脚本:重森孝子
音楽:中村滋延
語り:藤田弓子
出 演
竹田 悠 加納みゆき:京都の繊維問屋「竹田屋」竹田家の三女
竹田 葵 松原千明 :竹田家の長女
竹田 桂 黒木 瞳 :竹田家の二女
忠七 渋谷天笑 :「竹田屋」の奉公人(番頭)
お康 未知やすえ:「竹田屋」の奉公人(悠付きの女中さん)
山岡 升 毅 :悠の婿養子候補。竹田屋にて仕込まれる
佐七 國村 準 :「竹田屋」の奉公人(番頭)、桂の夫になるか?
長吉 安尾正人 :「竹田屋」の奉公人
三吉 井上義之 :「竹田屋」の奉公人(丁稚)
松川 寺下貞信 :「竹田屋」の奉公人(別家支配人)
笹井 広岡善四郎:「竹田屋」の奉公人(別家)
お松 山田富久子:「竹田屋」の奉公人(ベテランの女中さん)
柴田 亀井賢二 :「竹田屋」の奉公人(別家)
仲人夫妻 国田栄弥 葵の婚儀の仲人
坂本和子 : 葵の婚儀の仲人
竹田 巴 宝生あやこ:三姉妹の祖母、静の母
竹田市左衛門 西山嘉孝 :「竹田屋」の主人、三姉妹の父(婿養子)
竹田 静 久我美子 :三姉妹の母、市左衛門の妻
・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★
9月、厳しい残暑の中、葵の結納の日を迎えた。
悠は、姉のことを思いつつ、自画像を描いていた。
葵は、駆け落ちの準備をしそれを押入に隠してから、
結納のために誂えてくれた着物に袖を通して、両親の所へ行く。
そぉっと立ち聞きをする桂(途中から悠と交代)
「やはりきれいやなー」と市左衛門
「お願いがあります」と切り出す葵
「道具や着物はいらんからお金を下さい」
「お前は世間をまだわかっていないが、持っていれば何かの役に立つんやで」
「なら結納のお金を下さい」とさらに葵。
「お国のために と教わってきたのに、何も役に立てずにやめるんです。
お金は学校に寄付します」と言う。
市左衛門は、ならお父ちゃんが手続きをすると言ったが
「学校のことはけじめは私につけさせてください」と頑な葵。
「お父ちゃんの強引さに負けたんですさかい、せめてそれだけはさして下さい
そうでなければ結納の席には出られまへん」
市左衛門は、そこまで言う葵の気持ちを汲み、結納金ではなく
まとまったお金を渡した。
しかし、市左衛門はお松に何か耳打ちして指示していた。
「ほっといていいんやろか」と桂、悠は何か考えがあるようだ。
ちょうど、そのころ学生服姿の山岡が竹田屋に到着し、
そして、葵の結納が無事、終了した。
巴おばあちゃまがかりんとう?を手にして悠の部屋に入ってくる。
「葵さんの結納、すんだようやな。でも本気やおへんな。
何かするたび大騒ぎする葵さんが静か過ぎる」
「おばあちゃんも、そう思う?」
葵は、着物を脱いでワンピースに着替え、
市左衛門から渡されたお金をハンドバックに入れて、風呂敷包みを抱え出て行く。
表で無邪気に「おはようお帰りやす~」と言う三吉に
「し~~~~~~~っ」と葵。
そして、悠も三吉に「し~~~~~~~っ」と言いながら、葵の後をつけていく。
帳場では、市左衛門が山岡を「山岡ススムだ」と紹介する。
丁稚たちは、ひそひそと
「あの人が、いずれ悠お嬢さまの‥」とか
「雲の上のお人になるんやなぁ」とか
「番頭はんがかわいそうや」とか、ウワサ話をする。
お松は、市左衛門に
「(学校側は)おやめになることも、お金のことも何も知りませんでした」
と、こっそり報告。
心配そうな市左衛門は、何が起きているのかわかったようだ。
駅に付いた葵は、待合室に兄弟子の岩谷を捜すが、やはり姿は見えなかった。
「うち、一人でも行ったるわ!」と決心を新たにする葵だったが
所詮はお嬢さま育ち、汽車の時間をきかれているうちに、
ハンドバックからお金を掏られてしまった。
茫然とする葵のところに「おねえちゃん」と、声をかける悠。
どこかの境内で「もうええ。」と葵
悠は「お姉ちゃんのこと、一番好きや」と言うしかなかった。
2人で帰り、悠は努めて明るく「お父ちゃん、ただいま帰りました」と挨拶する。
市左衛門も葵の姿と様子を見て、何があったかを察知したようだが
無事に戻って来たのに安心した様子。
その日から、婚礼の日まで葵は自分の感情を表に出すことはありませんでした
(と、語り)
そして、10月のその婚礼の日。
角隠しの葵は、とても美しい。
思いをかけたことに負けた時、女は素直になれるものです。
つっぱり続けることに疲れるのかも知れません。
そして新しい出発に新しい全てをかけることもできるのです(と、語り)
「悠、あんただけは思ったことをしなさい。まだ何でもできる」
と、葵は言って、お嫁入りしていった‥‥
(つづく)
音楽:中村滋延
語り:藤田弓子
出 演
竹田 悠 加納みゆき:京都の繊維問屋「竹田屋」竹田家の三女
竹田 葵 松原千明 :竹田家の長女
竹田 桂 黒木 瞳 :竹田家の二女
忠七 渋谷天笑 :「竹田屋」の奉公人(番頭)
お康 未知やすえ:「竹田屋」の奉公人(悠付きの女中さん)
山岡 升 毅 :悠の婿養子候補。竹田屋にて仕込まれる
佐七 國村 準 :「竹田屋」の奉公人(番頭)、桂の夫になるか?
