Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.295:カーネギーメロン大学のENHANCING EDUCATION サイト

2009年03月22日 | 海外情報
先日知り合いに教えていただいた大変有益なサイトをご紹介します。カーネギーメロン大学のEberly Center for Teaching Excellence がまとめた”ENHANCING EDUCATION ”という大学教員用のFDのサイトです。
http://www.cmu.edu/teaching/principles/index.html

学習やインストラクションの原理原則から、テクノロジーを使った教育のTipsまで,幅広い情報が掲載されています。今回ご紹介するカーネギーメロンのサイトの中では"Slove a Teaching Problem"というコーナーが出色の出来映えとなっています。

秀逸なのはサイトの構造が
「問題の特定化」→「想定される原因の特定」→「解決のための方策」
というリンク構造になっている点です。

日本では名古屋大学の「成長するチップス先生」が有名ですが、こちらは
「問題」→「解決策」
という構造となっています。


カーネギーメロン大学の方が回りくどいと言えばそれまでなのですが、表面的な問題に翻弄されるのでなく、その奥にある真因をきちんと把握した上で解決策を考えるという点では有効と言えます。

さて、前口上はこのぐらいにしてちょっとサイト中身を覗いてみましょう。といっても英語だけだとかなり辛いので、筆者なりに下手な翻訳に挑戦してみましたので、Webサイトと比較しながらお読みいただければ幸いです。

◆◆Step 1: Identify a PROBLEM◆◆
「あなたの状況に最もマッチした問題を選択してください」という説明文の後、下記の一覧が示されています。

* 討議に参加しない学生がいる
* 文献購読についてこれない学生がいる
* 授業の出席率が悪い
* 遅刻する学生がいる
* 受講態度が悪い学生がいる
* (レポート等を)書くことが苦手な学生がいる
* 今まで習ったことを応用することができない学生がいる
* 研究の方法論について知らない学生がいる
* グループでのプロジェクトがうまく回らない
* テストでカンニングする学生がいる
* 学生達の知識やスキルに関するバックグラウンドが様々である
* 学生のテストの成績が悪い
* 助言が必要な時であってもそれを求めようとしない学生がいる
* 成績に文句を言う学生がいる

そして、上記を項目別に分類した一覧が次に表示されています。(こちらだけで良いのでは・・・と筆者は考えますが)なお(追加)マークの付いた項目については、翌年Step2と3を作成予定とのことです。

▼態度や動機づけに関連した問題
* 遅刻する学生がいる
* クリティカルに考える事ができない学生がいる(追加)
* 興味関心や動機に欠ける学生がいる(追加)
* 学生のテストの成績が悪い
* 助けが必要な時であってもそれを求めようとしない学生がいる
* 受講態度が悪い学生がいる
* 討議に参加しない学生がいる
* 今まで習ったことを応用することができない学生がいる
* 授業の出席率が悪い
* 文献購読についてこれない学生がいる

▼前提知識や授業準備に関連した問題
* 学生達の知識やスキルに関するバックグラウンドが様々である
* クリティカルに考える事ができない学生がいる(追加)
* 興味関心や動機に欠ける学生がいる(追加)
* 研究の方法論について知らない学生がいる
* グループプロジェクトがうまく回らない
* 今まで習ったことを応用することができない学生がいる
* (レポート等を)書くことが苦手な学生がいる
* 文献購読についてこれない学生がいる

▼クリティカルシンキングと知識の応用に関連した問題
* 学生達の知識やスキルに関するバックグラウンドが様々である
* クリティカルに考える事ができない学生がいる(追加)
* 研究の方法論について知らない学生がいる
* 今まで習ったことを応用することができない学生がいる
* (レポート等を)書くことが苦手な学生がいる

▼集団スキル & ダイナミクスに関連した問題
* グループでのプロジェクトがうまく回らない

▼教室内でのふるまい&エチケットに関連した問題
* 授業への貢献度が低い学生がいる
* 遅刻する学生がいる
* 受講態度が悪い学生がいる
* グループでのプロジェクトがうまく回らない
* ある学生のふるまいが、他の学生に不快感を与えている
* テストでカンニングする学生がいる

