船場吉兆の女将の記者会見について書いた。
しかし、これは女将だけではない。野村證券のインサイダー取引事件では、社長の記者会見で同じことが起こった。新聞記事だけではよくわからないが、当日、テレビを見た人は、渡部賢一社長の話し方は当事者意識0。社員が外国人という意識があったのか、自社の社員が起こした悪事という意識からの謝罪とは感じられなかった。
ポイントは3つ。
1)「開き直りではないが、個人が犯したことは…」
→ まさに、本音、開き直っている。
2)具体的な取引内容などについては「捜査に協力している段階なので」と明言 を避けた。
→ 捜査を口実に情報公開を拒む。
3)今日の早朝初めて聞いた。
→ 逮捕は、野村の協力で出張を理由に日本へ呼び寄せて行った。と、する と、野村トップは知っていたはずだし、もし、知らなかったとすれば、この程 度の事件は、社長に報告がいかない会社?となる。
渡部社長は、1997年11月、都市銀行や山一証券破綻で世界中が、日本の金融機関に対する信用不安に陥ったとき、そして、98年のロシア危機から始まった2000億円の赤字と、90年代後半の野村の危機を救った人物。頭も切れ、交渉力も、肝もあるといわれる。(ただし、ナンバー2としての評価だ。)
それだけの社長が、やはり気がつかない。当日の新聞記事を3紙転載する。よく読むと、記者会見で記者が感じた不快感が滲み出ている。
〔インサイダー:「チェック限界あった」野村証券社長謝罪〕
毎日新聞 2008年4月23日 0時48分(最終更新 4月23日 2時10分)
社員のインサイダー取引疑惑についての会見で頭を下げる野村証券の渡部賢一社長(右)と山道裕己専務執行役=東京都中央区の同社で2008年4月22日午後7時1分、馬場理沙撮影 社員のインサイダー事件を受けて22日夜に記者会見した野村証券の渡部賢一社長は、「証券市場を汚す重大な問題であり、本当に申し訳ない」と謝罪し、同日付で社員を解雇したことを明らかにした。ただ、かかわった取引案件などの具体的事実関係については「調査中」として歯切れの悪い説明に終始。自らを含む経営陣の責任についても「事実関係の確認を待ってから考えたい」と明言を避けた。
渡部社長は「社員に対して株式取引を野村証券の口座のみで行うよう義務づけており、インサイダー取引のチェック体制はできていると思っていた」と説明。今回、知人の口座を使って取引を行っていたことについては、「他の口座まではチェックできず限界があった。システム上は整備したと思っていたが、プロとしての志の部分を研修し、強固にしたい」と述べた。内規違反者を直ちに解雇するなど「厳罰」化による綱紀粛正の考えも示した。
国内証券最大手として、市場に与えた影響については「慚愧(ざんき)に堪えない」と重ねて陳謝。自社の業績への影響についても「信頼を少なからず失ったことで、いくばくかの影響は受けると思う」と認めた。【坂井隆之】
◇渡部賢一野村証券社長の会見での主なやり取りは以下の通り。
--事件を把握したのはいつか。
今日の早朝初めて聞いた。調査に協力する過程でインサイダー取引の事実を確認し、解雇した。
--防止体制が不十分だったのでは。
全社員に株取引は自社の口座で行うよう義務づけ、投資銀行部門には一切の株取引を禁じていた。倫理観、プロとしての志を強固にしていきたい。
--元社員の業務内容は。
新人の育成期間で、契約書作成などにあたっていた。香港でも投資銀行部門にいた。
--経営責任は。
全貌(ぜんぼう)が見えない部分もある。事実関係を確認後、考えたい。世界クラスの商品を提供するため、海外の人材を採用する方針は変えない。
〔留学エリート禁じ手 野村元社員インサイダー 役割分担、取引繰り返す〕
2008年4月23日 東京新聞朝刊
社員のインサイダー事件について謝罪する野村証券の渡部賢一社長=22日、東京都中央区日本橋で
