NPO法人 三千里鐵道 

NPO法人 三千里鐵道のブログです。記事下のコメントをクリックしていただくとコメント記入欄が出ます。

新年の国民世論調査-韓国市民が望む社会とは?

2015年01月08日 | 南域内情勢

歴代大統領への好感度-朴正煕↓、盧武鉉・金大中↑(2015.1.1『ハンギョレ新聞』)


今年は、日本帝国主義の植民地統治からの解放(光復)を迎えて70年になります。『ハンギョレ新聞』は元旦の特集として、国民世論調査の結果を報道しました。「光復100年となる2045年に向け、残り30年をどのように準備するのか」という問題意識から。今回の世論調査を実施したそうです。今回の調査は12月12~15日、全国の成人男女1000人を対象にした電話面接調査によって実施されました。調査の誤差範囲は、95%の信頼水準で±3.1%。以下に、その内容を要訳して紹介します。(JHK)


1. 望ましい社会とは?

“私たちの社会が今後、どのように発展することを願うか”という質問に、最も多い47.3%の回答が“貧富格差が少なくて社会保障の整備された社会”だった。

私たちの社会が追求すべき望ましい未来像として、「福祉と平等」を挙げた人が10年前に比べて急増した反面、「経済的豊かさ」を選択した人は急減している。未来に対する不安が深くなるに連れ、社会的連帯に対する欲求が強くなっているようだ。10年前の2004年5月に行った世論調査でも、同じ質問に「社会保障」を挙げた人が最も多く、37.3%だった。

10年間に10%ポイントが増えたわけだ。こうした変化は、上位1%の平均所得が全体平均所得の12.97倍へと貧富格差が激しくなった現況と、契約職の増加や退職年齢の下降といった雇用不安が深刻化する世相を反映しているのだろう。

「社会保障」に続き、「弱者も平等に保護される社会」が28%で2位を占めた。「平等な社会」は、10年前の調査では22.5%で3位だった。「弱者」に共感して「社会的連帯」の必要性を感じる比率が、ますます増加している。 双龍(サンヨン)自動車の解雇労働者をはじめとする非正規職労働者の闘争、母が二人の娘を連れて生活苦から自殺した事件など、社会的弱者が隈に追いやられる現実の影響であろう。

「社会保障」と「平等社会」に対する応答を合わせると75.3%で、10年間に15.5%が増加した。 これに対し、10年前に2位(31.9%)だった「経済的に豊かな社会」を選んだ比率は、半分以下の14.8%で3位に落ちた。

理念指向別に調べると、進歩層の「平等社会」に対する選好度が34.7%で、保守(25.6%)層や中道層(25.9%)に比べて10%ほど高かった。「社会福祉」に対する応答比率も、進歩(50.6%)が保守(47.3%)や中道(47.0%)より多かった。一方、「豊かな社会」に対する願望は、保守(18.3%)と中道(16.2%)が進歩(5.7%)に比べて圧倒的に多かった。

世代別に見れば、40代(54.6%)と50代(50.6%)で「社会福祉」の応答率が最も高く、これら年齢層が、現実問題である“老後不安”に悩んでいることがわかる。社会福祉のために増税が必要だという意見も、この10年間に多くなった。「税金を上げた方が良い」という意見は27.4%で、10年前の18.6%に比べて10%ほど増えている。

「今の水準で維持した方が良い」という意見も、37.1%から46.4%と、やはり大きく上昇している。「低くした方が良い」という応答は、10年前の42.9%から22.1%に急減した。福祉のための増税に対する抵抗感が、以前より減ったわけだ。


2. 若者がなぜ希望を持てないのか?

「三棄世代(恋愛と結婚、出産を放棄した世代)」と呼ばれる20代の若者たち。彼らの社会に対する悲観が深まっている。“悩んでこそ青春”と言われるが、最近の20代は過去と比較しても、あまりにも苦悩がひどい。 未来の主役である20代を励ます解決策が、至急に求められている。今回の世論調査で20代は、社会の「現在と未来」に対して最も否定的な展望を示した。

20代はまず、「私が暮らす韓国」に対する満足度から低かった。10人中3人(28.4%)足らずが‘満足する’と答えただけだ。全世代平均(38.7%)より10.3%も低い数値だ。満足度が最も高い60代以上(55.5%)と比較すると、半分ほどの水準にしかならない。

さらに、「社会の未来展望」にはより一層否定的だった。社会に対する評価を問う諸項目で、20代は10人中7人(71.6%)の圧倒的多数が‘良くない方向に行っている’と答えている。この中で(16.4%)は、‘非常に良くない方向に行っている’と見ている。反面、‘良い方向に行っている’との回答は、20代では3人中1人にも達しなかった(26.1%)。