▼成績評価やテストに関連した問題
* テストは不公平だと文句を言う学生がいる。
* 成績自体に不満を漏らす学生がいる。
* 語学スキルの貧困さから、罪悪感を感じている留学生がいる
* 試験では満足のいく結果がでない
* テストでカンニングする学生がいる

【筆者のコメント】
天下のカーネギーメロン大学であっても、「遅刻する学生がいる」等筆者のいる日本の三流大学と同じような悩みを抱えているのだなあとちょっとびっくりしました。

◆◆Step 2: Identify possible reasons ◆◆
上記の問題をクリックすると、各問題ごとに用意されたそれらの原因の一覧が示されるページに遷移します。例えば、「討議に参加しない学生がいる」という問題をクリックすると、「最も効果的な教授戦略を探すために、あなたの置かれた状況に合致した原因を選択しましょう。複数の関連した原因があることを心にとめておいて下さいね。」という一文の後に、下記の一覧が示されます。

「討議に参加しない学生がいる」の原因は

* 学生が宿題をきちんとやってきていない
* 学生は読書内容の授業と関連性のある側面に焦点を当てることができない
* 学生の個性や性格が参加を妨げているのかもしれない
* 学生の文化的価値観や規範が参加を妨げているのかもしれない
* 学生は今まで討議に参加した経験を持っていないのかもしれない
* 学生は討議参加に関しての一般的な背景知識がないのかもしれない
* 学生は授業に遅刻してきてた
* インストラクターがディスカッションの目標を明確に話していなかった。
構造をきちんと定義していなかった。あるいは定義された構造の中できち
んと討議のプロセスをきちんと管理していなかった
* 知的環境が参加の妨げになった
* 物理的環境が討議の妨げになった

【筆者のコメント】
原因と思われる事が網羅されていますね。ただし「学生が宿題をきちんとやってきていない」と「学生は読書内容の授業と関連性のある側面に焦点を当てることができない」については、「討議に参加しない」の原因としてやや違和感を感じるかもしれません。アメリカの大学の場合、授業の予習が大変厳しく、授業前に宿題として1~2冊本を読み、それを元に授業でディスカッションするのが当たり前のようなので、このような原因が真っ先にあげられているものと筆者は推測しています。

◆◆Step 3: Explore potential strategies. ◆◆
さらに、各原因をクリックすると上記の原因を解決するため上で役立つ可能性のある方法が示されます。例えば「知的環境が参加の妨げになった」をクリックすると

* (学生からの)適切でない情報を巧みに修正してあげよう
* (討議で発言することが)意味のある貢献であることを示してあげよう
* 反対意見を奨励しよう
* 学生の参加を褒めてあげよう
* 学生を名前で呼ぼう
* 参画に対しての一般原則を明確にしよう

といった一覧が表示され、それぞれについて解説が示されます。例えば
「(討議で発言することが)意味のある貢献であることを示してあげよう」
に対しては、
『学生のコメントや参加のメリットをクラスの中で知らしめてあげることで、学生達は、「聞いてくれているんだ」「発言した甲斐があった」と感じるようになります。例えば、「すばらしい意見だね」「鋭い点をついたねえ」といったコメントは、少しの手間で絶大な効果を発揮します。』といった具合です。

◆◆まとめ◆◆
FD講演会だけやって「FDやってます」という多くの日本の大学と異なり、カーネギーメロン大学では、学習やテクノロジーに関する高度な知識を兼ね備えたスタッフからなる組織"Eberly Center for Teaching Excellence"を作り、こうしたコンテンツを公開している点が凄いです。実は筆者も昨年から教育開発研究所という大学の附置研究所に所属しているのですが、普段の授業等が忙しく、とてもそちらの仕事に関われていないのが実情です。

「カーネギーメロンのセンターは、専任のスタッフだからこれだけの事ができるのだろう」と勝手に推測し、Webサイトを調べてみると、センターのスタッフは全員クラスを担当して教えていることが判明しました。忙しいという言い訳すらできそうにありません。とりあえず、GWぐらいまでにこの"Slove aTeaching Problem"だけでも、自分の勉強のために翻訳してみたいと思います。

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