企業の極秘情報を扱う証券会社を舞台にしたインサイダー取引事件が二十二日、明るみに出た。東京地検特捜部に逮捕された野村証券元社員の〓(リーユ)容疑者(30)らは、M&A担当者として得た極秘情報を基に株を売買し、全体で五千万円近くの不正な利益を得た疑いが持たれている。証券市場の信頼を失墜する不祥事に、同日夜会見した野村証券の渡部賢一社長は「申し訳ございません」と謝罪した。
〓、蘇春光(37)の両容疑者は京都大学に留学経験があり、蘇春成容疑者(25)は立命館大学の留学生。
春光容疑者は京都の大学を卒業した在京の中国人でつくる親睦(しんぼく)団体「京友会」会長も務める。インサイダー取引に手を染めたのは、いずれも中国のエリート層と呼ばれる人物だった。
〓容疑者は一九九八年から二〇〇二年まで、京大に留学した後、民間企業を経て、〇六年二月から昨年十二月まで東京・大手町にある野村証券企業情報部に在籍した。
同部は企業の合併・買収(M&A)の助言などを担当する部署で、株価に直接影響を与える情報が集まる。〓容疑者は入社直後の〇六年六月から春光容疑者に情報を伝達。主に春光容疑者が実行役となり、春成容疑者が開設した口座などで株取引を繰り返したとされる。
当初の投資資金は〓、春光両容疑者らが拠出した約二千万円。これを元手に計二十一銘柄でインサイダー取引を行い、不正に得た利益は総額五千万円近くに上るとみられる。
監視委幹部は「証券会社で企業秘密が入ってくる部署の人間が、複数銘柄で継続反復的にインサイダー取引を行った。きちんとペナルティーを科さないと、日本の証券市場の信頼性が損なわれる」と事件を摘発した意義を強調した。
5年で再発信頼失墜
「開き直りではないが、個人が犯したことは…」。事件を受けて二十二日夜、東京・日本橋の本社で会見した渡部賢一社長は、証券市場を揺るがす不祥事に謝罪の言葉を繰り返しつつ、個人の株取引を把握しきれない“限界”を強調。証券取引等監視委員会の調査中を理由に、詳しい説明も避けた。
報道陣約百人が詰め掛けた会見場に現れた渡部社長らは、すぐさま「証券市場を扱う者がこうしたことを起こしてしまい、本当に申し訳ございませんでした」と深々と頭を下げ謝罪。「ざんきに堪えない」と繰り返した。
この日、書面通知の形で〓容疑者を解雇したことを明らかにしたが、本人から事情は聴いていないという。経営陣の責任については「事実関係を待って対応したい」と述べるにとどまった。
同社は二〇〇三年にも社員がインサイダー取引で起訴された。社内ルールでは、投資銀行業務に従事する社員の株取引を全面禁止。担当専務に年二回、違法行為を禁じる誓約書を提出させるなど事件を教訓とする再発防止に努めてきた。
今回のインサイダー取引を渡部社長が知ったのは二十二日早朝。その後、監視委から連絡を受け、調査に応じる中で事実を知ったという。具体的な取引内容などについては「捜査に協力している段階なので」と明言を避けた。
同社の内規では、社員は一律の支店内で設ける口座のみで証券取引を許されているといい、「システム上は十分にチェックできる体制だった。他で口座を持つとチェックできない」と強調した。
※〓(リ)は、がんだれ下に、萬(ユ)は、愉のりっしんべんを、王へんに変えたもの
〔投資家への背信 野村社員インサイダー 機密性高いM&A 経営責任市場は注視〕
22日に逮捕された野村証券の社員らによるインサイダー取引事件は、経済界に衝撃を与えた。世界的な金融市場の混乱が長引く中で、証券最大手関係者が不正に利益を得ていたことに、投資家らの失望や怒りは大きい。野村証券は「個人的な行為」と説明するが、企業の管理責任も重い。早急な実態の解明と投資家らへの十分な説明が求められる。(山田滋、有光裕)
◆怒りと失望
社員らによるインサイダー取引事件が発覚した野村証券の日本橋本社(22日午後、東京都中央区日本橋で)=龍信太郎撮影
野村証券は22日夜、記者会見を開き、渡部賢一社長が「市場をゆがめた社員が出たことは、本当に申し訳ない。内部管理を見直し、再発防止に努めたい」と陳謝した。
事件への会社の組織的な関与は否定し、「現時点で知りうる限りは社員の個人的な行為だ」と強調した。
しかし、不正を防げなかった管理体制への批判はまぬかれない。青山学院大の北川哲雄教授は「個人の問題として片づけず、会社全体で責任を痛感し、対処すべきだ」と指摘する。
