿恵政権へと継承されるなか、『10.4宣言』の意義は大きく損なわれています。何よりも、国家情報院が南北首脳会談の対話録を違法に流出させ、与党がそれを恣意的な解釈で歪曲して昨年の大統領選挙に悪用したことが、今も尾を引いています。

 両首脳が合意した「北方限界線(NLL)」から「平和協力特別地帯」への転換は、画期的な未来志向の発想でした。対決の産物である「線」を和解の象徴である「面(地帯)」で覆うことにより、平和共存への道を切り開いたからです。

 朴槿恵政権と与党は、”盧武鉉大統領が金正日総書記の歓心を買うために領海問題で譲歩した”と批難しています。”北方限界線を放棄した”との主張ですが、部分的に公開された首脳会談対話録のどこを読んでも、そのような解釈は成立しないでしょう。ところが、保守メディアを総動員しての宣伝に、国民世論も少なからず影響されているようです。

 留意すべきなのは「北方限界線」が、決して国際法的に有効な境界線ではないという事実です。南が一方的に主張しているだけで、北はそれを承認しておらず、米政府ですら境界線として認定していません。もちろん、休戦協定の合意事項でもありません。

 『10.4宣言』は南北の当局間で交わした貴重な合意であると同時に、南北海外同胞の平和と繁栄への意志が込められた全民族的な叡智でもあります。『10.4宣言』を蘇生させ、着実な履行を推進したいものです。

 10月3日、「6.15共同宣言実践南側委員会」が主催する「10.4宣言の6周年記念民族統一大会」が、江原道の高城郡で開催されました。『統一ニュース』の関連記事を要訳して紹介します(http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=104356)。(事務局)



『10.4宣言』の履行が即ち南北関係の原則
  -『10.4宣言』を順守し実践することが、私たちにとって最高の統一運動だ-


  
 『10.4宣言』6周年をむかえて「6.15共同宣言実践南側委員会(以下6.15南側委)」は3日午後、江原道(カンウォンド)高城郡(コソングン)巨津邑(コジンウプ)の浜辺公園で、「10.4宣言の6周年記念民族統一大会」を開催した。

当初、この大会は去る7月4日の「6.15共同宣言実践民族共同委員会、南北海外共同委員長団会議」で共同開催すると決定されていた。しかし、離散家族再開事業の延期などで南北関係が冷却期に入った点を考慮し、分散開催として開かれた。

この日の民族統一大会で「南北海外共同委員会」は決議文を発表し、『10.4宣言』の実践を強調した。決議文は「歴史的な6.15共同宣言と10.4宣言を順守し実践することは、私たちの時代における最高の統一運動である。南北関係の原則も、相互信頼の出発点も、民族の志向と要求が含蓄されている南北の諸共同宣言を尊重して徹底的に履行するところにある」と強調している。

決議文はまた、「ここ数年の南北関係の現実は、南北共同宣言を離れてはいかなる南北関係の改善も期待できないことを証明している。南北共同宣言の履行に向け多方面な接触と対話、協力を再開し活性化していくために、積極的に努力するだろう」と明らかにした。

決議文は引き続き「南と北、海外の全同胞が力と知恵を集めて、統一と平和繁栄の未来を作ろうとするのが南北共同宣言の基本精神である。相手の体制と制度を否定し、対話を政治目的に悪用してはならない」と南側政府を牽制した。

そして「せっかく整った南北間の対話と協力が中断され、正常化の道に入った南北関係が再び予測できない危機に直面することになった理由もここにある。同族間の反目と不信、対決をもたらすだけの誹謗と敵対行為に反対する」と主張した。

さらに「祖国統一の前途には依然として多くの難関が横たわっている。しかし、6.15南北共同宣言と10.4宣言を順守し履行しようとする私たちの意志は、どんな障害にも挫かれることはないだろう。これからも、6.15民族共同委員会の先導的な役割を積極的に高めていく」との決意を表明した。