20代は、「改善の可能性」に対しても否定的意見が優勢だった。我が国の未来が今より‘良くなる’と答えたのは(36.1%)で、すべての世代をあわせて最も少なかったし、‘悪くなる’という意見が最も多かった(34.1%)。

10年前と比較すれば、20代の悲観的な状況認識が深刻であることがわかる。2004年5月の世論調査結果と比べると、今回の調査で30~60代以上の世代では、「私が暮らす韓国」に対する肯定的世論が7%~20%も増加している。ところが唯一、20代では「満足している」との回答が、10年間に0.3%(2004年は28.1%)増えるのにとどまった。ほとんど変わっていないのだ。

また、かつて「社会の未来展望」に対して60代の次に楽観的だった20代は、10年を経て最も悲観的な世代に変貌した。2004年には20代の57%が「より良い未来」を予想したが、10年後にその比率は36.1%へと墜落した。一方、未来には「状況がさらに悪くなる」という意見が、9.2%から34.1%へと4倍近く増えている。

20代は、高い青年失業率と学資金ローンなどの借金増から、‘三棄世代’(恋愛と結婚、出産を放棄した世代)と呼ばれている。しかし今や、‘五棄世代’(マイホームの夢と社会的な人間関係まで棄てた世代)に転落したとも言われる。このように暗澹とした20代の現実が、そのまま反映された結果といえる。

今回の調査で20代は、‘経済的な不安定性’(67.8%)と‘社会的な成功および認知を得ることの困難’(20.7%)を、自身の人生に満足できない主な原因に選んだ。経済的な困難に苦しむためか、20代は今後の社会が進むべき方向として「貧富格差が小さくて社会保障が整備された国」(36.8%)、「弱者も平等に保護される国」(30.6%)を優先的に選びながらも、これに伴う‘増税’には最も否定的だった。「社会福祉拡大のための増税」が最も多かった30~50代に対し、20代は「今の水準を維持」(60.7%)、あるいは「低くした方が良い」(23.8%)という意見が多かった。

ところで、他世代の「社会に対する今後の展望」も、そんなに良い方ではない。全世代平均で「社会が良くない方向に行っている」との意見が、60.5%に達するからだ。加えて、「我が国の未来状況がさらに悪くなる」との予測(26.2%)が、10年前(16.1%)に比べて10.1%も増えている。わが国に対する全体的な満足応答が10年前(26.9%)より11.8%上昇したものの、「まずまずだ」(40.5%)と答えた中の69.5%は、私たちの社会が「良くない方向に行っている」と見ている。全般的に、楽観から悲観へと重心が移っていく様相だ。


3. 歴代の大統領で誰が最も好かれているか?

李明博-朴槿恵と続く保守政府を体験する過程で、国民の間には「強力な指導力」に対する期待が低下する反面、「民主的なリーダーシップ」を待望する声が高まっている。「望ましい国家指導者像」を質問したところ、「民主的な意志決定を重要だと考える人」を望む回答が51.4%で、「権威主義的でもいいから強力な指導力を持つ人」を望むという答(45.9%)よりも多かった。

2004年の世論調査では、「強力な指導者」を望むとの答(53.2%)が「民主的指導者」(44.7%)よりも多かった。10年ぶりに‘疎通’が‘権威’を逆転したわけだ。世代間、理念指向にともなう回答でも差異が目立った。

20代は「民主的指導者」に対する選好度(70.3%)が圧倒的に高い反面、60代以上は「強力な指導者」(62.2%)に対する要求が多かった。保守指向では68.8%が「強力な指導者」を望み、進歩指向の回答者は「民主的指導者」(73.7%)を好む。ただ、中道層では「民主的指導者」に対する選好度(61.2%)が、「強力な指導者」(35.7%)よりはるかに高かった。

こうした傾向は、歴代大統領への選好度調査でも具体的にあらわれている。「最も好きな国家指導者」を尋ねた質問に、朴正煕元大統領を挙げた答(38.5%)が最も多かったが、2004年の調査結果(50%)に比べると、11.5%も減少している。反面、盧武鉉元大統領は2004年の11.6%から2014年に32.1%へと、選好度が3倍近くも上がっている。

朴正煕・盧武鉉の元大統領はそれぞれ、「強力な指導者」と「民主的指導者」を象徴すると見れる。「強力な指導者」を好む回答者の65.1%が朴元大統領を最も好きだと答えたし、「民主的指導者」選好層の半分以上(52.1%)は、盧元大統領を挙げている。保守指向は朴正煕(66.4%)、進歩指向は盧武鉉(55.8%)を好む比率が高かった。中道層では、朴正煕(25.8%)よりも、盧武鉉(39.2%)の選好度が高かった。

