Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.485:『しつもんマーケティング』マツダミヒロ 著

2013年08月18日 | eラーニングに関係ないかもしれない1冊


『しつもんマーケティング』マツダミヒロ 著
(角川フォレスタ刊 2013年)
四半世紀前に受けた教職課程の中で、唯一記憶に残っている授業技術は「授
業準備とは、質問を作ること」です。吟味された質問を発し、それに対して
考え、記述し、語り合うことが授業の本質だ、と。これにより教員の頭の中
にある知識のコマ切れを生徒の頭の中に注ぎ落とすスタイルより、はるかに
豊かな学びになるという主張です。しかし、その授業でも、そして課程のど
の授業でも、質問の作り方を教わった記憶は残っていません。

本書の著者、マツダ氏は「質問家」であり、質問を手札とした「魔法の質問」
という活動を通じて、学校や幼児教育の自己成長を促すインストラクターを
育て、全国展開しています。これまでは主に教育シーンでの活用でしたが、
本書ではビジネスシーンを対象にしています。

ビジネスとは、Aさん(自分)が当たり前に持っているものを、Bさん(他者)
が価値があると思ったときに生まれます。その一例。南国のほぼ無人島
「ジープ島」に都会からわんさか観光客が訪れます。この不便極まりない島
の人気に現地の人は首をかしげます。つまり、現地の人(A)が生まれた瞬
間から持っている「不便だが豊かな自然」を、都心の人(B)が価値がある
と思った故、お金を払ってやってくる=ビジネス成立、というわけです。

ここで最初の質問、「自分の持っているものはなんだろう」が発せられます
(その答えをCとします)。そして次の質問、「自分がターゲットとしてい
る人のニーズは何だろう」(答=D)です。C=Dならばビジネスは成立し
まずが、問題はC≠Dの時です。この場合は、「お客さんを変える」あるい
は「自分ができる他のことを探す」ことになります。これらはすべて自問自
答のプロセスです。このような質問プロセスが綿密に記述されているのがこ
の1冊です。

さてここまでで既に「これはコーチングの一種ではないか?」とお思いの方
もいらっしゃることと思います。はい。これはコーチングの一種と私も思い
ます。

本書には「あなたのファンが1000人に増える5ステップ」というサブタイト
ルがついています。ファンとは、「どんな時にも自分を応援してくれる人」
をさします。ビジネスにおいてその構成要素は、

1)既存顧客
2)未来のお客様(見込客)
3)サポートしてくれる仲間

とマツダ氏は説きます。これを1000人にすればビジネスは成り立つはず、と
いうわけです。マツダ氏は、このファンを作るために「先に自分から与えよ」
と言います。この聖書の言い伝えのような心がまえの実現を促すために、
自分がワクワクする未来を具体的に描くことを勧め、その「質問」の方法を
伝授します。

そして、それに共鳴した「ファン」によるネットワークが構築され、「質問
を作りあう」という相互支援をしていきます。これが、1対1をベースとし
たコーチングとの大きな違いであり、これまで教えてもらうことになかった
「質問の作り方」の力量につながります。

マツダ氏は、自分のノウハウを惜しみなく、時に無料でさらけだし、そして
この種のモデルにありがちな法外なロイヤリティをとりません。この、「ま
ず自分が出来る範囲の利他」で成功する姿勢は、マツダ氏自身のビジネスで
の成功を通じて大きな説得力を持ちます。これらが、氏の「技術を超えた卓
越性」の本質と思うのです
<文責 シバタ>。

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