22日午前には渡辺金融相が閣議後の記者会見で、「大手証券会社の社員がインサイダー取引を行うのは言語道断だ。こうした犯罪には厳しく対処する」と強調した。経済同友会の桜井正光代表幹事も同日の記者会見で「非常に遺憾だ。経営の脇が甘いと言わないといけない」と批判した。
◆悪質さ
今回の事件は、市場の公正さを守るべき証券会社の最大手で、企業の合併・買収(M&A)に関する機密情報を担当社員が悪用していたという点で、これまでのインサイダー事件に比べはるかに悪質といえる。
事件の舞台となった企業情報部は、M&Aの仲介や助言を行う部門だ。世界的なM&Aの増加で、証券会社にとって成長分野でもある。中でも野村は大型案件を相次いで手がけ、国内他社をリードしている。
中央大の野村修也教授(会社法)は「企業の内部情報が集中し、本来なら最も不正を防がなければいけない部署での不正で、証券業界全体が受けたダメージは大きい」と指摘する。
野村証券の親会社である野村ホールディングス株の22日の終値は、前日比66円(3・87%)安の1639円となった。証券各社の株価も軒並み大幅に値下がりした。
◆経営責任
渡部社長(野村ホールディングス社長を兼務)は4月1日に就任したばかりだ。さっそく重い課題を背負うことになった。
野村は1991年に損失補てん問題、97年には総会屋への利益供与事件を起こし、いずれもトップが引責辞任した。
その後、野村証券は法令順守を看板に掲げてきた。しかし、築いてきた信頼は崩れ去った。今回も、経営陣の責任を追及する声が高まる可能性は十分にある。
渡部社長は記者会見で、経営責任について「事実関係の確認を待って考えたい」と答えるにとどめた。今後、どのように責任を明確にしていくのか、市場は注視している。(2008年4月23日 読売新聞)
しかし、これは女将だけではない。野村證券のインサイダー取引事件では、社長の記者会見で同じことが起こった。新聞記事だけではよくわからないが、当日、テレビを見た人は、渡部賢一社長の話し方は当事者意識0。社員が外国人という意識があったのか、自社の社員が起こした悪事という意識からの謝罪とは感じられなかった。
ポイントは3つ。
1)「開き直りではないが、個人が犯したことは…」
→ まさに、本音、開き直っている。
2)具体的な取引内容などについては「捜査に協力している段階なので」と明言 を避けた。
→ 捜査を口実に情報公開を拒む。
3)今日の早朝初めて聞いた。
→ 逮捕は、野村の協力で出張を理由に日本へ呼び寄せて行った。と、する と、野村トップは知っていたはずだし、もし、知らなかったとすれば、この程 度の事件は、社長に報告がいかない会社?となる。
渡部社長は、1997年11月、都市銀行や山一証券破綻で世界中が、日本の金融機関に対する信用不安に陥ったとき、そして、98年のロシア危機から始まった2000億円の赤字と、90年代後半の野村の危機を救った人物。頭も切れ、交渉力も、肝もあるといわれる。(ただし、ナンバー2としての評価だ。)
それだけの社長が、やはり気がつかない。当日の新聞記事を3紙転載する。よく読むと、記者会見で記者が感じた不快感が滲み出ている。
〔インサイダー:「チェック限界あった」野村証券社長謝罪〕
毎日新聞 2008年4月23日 0時48分(最終更新 4月23日 2時10分)
社員のインサイダー取引疑惑についての会見で頭を下げる野村証券の渡部賢一社長(右)と山道裕己専務執行役=東京都中央区の同社で2008年4月22日午後7時1分、馬場理沙撮影 社員のインサイダー事件を受けて22日夜に記者会見した野村証券の渡部賢一社長は、「証券市場を汚す重大な問題であり、本当に申し訳ない」と謝罪し、同日付で社員を解雇したことを明らかにした。ただ、かかわった取引案件などの具体的事実関係については「調査中」として歯切れの悪い説明に終始。自らを含む経営陣の責任についても「事実関係の確認を待ってから考えたい」と明言を避けた。
