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憲法裁判所の弾劾審判

2017年03月09日 | 三千里コラム

憲法裁判所の掲示板-弾劾審判宣告日の案内(17.3.8)



1.大統領は弾劾されるのか?

歴史的な審判の瞬間が迫っている。カウントダウンは始まっており、すでに12時間を切っている。憲法裁判所は3月8日、朴槿恵大統領への弾劾審判に関する宣告を、3月10日午前11時に行うと発表した。昨年12月9日、国会議員234名(定数300名)の賛成で朴大統領の弾劾訴追案が採択された。それから92日を経ての審判である。

憲法裁判所は9名の裁判官で構成され(現在は1名が欠員)、その内3名が反対すれば弾劾案は否決される。朴槿恵氏はその日に大統領として職務復帰し、来年2月まで国政を担当するだろう。しかし8名のうち6名以上が賛成すれば、彼女は停止中だった大統領の職責を即刻罷免され、一市民として検察のさらなる追及と捜査を受けねばならない。

民意はどうなのか。世論調査機関『リアル・メーター』が3月8日に実施した調査結果を見ると、弾劾支持の世論が77%、反対は20%だった(保留3%)。同機関の昨年12月21日付調査に比べ、弾劾支持の世論は約5%増えている。他機関による直近の調査でも、弾劾支持の世論は概ね75~80%に達している。韓国社会における憲法裁判所の審判は、単に法理の検討だけにとどまらず、世論の動向をも考慮しての総合的な状況判断である。80%という圧倒的な民意を反映した立法府の弾劾訴追案を、司法府が退けることは想定し難い。

ただ、看過すべきでないのは、ニクソン元米大統領と違って彼女は、最後まで辞任を受け入れようとしなかったことだ。国民にとって最大の悲劇は、大統領が最後まで自身の非を認めず、すべての行動は国家と国民のためだったと強弁していることだ。今も彼女は、野党と反対勢力の計略に“嵌められた”被害者だと思い込んでいる。筆者は確信するが、朴槿恵氏にとって恐らく、今夜が青瓦台(大統領官邸)で過ごす最後の夜となるだろう。


2.特別捜査チームの報告

一方、昨年11月17日、『朴槿恵政府の崔順実ら民間人による国政介入疑惑事件究明のための特別検事任命などに関する法律』が国会を通過した。同法に基づき特別捜査チームが組織され、今年2月末日まで約90日間に及ぶ集中的な捜査が実施された。特別捜査チームは3月6日、記者会見を開き捜査結果を公表している。便宜上、本件を「朴槿恵・崔順実ゲート」と命名するが、以下は、捜査結果を要約したものである。

「朴槿恵・崔順実ゲート」の核心は、国家権力が私的利益追求のために濫用されたことであり、韓国社会の典型的な腐敗構造の源泉ともいえる「政財(政界と財界)癒着」である。その中心には常に朴槿恵大統領がいた。しかし、大統領は在職中に刑事訴追されないとの規定がある。それで特別捜査チームは、調査によって立証された12件に関し、大統領を容疑者として立件し今後の関連捜査を検察に移管した。朴槿恵大統領の主な容疑は次の四項目である。

①特別捜査チームは三星電子副会長・李在鎔の贈賄捜査において、朴槿恵大統領が崔順実と共謀し巨額の賄賂を授受した容疑を確認した。朴槿恵大統領と崔順実は、李在鎔が三星財閥の経営権を継承するうえで企業合併などで諸般の便宜を提供し、その代価として433億ウォンの賄賂提供を約束された(実際の収賄額は約300億ウォン)。

②朴大統領は『KEBハナ銀行』の人事に介入し、崔順実の推す人物を本部長に昇進させるように圧力を行使するなど職権を濫用した。また、崔順実の娘が梨花女子大学に不正入学する際に便宜を提供したキム・ギョンスク前学長の夫を、国家科学技術諮問委員に委嘱するように指示するなど職権を濫用した。

③朴大統領はチョン・ホソン大統領秘書官らと共謀し、2013年1月から2016年4月まで、崔順実に計47回にわたって国家機密が記載された文献をeメールなどを通じて伝達するなど、公務上の秘密を漏洩した。

④現政権に批判的な文化芸術界の人士を選別(ブラックリストの作成)する際に、これに反対する政府官僚たちが辞職を強要された。朴槿恵大統領はこの件に直接介入したのであり、職権濫用と権利行使妨害などの容疑がかけられている。

上に挙げた項目だけでも、朴槿恵大統領の罪状は明白であろう。だが、これは全体の一部に過ぎない。特別捜査チームに参加した弁護士や検事たちのインタビュー記事を読むと、時間の制約(政府は捜査チームの期間延長を認めなかった)に加え、当事者である朴大統領の非協力的な態度によって真相の究明は極めて不十分だったという。大統領は捜査に協力するとした当初の対国民談話とは違って、対面調査に一度も応じず、大統領官邸の押収捜査も拒否した。「朴槿恵・崔順実ゲート」は20~30%が解明されたに過ぎないそうだ。