長吉 安尾正人 :「竹田屋」の奉公人
三吉 井上義之 :「竹田屋」の奉公人(丁稚)
松川 寺下貞信 :「竹田屋」の奉公人(別家支配人)
笹井 広岡善四郎:「竹田屋」の奉公人(別家)
お松 山田富久子:「竹田屋」の奉公人(ベテランの女中さん)
柴田 亀井賢二 :「竹田屋」の奉公人(別家)
仲人夫妻 国田栄弥 葵の婚儀の仲人
坂本和子 : 葵の婚儀の仲人
竹田 巴 宝生あやこ:三姉妹の祖母、静の母
竹田市左衛門 西山嘉孝 :「竹田屋」の主人、三姉妹の父(婿養子)
竹田 静 久我美子 :三姉妹の母、市左衛門の妻
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9月、厳しい残暑の中、葵の結納の日を迎えた。
悠は、姉のことを思いつつ、自画像を描いていた。
葵は、駆け落ちの準備をしそれを押入に隠してから、
結納のために誂えてくれた着物に袖を通して、両親の所へ行く。
そぉっと立ち聞きをする桂(途中から悠と交代)
「やはりきれいやなー」と市左衛門
「お願いがあります」と切り出す葵
「道具や着物はいらんからお金を下さい」
「お前は世間をまだわかっていないが、持っていれば何かの役に立つんやで」
「なら結納のお金を下さい」とさらに葵。
「お国のために と教わってきたのに、何も役に立てずにやめるんです。
お金は学校に寄付します」と言う。
市左衛門は、ならお父ちゃんが手続きをすると言ったが
「学校のことはけじめは私につけさせてください」と頑な葵。
「お父ちゃんの強引さに負けたんですさかい、せめてそれだけはさして下さい
そうでなければ結納の席には出られまへん」
市左衛門は、そこまで言う葵の気持ちを汲み、結納金ではなく
まとまったお金を渡した。
しかし、市左衛門はお松に何か耳打ちして指示していた。
「ほっといていいんやろか」と桂、悠は何か考えがあるようだ。
ちょうど、そのころ学生服姿の山岡が竹田屋に到着し、
そして、葵の結納が無事、終了した。
巴おばあちゃまがかりんとう?を手にして悠の部屋に入ってくる。
「葵さんの結納、すんだようやな。でも本気やおへんな。
何かするたび大騒ぎする葵さんが静か過ぎる」
「おばあちゃんも、そう思う?」
葵は、着物を脱いでワンピースに着替え、
市左衛門から渡されたお金をハンドバックに入れて、風呂敷包みを抱え出て行く。
表で無邪気に「おはようお帰りやす~」と言う三吉に
「し~~~~~~~っ」と葵。
そして、悠も三吉に「し~~~~~~~っ」と言いながら、葵の後をつけていく。
帳場では、市左衛門が山岡を「山岡ススムだ」と紹介する。
丁稚たちは、ひそひそと
「あの人が、いずれ悠お嬢さまの‥」とか
「雲の上のお人になるんやなぁ」とか
「番頭はんがかわいそうや」とか、ウワサ話をする。
お松は、市左衛門に
「(学校側は)おやめになることも、お金のことも何も知りませんでした」
と、こっそり報告。
心配そうな市左衛門は、何が起きているのかわかったようだ。
駅に付いた葵は、待合室に兄弟子の岩谷を捜すが、やはり姿は見えなかった。
「うち、一人でも行ったるわ!」と決心を新たにする葵だったが
所詮はお嬢さま育ち、汽車の時間をきかれているうちに、
ハンドバックからお金を掏られてしまった。
茫然とする葵のところに「おねえちゃん」と、声をかける悠。
どこかの境内で「もうええ。」と葵
悠は「お姉ちゃんのこと、一番好きや」と言うしかなかった。
2人で帰り、悠は努めて明るく「お父ちゃん、ただいま帰りました」と挨拶する。
市左衛門も葵の姿と様子を見て、何があったかを察知したようだが
無事に戻って来たのに安心した様子。
その日から、婚礼の日まで葵は自分の感情を表に出すことはありませんでした
(と、語り)
そして、10月のその婚礼の日。
角隠しの葵は、とても美しい。
思いをかけたことに負けた時、女は素直になれるものです。
つっぱり続けることに疲れるのかも知れません。
そして新しい出発に新しい全てをかけることもできるのです(と、語り)
「悠、あんただけは思ったことをしなさい。まだ何でもできる」
と、葵は言って、お嫁入りしていった‥‥
(つづく)