渡部社長は「社員に対して株式取引を野村証券の口座のみで行うよう義務づけており、インサイダー取引のチェック体制はできていると思っていた」と説明。今回、知人の口座を使って取引を行っていたことについては、「他の口座まではチェックできず限界があった。システム上は整備したと思っていたが、プロとしての志の部分を研修し、強固にしたい」と述べた。内規違反者を直ちに解雇するなど「厳罰」化による綱紀粛正の考えも示した。
国内証券最大手として、市場に与えた影響については「慚愧(ざんき)に堪えない」と重ねて陳謝。自社の業績への影響についても「信頼を少なからず失ったことで、いくばくかの影響は受けると思う」と認めた。【坂井隆之】
◇渡部賢一野村証券社長の会見での主なやり取りは以下の通り。
--事件を把握したのはいつか。
今日の早朝初めて聞いた。調査に協力する過程でインサイダー取引の事実を確認し、解雇した。
--防止体制が不十分だったのでは。
全社員に株取引は自社の口座で行うよう義務づけ、投資銀行部門には一切の株取引を禁じていた。倫理観、プロとしての志を強固にしていきたい。
--元社員の業務内容は。
新人の育成期間で、契約書作成などにあたっていた。香港でも投資銀行部門にいた。
--経営責任は。
全貌(ぜんぼう)が見えない部分もある。事実関係を確認後、考えたい。世界クラスの商品を提供するため、海外の人材を採用する方針は変えない。
〔留学エリート禁じ手 野村元社員インサイダー 役割分担、取引繰り返す〕
2008年4月23日 東京新聞朝刊
社員のインサイダー事件について謝罪する野村証券の渡部賢一社長=22日、東京都中央区日本橋で
企業の極秘情報を扱う証券会社を舞台にしたインサイダー取引事件が二十二日、明るみに出た。東京地検特捜部に逮捕された野村証券元社員の〓(リーユ)容疑者(30)らは、M&A担当者として得た極秘情報を基に株を売買し、全体で五千万円近くの不正な利益を得た疑いが持たれている。証券市場の信頼を失墜する不祥事に、同日夜会見した野村証券の渡部賢一社長は「申し訳ございません」と謝罪した。
〓、蘇春光(37)の両容疑者は京都大学に留学経験があり、蘇春成容疑者(25)は立命館大学の留学生。
春光容疑者は京都の大学を卒業した在京の中国人でつくる親睦(しんぼく)団体「京友会」会長も務める。インサイダー取引に手を染めたのは、いずれも中国のエリート層と呼ばれる人物だった。
〓容疑者は一九九八年から二〇〇二年まで、京大に留学した後、民間企業を経て、〇六年二月から昨年十二月まで東京・大手町にある野村証券企業情報部に在籍した。
同部は企業の合併・買収(M&A)の助言などを担当する部署で、株価に直接影響を与える情報が集まる。〓容疑者は入社直後の〇六年六月から春光容疑者に情報を伝達。主に春光容疑者が実行役となり、春成容疑者が開設した口座などで株取引を繰り返したとされる。
当初の投資資金は〓、春光両容疑者らが拠出した約二千万円。これを元手に計二十一銘柄でインサイダー取引を行い、不正に得た利益は総額五千万円近くに上るとみられる。
監視委幹部は「証券会社で企業秘密が入ってくる部署の人間が、複数銘柄で継続反復的にインサイダー取引を行った。きちんとペナルティーを科さないと、日本の証券市場の信頼性が損なわれる」と事件を摘発した意義を強調した。
5年で再発信頼失墜
「開き直りではないが、個人が犯したことは…」。事件を受けて二十二日夜、東京・日本橋の本社で会見した渡部賢一社長は、証券市場を揺るがす不祥事に謝罪の言葉を繰り返しつつ、個人の株取引を把握しきれない“限界”を強調。証券取引等監視委員会の調査中を理由に、詳しい説明も避けた。
報道陣約百人が詰め掛けた会見場に現れた渡部社長らは、すぐさま「証券市場を扱う者がこうしたことを起こしてしまい、本当に申し訳ございませんでした」と深々と頭を下げ謝罪。「ざんきに堪えない」と繰り返した。
この日、書面通知の形で〓容疑者を解雇したことを明らかにしたが、本人から事情は聴いていないという。経営陣の責任については「事実関係を待って対応したい」と述べるにとどまった。