特に、世代別の差異が際立っている。20代と30代では盧武鉉に対する好感度がそれぞれ49.4%、48.5%で高かったし、朴正煕14.2%、18.9%にl過ぎない。40代では盧武鉉(35.8%)と朴正煕(35.6%)に対する好感度に大差なかったが、50代と60代では、朴正煕への支持がはるかに多かった。特に60代では朴正煕への選好度が63.9%に達した反面、盧武鉉は10.6%に過ぎない。

二人の大統領に続き、金大中(11.5%)、李明博(1.7%)、金泳三(1.1%)の各元大統領が「好きな大統領」として挙げられた。金大中に対する選好度は2004年の8.6%から2.9%上がっている。「民主政府」を象徴する金大中-盧武鉉の両大統領に対する支持を合わせると43.6%[朴正煕への支持38.5%を上回る:訳注]で、10年前(20.2%)の調査より、2倍以上も高まったことが分かる。


4. 韓国が協力すべき国は?

「今後わが国の発展のために協力が最も必要な国はどこか」という質問に、回答者の58.5%が‘中国’と答えた。‘アメリカ’を挙げた応答は34.5%だった。これは、中国の経済大国化と韓中関係の拡大がもたらした認識の変化と判断される。2004年8月、『韓国社会世論調査研究所』の世論調査結果では、中国(43.7%)とアメリカ(41.8%)が拮抗していた。10年間に中国への関心が非常に高くなったことがわかる。

中国に対する選好度が高まったことは、2008年の世界金融危機以後、東アジアを中心に中国の浮上が目立っているのに伴う結果だろう。直接的には、韓中貿易の規模が韓米貿易の2倍に達しており、最近は韓中自由貿易協定(FTA)まで締結されたうえに、観光と留学をはじめとする人的交流も急速に増えるなど、韓国と中国の密接度が高まったからだと分析される。

加えて、アメリカに安保を過度に依存してきた「韓米同盟」に対する疲労感も、影を落としていると思える。理念指向に照らしてみると、進歩(70.3%)と中道(61.6%)が、保守(50.1%)に比べて中国側に傾斜している。概して保守層が「韓米同盟」を強調する雰囲気と、無関係ではないようだ。

世代別に見ると、職場で‘中国の力’を日常的に体験する40代(71.0%)と50代(65.7%)が、今後の協力国家として中国を挙げている。‘月収401万ウォン以上’の所得層で中国への協力選好度が高いこと(70.5%)も、中国と直間接的に事業面での利害関係が絡まっているためだろう。

これに対し、20代の若年層ではアメリカ(45.7%)と中国(47.9%)の比率が近接している。幼い頃から、ドラマ等を通してアメリカ文化にたくさん触れてきた20代の特性だろう。今後の協力国家で‘日本’を挙げた応答は、2004年の8.9%から今回は3.1%となり、半分以下にまで落ち込んだ。日本軍慰安婦問題など過去の歴史認識をめぐる「韓日葛藤」で、日本に対する好感度がかなり低下していることに注目したい。日本への選好度は、理念指向と関係なく等しく低下している。


5. 統一問題への視点は?

統一問題に関しては、「負担する代償が大きくても、できるだけ早期に達成すべき」が13.5%、「急ぐことなく徐々に統一条件を作るべき」が71%だった。「現状のままで良い」と、「関心があまりない」との応答はそれぞれ、10.7%と4.4%である。統一の当為性は認めながらも、急激な変化や災難を招きかねない「吸収統一」方式よりは、南北間の異質性克服を通した「漸進的統一」方式を好んでいることがわかる。

理念的指向や支持政党にともなう差異は、殆ど見られなかった。ただ、20代では「負担する代償が大きくても、できるだけ早期に達成すべき」という応答は4.5%で、平均を大きく下回った。「現状のままで良い」も18.9%で、平均のほとんど2倍に達している。20代において、「統一の当為性に対する認識」が最も弱いわけだ。

2003年5月、 『ハンギョレ新聞』の 創刊記念日をむかえて実施した世論調査では、「現状のままで良い」と「関心があまりない」はそれぞれ、7%と4.2%だった。今回のアンケート調査と比較すると、朴槿恵政府が昨年、「統一大当たり論」等で統一問題に対する関心を喚起させようとしたものの、統一に対する全般的な無関心が微増していることがわかる。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
有難うございます (pcflily)
2015-01-12 08:11:43
四面楚歌の日々の中で、唯一、私の心に明かりをともして下さっている記事に感謝しています。
ご病気かと気になっておりました。
何時も、同感出来る納得の出来る内容、信頼できる記事を有難うございます。
歴代大統領の好感度のランキングに、逆転 (チャン)
2015-05-12 14:20:19
歴代大統領の好感度のランキングに、逆転がありました。

국민이 가장 좋아하는 대통령 ‘노무현’ 1위...박근혜는 겨우 5%
10년전에 비해 노무현 7%->32% 증가, 박정희 48%->28% 감소

http://www.amn.kr/sub_read.html?uid=19084

コメントを投稿