この日の民族統一大会でイ・チャンボク「6.15南側委」常任代表は、「昨今の政治に対して怒りを禁じ得ない。その一つは順調に進行していた南北関係の悪化であり、他の一つは命がけの闘争で勝ち取った民主主義の後退だ」と政府を批判した。

イ・チャンボク常任代表は「左派だ従北だとレッテルを貼って平和統一運動を弾圧するのは、民主主義に対する挑戦だ。金剛山観光と離散家族の再会事業は直ちに実現されなければならない。そのためには相手に対する不信を捨て、自ら進んで信頼を積むという姿勢が必要なことは明白な事実」と強調した。

特に、政府が審議中の「第2次南北関係発展の基本計画」で西海平和特別地帯の項目が削除された事実に対し、「盧武鉉元大統領がNLL(北方限界線)を放棄したという虚偽事実を流布させ、10.4宣言を瓦解させようとする企図の一環だ。現政府が何度も強調してきた’既存合意の遵守’という原則にも背く」と指摘した。

大会ではまた、最近の離散家族再会行事の無期限延期と金剛山観光再開のための南北実務会談中止など、南北関係の状況を批判する各界の発言が相次いだ。

オ・ジョンニョル「韓国進歩連帯」総会議長は、「10.4宣言が誠実に履行されていたなら、朴槿恵大統領が語ったように、列車で釜山からシベリアを横断して大西洋まで行きたいという夢が、単なるたわごとでなく実現されていただろう」と話した。

また、オ・ジョンニョル議長は「ところで、朴槿恵大統領は’休戦ラインに平和公園を作ろう’と提案している。だが、その一方では西海平和協力特別地帯の建設計画を削除した。これが私たちの現状だ。大韓民国政府を国民の力で、国民の心で動かさなければならない。 どのような勢力が祖国統一の課題を妨害しても、民族の大同団結、自主統一への大道は必ず開かれる」と強調した。

キム・ハンソン「6.15学術本部」代表は、「南北赤十字社が、全面的な生死確認、自由な書信交換、面会の定例化に合意した。これを直ちに施行しなければならない。両親・兄弟・子供の関係は天倫だ。 天倫をまともに守れない民族の羞恥と苦痛を速やかに断ち切ろう」と訴えた。

大会には、キム・ジンヒャン「6.15共同宣言実践海外側委員会」のヨーロッパ地域委員会共同代表、キム・ウォンベク「6.15共同宣言実践海外側委員会」カナダ委員会委員など、海外側委員たちも参加し、連帯の意向を明らかにした。

キム・ジンヒャン共同代表は連帯の挨拶で「10.4宣言の合意という驚異的な事件は、私たちの民族には統一の希望を、人類にはコリア民族の気高さを知らしめた。しかし6年が過ぎた今、冷戦を訪仏させる相互誹謗と敵対心によって、世界で最も戦争の危険が差し迫った地域に転落した。非常に残念だ」と話した。

キム・ジンヒャン共同代表はまた、「多数の誠実な人々が基本権を享受し、分断した南北がこれ以上は歳月を浪費せずに交流して協力することが海外同胞の夢だ。6.15共同宣言と10.4宣言は必ず実践されなければならない。これが朝鮮半島の永久平和と統一への道だ。 わが祖国、錦繍江山の統一を目ざす道で故国同胞らと共に歩みたい」と語った。

この日の民族統一大会にはソウル、京畿、江原、光州などの「6.15共同宣言実践」各地域本部と女性本部、「統一の道」などの諸団体から4百人余りが参加した。参加者は行事を終えた後、江原道高城郡の巨津邑一帯を行進した。

「10.4宣言の履行」、「金剛山観光の再開」と書かれたプラカードを持った参加者たちは、「金剛山観光を再開して地域経済を活性化しよう!」とスローガンを叫び、高城郡の統一展望台に移動して行事を終えた。