同社は二〇〇三年にも社員がインサイダー取引で起訴された。社内ルールでは、投資銀行業務に従事する社員の株取引を全面禁止。担当専務に年二回、違法行為を禁じる誓約書を提出させるなど事件を教訓とする再発防止に努めてきた。
今回のインサイダー取引を渡部社長が知ったのは二十二日早朝。その後、監視委から連絡を受け、調査に応じる中で事実を知ったという。具体的な取引内容などについては「捜査に協力している段階なので」と明言を避けた。
同社の内規では、社員は一律の支店内で設ける口座のみで証券取引を許されているといい、「システム上は十分にチェックできる体制だった。他で口座を持つとチェックできない」と強調した。
※〓(リ)は、がんだれ下に、萬(ユ)は、愉のりっしんべんを、王へんに変えたもの
〔投資家への背信 野村社員インサイダー 機密性高いM&A 経営責任市場は注視〕
22日に逮捕された野村証券の社員らによるインサイダー取引事件は、経済界に衝撃を与えた。世界的な金融市場の混乱が長引く中で、証券最大手関係者が不正に利益を得ていたことに、投資家らの失望や怒りは大きい。野村証券は「個人的な行為」と説明するが、企業の管理責任も重い。早急な実態の解明と投資家らへの十分な説明が求められる。(山田滋、有光裕)
◆怒りと失望
社員らによるインサイダー取引事件が発覚した野村証券の日本橋本社(22日午後、東京都中央区日本橋で)=龍信太郎撮影
野村証券は22日夜、記者会見を開き、渡部賢一社長が「市場をゆがめた社員が出たことは、本当に申し訳ない。内部管理を見直し、再発防止に努めたい」と陳謝した。
事件への会社の組織的な関与は否定し、「現時点で知りうる限りは社員の個人的な行為だ」と強調した。
しかし、不正を防げなかった管理体制への批判はまぬかれない。青山学院大の北川哲雄教授は「個人の問題として片づけず、会社全体で責任を痛感し、対処すべきだ」と指摘する。
22日午前には渡辺金融相が閣議後の記者会見で、「大手証券会社の社員がインサイダー取引を行うのは言語道断だ。こうした犯罪には厳しく対処する」と強調した。経済同友会の桜井正光代表幹事も同日の記者会見で「非常に遺憾だ。経営の脇が甘いと言わないといけない」と批判した。
◆悪質さ
今回の事件は、市場の公正さを守るべき証券会社の最大手で、企業の合併・買収(M&A)に関する機密情報を担当社員が悪用していたという点で、これまでのインサイダー事件に比べはるかに悪質といえる。
事件の舞台となった企業情報部は、M&Aの仲介や助言を行う部門だ。世界的なM&Aの増加で、証券会社にとって成長分野でもある。中でも野村は大型案件を相次いで手がけ、国内他社をリードしている。
中央大の野村修也教授(会社法)は「企業の内部情報が集中し、本来なら最も不正を防がなければいけない部署での不正で、証券業界全体が受けたダメージは大きい」と指摘する。
野村証券の親会社である野村ホールディングス株の22日の終値は、前日比66円(3・87%)安の1639円となった。証券各社の株価も軒並み大幅に値下がりした。
◆経営責任
渡部社長(野村ホールディングス社長を兼務)は4月1日に就任したばかりだ。さっそく重い課題を背負うことになった。
野村は1991年に損失補てん問題、97年には総会屋への利益供与事件を起こし、いずれもトップが引責辞任した。
その後、野村証券は法令順守を看板に掲げてきた。しかし、築いてきた信頼は崩れ去った。今回も、経営陣の責任を追及する声が高まる可能性は十分にある。
渡部社長は記者会見で、経営責任について「事実関係の確認を待って考えたい」と答えるにとどめた。今後、どのように責任を明確にしていくのか、市場は注視している。(2008年4月23日 読売新聞)
子どもの安全はこうして守る!清永 賢二,村上 信夫,宮田 美恵子グラフ社このアイテムの詳細を見る |
http://blog.livedoor.jp/kinnyuutanntei
加藤精一は、金融庁オフサイト検査中に死去。加藤哲夫は、日本証券業協会の役職を辞任、岡三証券グループの副会長から会長への昇格を3年間、見送り自粛する必要が生じた。