大垣山岳協会

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山中雑記 伝説の蝙蝠穴に入る

2016-07-18 | 山中雑記

中雑記 伝説の蝙蝠穴に入る

膝をついて体がやっと通れる狭い岩穴を四つん這いで進んだ。水平に延びる暗闇の先をライトの光が照らす。10mほど先に幅5mほどの空地に達した。朱砂鉱の玄関口だった。

この5月末、旧徳山村入谷(にゅうだに・現揖斐川町)の蝙蝠穴に、門入の旧住民の泉末廣さんの案内で入った時のことだ。蝙蝠穴は古代からの朱砂(水銀)鉱石採取の跡だとする説話が残り、実際に穴の土から高濃度の水銀が検出されている。また、1980年から約20年間、若森孝基という鉱山業者が家族ぐるみでこの穴を中心に採掘を続けたが、有効な鉱脈を発見できずに廃業した。一方、古い鉱山の歴史は闇の中。どんな種類の鉱石がどれくらい出たのか、いつ頃誰が、いつまで掘ったか、文献史料は皆無だ。

 泉さんの「門入おこし協力隊」の第3回目の現地探索ツアー。計8人で入谷・蔵ケ谷分岐の草原に着く。倒壊した家屋の残がいがあった。若森さん一家が寝泊まりして採鉱を続けた小屋だ。ここから急な尾根を30mほど上がり小さな沢に蝙蝠穴の入口が見えた。

前記の玄関口から幅の狭い曲がりくねった坑道を下ると天井の高い地に出る。2mほど上に坑道の続きがある。進むには登攀具が必要で進めず引き返した。昔あった梯子は朽ち落ちたようだ。その先、坑道はさらに下方に延びているそうだ。

 蝙蝠穴には昔、大きな蝙蝠が乱舞していたという。だが、蝙蝠はもちろん生き物の気配は全くない。古い金網やロープなど若森さんの採掘の跡がわずかに見られたが、人の活動の名残は薄かった。幻の朱砂鉱山、蝙蝠穴に入り感じたことは、朱砂鉱を求めた人びとの気概だ。人里遠い山中の小屋に永く住み込み未知の目標を追い求め穴を掘り続ける。その探求心や冒険心は現代の登山者や探検者にも通じるのではないかと。

鈴木 正昭



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