海にたゆとう珊瑚的日々

書の事、愛する犬の事。平凡な毎日を楽しんで・・・

【文劇喫茶シリーズ 「それから」】千穐楽を見てきました。

2017-05-14 23:04:11 | 小平野生活
今、演劇業界はチケットが捌けなくて、なかなかに厳しいそうです。
一部、「完売し追加しても完売し補助席を出す」ような舞台もありますが
それはほんの一部で、殆どの演劇は‘不況’なんだとか。

そんな中、
ど真ん中ストレートプレイ・「夏目漱石 それから」3人芝居公演を敢行したCLIEさんって、スゴイ会社だなぁ~と思います。
もちろん、その期待に応えた平野良さん/今立進さん/帆風成海さんのキャスト陣にスタッフの方々も。

なにしろ原作を(未だに)読んでいませんから
全ての感想は、今日千穐楽を迎えた舞台での感想です。あしからず。



長井代助という人は、お金持ちの次男坊で‘(高等)遊民’だと、己の位置を十二分に理解している。

幕が上がってしばらくの代助は、ちょっと嫌らしいくらいにテンションが高い。
いまや家族を背負って現実社会を生きている友人・平岡常次郎に対しての口調など
その端々に、社会に出てあくせく働いている人々への侮蔑と同じ量の自分自身への侮蔑が感じられる。

初日に観劇した時にも、その点を面白いと思いました。
決して自分の今の生活・日々を良しとはしていない。のではないかと。

世間には「パンのために働くなどツマラナイことだ」とあらん限りの言葉の羅列で目くらましを喰らわす癖に
しかし、自分を養ってくれている父親や兄にはただの一言も言い返す言葉を持ち合わせてはいない。
それは、心の中に“卑屈”を抱え込んでいるからだろうと思われる。

そんな彼が、平岡の細君(しかもそれは自分が強く推しての結婚であった)三千代に数年ぶりに会い
かつての思慕・恋心を抑えきれなくなって行く。

その代助の、幕開けから中盤へと大きく変化していく心情がぐいぐいと迫ってくる。

三千代は、といえば
(私に言わせれば)決して純情清潔誠実一筋の人とは思えない。
手練手管、、、とは言わないが、
自分に不誠実な夫の愚痴をそれとなく漂わせ、かつて自分を“棄てた”代助への切れない思いをももち続けている。

この帆風さんの芝居が上手いっ
清潔なのに色気があって、清潔なのに汚れているのだ。
こんな女性(彼女はそれを意識していない)にかかれば、世間を狭く生きている代助などひとたまりもない。


そんな重い話が続くかと思えば、それはそうではなくて
平岡役の今立さんが、代助の義姉役でぶっとんだ芝居を見せるし
日替わりゲスト(千穐楽の今日は米原幸佑さん)が、重い芝居の中で‘エチュード劇’さながらのゲストシーンで笑わせる。

こんな深刻なシーンのあとでゲストコーナーがあって、
芝居はどうなるのかしら???と、心配しましたが、そこは平野良。全然何事もなかったように平然と芝居を続けていく。

うーーーん。。。さすが


しかし、この話は(原作もそうなのだろうが)終わりがないのだ。
「これはこうで、こうなって、こういう結末になりましたよ」とは語らない。
父親から勘当を言い渡されて、‘高等遊民’などとうそぶいていた自分の姿などいまはどこにもなくて
明日からの生きる糧を自分自身で稼ぎ出さなければならない。
愛する女・三千代は未だ平岡の元で生死の境をさまよっているのだ(と、代助は妄想している)

高潔な白百合を求めていた代助は、いまや毒々しくも生々しい真っ赤な椿にがんじがらめにされていく。

発狂するのか???? とも思わせられるラスト。断ち切られ、芝居は幕を閉じる。


これはこうで、ね。だから、こうなんだよ。と、答えを出してくれるアメリカ映画と違って
だから、こうなったでしょ。そうなった以上、あとはどうなったかなんて誰に判るの?と、突き放されるフランス映画の如。
(うーん ちょっと違うか)


平野良ファンの末席に位置するものとしては
まさにこういう芝居が観たかった!と言える舞台で、とても満足している。

脚本も演出も美術も、そして照明も好みだった。

ただ。。。。。。。言わせてもらえるならば

平野さんの足袋のサイズが合ってなかった
足袋は靴下とは違う。
ワンサイズ小さ目の物を穿くのだ。ちょっとキツメに感じるが、見た目がすっきりとして美しい。
残念ながら今回の衣装さんは、足袋の知識が足りなかったように思う。
指先も踵もブカブカしていて、和服の時代、それはあり得ないことなのだ。
6日マチネ。帆風さんの足袋のこはぜが外れていて、たまたまその時は最前列だったので、平野さんの足袋がブカブカなのと帆風さんの足袋のこはぜが外れているのが気になって気になって・・・

芝居の本筋と違う所に意識が行ってしまって、観劇していて我ながら勿体なかった。




電車の行き帰り。恩田陸の「夜の底は柔らかな幻」を読んでいる。
【それから】のグッズコーナーで買った栞を愛用中。
本来は1枚づつ外して使うのだが、勿体ない気がして4枚続いたままで使用。


この栞にはQコードが付いていて、平野さんが原作を朗読しているお声を4分間ほど聞くことが出来る。
いままでこういうグッズはなかったので、嬉しくて毎日聞いている。


私の幸せなんて、こんな簡単な事で構成されているのだ(笑)


【文劇喫茶シリーズ】
はたして次のお話しはどんな小説なのだろうか?
好みの話であったならば、平野さんご出演でなくとも見てみたいと思う。

シリーズ2が楽しみだ。
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