なかでも、セウォル号沈没事故当時、朴大統領の具体的な動向は究明されなかった。彼女がどこに居て、どのような報告を受け、救助に向けてどのような初期指示を出したのか...。事故前日の2014年4月15日夕刻~翌16日午前10時までの時間帯、大統領の行動は全く確認されていない。また、崔順実一家の総資産は2730億ウォン(崔順実本人の財産は228億ウォン)と計上されたが、40年以上(朴正熙政権期から)の長期間にわたる蓄財であり、不法な資産形成と隠匿の全貌を究明するには至らなかった。これらの疑惑も、今後の検察捜査に委ねるしかない。


3.今後の展望と課題

憲法裁判所が弾劾の審判を下せば、2ヶ月以内に大統領選挙を実施する規定である。5月9日が投票日の候補として上がっている。そして政界の現状は、与野党を問わず、大統領選挙に向け党内の有力者たちが候補選出にしのぎを削っている。いつの間にか、矛盾に満ちた韓国社会の根本改革を訴えた「ローソクデモと広場の政治」は、後方に追いやられた感すらある。思い起こそう。昨年10月末から19回に及ぶ延べ1200万人の市民集会は、単に朴槿恵大統領を罷免することが目的ではなかったはずだ。大統領弾劾は市民革命の始まりに過ぎず、決して終わりではない。

「ローソクデモと広場の政治」が掲げた改革課題は、大統領選挙に目がくらんだ与野党の消極的な姿勢もあって、何一つ解決されていない。△セウォル号特別法の改定、△ペク・ナムギ農民(2015年11月市民決起集会の犠牲者)特別捜査の実施、△言論掌握防止法の改定、△不当解雇制度の中断、△歴史教科書の国定化禁止法の制定、△「サード(高高度ミサイル防衛システム)」配置の中断、など6大当面課題は2月の国会でも論議すらされなかった。国会の時計は、昨年12月9日(弾劾案可決)の時点で止まったままである。

躊躇する野党(与党の一部を含め)を大統領弾劾に踏み切らせたのは、「ローソクデモと広場の政治」の圧力だった。代議制民主主義の限界を克服しようとする市民の、直接民主主義への熱い願望だった。それを快く思わない議会政治と各政党が企図するのは「ローソクデモと広場の政治」の終息であり、大統領選挙局面で政党政治が主役として再登場することだろう。

韓国市民革命は今、重大な分岐点を迎えている。朴槿恵弾劾という勝利によって迎えた大統領選挙の早期実施局面で、「政党政治」の荒波に「広場の政治」が飲み込まれようとしているからだ。その原因は、全国2300の市民社会団体で構成される『朴槿恵政権退陣を求める国民行動』と民主労総などの進歩勢力が、広場に結集した市民の憤怒と熱気を、政治的・階級的な改革力量にまで高め切れていないからだろう。

だが、「ローソク」がいつの間にか「烽火(タイマツ)」になり、広場のスローガンが「朴槿恵退陣」から「朴槿恵逮捕」に変化していることからも明らかなように、韓国市民革命の幕は、今ようやく上がったところである。次の大統領選挙で、「誰が政権を執るのか」が重要なのではない。「どのような政策を実施するのか」、韓国社会の進むべき方向を先ず提示すべきであり、その次に「どの勢力(政党)がそれを実行するのか」を選択することだ。「広場の政治」が掲げた要求を定式化し、それを遂行する意志を持った政治勢力を市民が牽引し、圧迫し、強制することが民主主義の原点であり原則であるからだ。

1987年の民主抗争は軍事政権が強要した憲法を変え、市民社会の形式を整えた。2017年の市民革命は、積年の弊害に病んだ韓国社会の根本的な変革を志向する。2017年は、それを可能にする勢力を、市民自らの力で形成していく元年となるだろう。3月11日の土曜日、第20回の市民集会が光化門広場で開催される。だがそれは、朴槿恵退陣を祝う勝利の終宴ではなく、社会変革への新たな出発を誓う舞台となるだろう(JHK)。
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1 コメント

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新たな課題 (sangtae)
2017-03-10 12:26:27
弾劾成立のニュースを聞きながら、興奮しながら冷静でいようとする私がいる。
庶民感覚からすれば、弾劾は当然である。しかしながら
弾劾不成立時の市民の絶望はいかばかりで、その混乱は到底収拾できない。
新たな出発ではあるが、大きな課題が山積している。
最も重要な課題は、南北の平和問題であろう。
60日以内に大統領選挙があるが、南北対話を推し進める候補を応援しよう。さして、ケソン工業団地を再開させ、在日のわれわれもそこで汗を流そう。

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