時戻素

昔の跡,やがてなくなる予定のもの,変化していくもの,自身の旅の跡など・・・

(297) 不正利用しない意思表示の動作

2010年04月03日 23時49分51秒 | 現在の中の過去
 この記事でも書いたように,数年前まではほとんど見かけなかった機械式の駐車場が最近ではどこそこにあふれるようになった。同じように,機械式の駐輪場も最近爆発的に増えてきたように思う。その機械にも色々なタイプがあり,たまにどう使えばいいのか説明版を読まないと分からない時もある。その機械のタイプをいくつか見ていく。

タイプ1

 ゲート式。ゲートを通過する際に入場時間の記入されたカードを受け取り,出場時にカードを挿入し,精算する。ロック版式の駐車場が大量発生する前の駐車場の方式に似ている。

タイプ2

 コインポスト式。新しく機械化された駐輪場ではあまり見かけないことから,仕組みとしては初期なのではないかと思う。名前の呼び方は「サイクルロック」「ポストロック」など場所によって違うこともある。料金を収集する箱についているチェーンを自転車のタイヤやカゴなどを通して,ポストの穴に差し込む。差し込んだ後は,料金を支払うまで穴から抜けないようにロックされる。そのため,ロックが解除されない限り自転車からチェーンが外れないようにつけることが,料金を確実に支払うという意思を示すことになる。案内板を読むと自転車からチェーンが外れないようにすることは,盗難を防ぐことや後から来た利用者に勝手に場所を入れ替えられるトラブルを防ぐためと書かれている。そういう面を強化したと思われる機械には・・・

 コインロッカーのように開錠用の鍵がついている場合もある。
 この仕組みは基本的にはそれぞれのポストに料金の挿入口がついていることが多い。しかし,料金が150円のような小銭を組み合わせないといけない金額の場合,100円玉と50円玉のように入れる小銭の種類を指定されている。さらに,お釣りが出ないだけなく,100円玉を2枚入れて50円余分に払ってもロックが外れないようになっているものもある。近くに両替機があることはほとんどなく,利用者にとってかなり融通の効かない仕組みになっている。逆に,使用料金を集める側にしても,全てのポストから料金を回収しなければならずかなり手間がかかる。そのためか,同じような機械を使っていても・・・

 個々のポストに精算機能をつけずに,別の場所に精算機を設置する例もあった。このような精算機の場合,つり銭が出る場合が多く,利用者にとっても料金を払いやすいし,設置者側も全てのポストから料金を回収する必要はなく,手間が減るだろう。

パターン3

 機械式の駐輪場では一番よく見かけるタイプのように思う。ラックに自転車の前輪を入れると,タイヤが奥のボタンを押す。すると・・・

 手前の方からツメが出てきてタイヤがラックから抜けなくなる。精算機で精算を済ませることでツメにかかっていたロックが解除され,車輪を持ち上げるとツメガ引っ込むようになっている。ただし,爪を出すためのボタンは前輪を奥まで押し込まないと出てこない場合もあるので,その旨の掲示がされている場合がある。たまに,駐輪場のスタッフがラックにしっかりセットされていない自転車を奥まで押し込んでいる光景も見られる。その対策かラックのタイヤを入れる部分の溝に傾斜をつけている機械もある。

パターン4

 パターン3と並んでよく見られるタイプ。仕組みは基本的に同じなのだが,パターン3が
奥にあるボタンを押すことでタイヤがロックされるのに対して,こちらはラックにタイヤを入れるとタイヤの重みで床が下がり,それと同時に横からツメが出てくる仕組みになっている。こちらの仕組みの場合,装置にランプがついていて,点いている時は利用可能,点滅している時は,ロックがかかるのを待っている状態か精算後にロックが解除されている状態,消えている時はつめにロックがかかり,自転車を取り出せない状態であることを示していることが多い。
 夜にこのタイプの機械を見ると…

 ランプの存在がよく分かる。消費電力は小さいのだろうが,電気の無駄に思えないこともない。

 自転車と同じく2輪ではあるが,車輪の幅も大きくなり,本体もかなり重くなるバイクの場合は少し機械が異なる場合もある。



 このタイプは自転車の2とほとんど同じ仕組みだが,鎖などが頑丈になっていることが多い。車輪が大きく,重さもあるバイクにはラック式は向かないためか大概がこの仕組みになっている。
 
 あまり多くは見かけないが,バイク用にはこんな装置もあった。

 車と同じタイプのロック版。バイクが持ち上げられないという前提があるのだろう。


 枠に入れてしばらくすると入口をバーがふさぐタイプ。これもバイクが重いためにできる仕組みだろう。


 はじめ,このバイクを停める枠を見たときは使い方がさっぱり分からなかった。
 説明版を見てようやくその仕組みが分かった。

 隣のブロックのワイヤのついているところに差し込むという発想が思いつかなかった。


 これらすべての仕組みに共通しているのは,自転車やバイクをロックするのは利用者自身である点だ。前に書いた部分と重なるが,ロックをすることの意味は,駐輪場のこの案内板
から読み取ることができるように思う。

 盗難防止だ。ただ,単に自転車が停めてあるに比べるとロックを解除する手間が入る分,盗む側の手間も増える。さらに,ロックを解除するのに暗証番号を設定できる機械もあるため,盗難防止にもこれらの装置は役立っていそうだ。しかし,その一方で,装置とは別に自転車にも鍵をかけるように注意書きがされている。暗証番号設定をしない場合,精算を済ませれば自転車をとれるので当然のことだ。だが,十分な盗難防止機能を装置が果たしていないことも示している。自転車をロックすることには他の目的があることになる。それは,駐輪場に案内には書かれていないが,「料金を確実に回収すること」に間違いはないだろう。他の目的というよりも,こちらの方が最大の目的ではないだろうか。「料金の確実な回収」は設置者側の利益である。その利益を生むために必要な「自転車(バイク)を装置にロックする」行為は,利益を受ける設置者側ではなく,利用者側が行う行為だ。利用者にとっても「公正に後で料金を払うこと」を示すことになるかもしれないが,基本的には他人の利益のために自転車をロックする手間が生じていることになる。そうはいっても,他人の土地を使わせてもらっているのだから,当然といえば当然だろう。
 
 機械式駐輪場を利用することもだいぶ増えてきた。というよりも,使わざるを得ない状況になっている。そういう状況にありながらも,時折機械式駐輪場を利用することに抵抗を感じるときがある。何もない駐輪場と比べ,料金支払いのための手続きが煩わしいこともその原因の一つだろう。でも,もっと他にも理由があるような気がしていた。
 色々考えてみると「ロック」という言葉が引っかかった。個人差はあるだろうが,個人的にはマイナスイメージの強い言葉だ。途中の過程は個々では省くが,最終的に「人が人を信じていない」ことにつながるように思う。
 これと合わせてロックをする装置の仕組みも,動物を捕まえる時のワナの仕組みと酷似しているように感じる。えさにつられた動物がそれを取ろうとした瞬間に,手足を金具などで固定されてしまうようなワナだ。(ちゃんとした手続きをとれば解除されるとはいえ)自分の持ち物がロックされて取れなくなるという状態にも何らかの抵抗を感じているのではないかと思う。

 以上で書いたことは自分で書いても考えすぎだと思うぐらい,変な思考だと思う。駐輪場の利用状況を見る限り,ほとんどの人が抵抗なく使っているのだろう。しかし,機械式駐輪場が空いているにも関わらず(しかも,3時間の無料時間が設定され,無料時間内は精算手続きが不要で自転車をラックから引き抜くだけでいい場合でも),装置のない部分にたくさんの自転車が停められている状況も見られ,機械に対して何らかの抵抗がある表れでないかとも思う。
 機械式駐輪場の登場により,人件費が抑えられ,料金が安くなったり,短時間の利用に対しては無料時間が設けられたりという恩恵も受けている。ごく自然な景色となった機械式の自転車駐輪場はこれからどう進化していくのだろうか。

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