6−5(また、やりたいね!)
ハテナが巣穴の前に戻ってくると、大きな枯れ草のボールが穴をふさいでいて、それを押し出すようにしてドンドが出てきました。
「どこに行ってたんだよぉ!」
ドンドはハテナを見るなり、口をとがらせました。ハテナは、ドンドがかかえている枯れ草のボールに目をやって言います。
「すごい! ずいぶん上手になったね」
「だろ? おれ、呑みこみいいし、働きもんだし」
ドンドが得意そうに答えて、ハテナもその通りだと思いましたが、タヌキのおじさんが言っていたことを、つい口にしてしまいます。
「子どもは遊んだ方がいいんだって」
「そんなこと、だれが言った?」
「えーと、だれだっけな…」
ハテナはしらばっくれて話を続けます。
「大人になると、やらなくちゃならないことがたくさんあるから、子どものうちに、うんと遊んどいた方がいいって。じゃないと、タヌ」
言いかけてハテナは言い直しました。
「じゃないと、変な大人になるんだって」
「ほんとか!」
深刻な顔をして答えたドンドは、かかえていた枯れ草のボールを放り出すと、いきなりハテナに飛びかかりました。
「おっし! 遊ぼうぜ」
「ま、待ってよ、急に…」
逃げごしになりながらも、ハテナはドンドの攻撃をかわして、ドンドのシッポにかみつきました。
「お、やるじゃん!」
ドンドはそれをふりはらって、ハテナに体当たりします。倒れたハテナにドンドは飛びついて、ハテナとドンドは取っ組み合ったまま転がっていきました。
じゃれあいが真剣勝負になって、取っ組み合いを続けていると、ぽつぽつと雨粒が落ちてきました。でも、ハテナもドンドも手をゆるめません。相手のすきを見ては攻撃をしかけます。そうしているうちに、木々がざわざわと鳴りだし、あたりがみるみる暗くなって、遠くで雷がとどろき始めました。それでも、ハテナもドンドも一歩もゆずろうとしません。
雷鳴とともに走った稲妻に、空が切り裂かれたように、一気に雨が落ちてきました。ハテナもドンドも一瞬のうちにずぶ濡れです。でも、ここまできたら、もうどちらも意地でも退けません。
雨足が跳ね返る地面の上を、取っ組み合ったまま転げ回っていると、みるみる体中が泥にまみれていきます。ずぶ濡れで泥んこで、息はハァハァしましたが、ハテナもドンドも、お腹の底からむくむく楽しい気分がこみあげてくるのを感じました。クフフ… とハテナは鼻を鳴らしました。グフフ… とドンドも鼻を鳴らしました。その時です。
「なにしてるの! あんたたち」
母さんの声が雷のようにとどろきました。母さんの声には、ハテナもドンドも体がたちまち反応してしまいます。すぐに立ち上がってそっちを見ました。激しく降る雨の向こう、母さんが巣穴から顔だけ出してこっちを見ています。雨のせいで顔つきはわかりませんが、ものすごく怒ってるにきまってます。立ちつくしているハテナとドンドに打ちつける雨が、体の泥を落としていきます。
「早く中に入りなさい!」
おずおずと巣穴の前まで戻って、ハテナとドンドは、体についた泥水をぶるぶるっと振り落としました。
「ごめんなさい…」
小さくつぶやいて穴にもぐりこみましたが、しばらく母さんはお説教を続けていました。ハテナとドンドは、濡れた足をなめながら、じっとそれを聞いていました。
「わかった? もう、こんなばかなまねはしないでね」
そう言い残して母さんが行ってしまうと、ハテナとドンドは、ほっとして顔を見合わせました。そして、同時に言いました。
「また、やりたいね!」
ハテナは、タヌキのおじさんに報告したい気分でした。母さんに叱られる遊びをしたよって。
おじさん、これからどこに住むのかな… そう思って穴の外に目をやると、夕立は、あっというまに上がって、また日がさしはじめていました。ヤブツバキの葉が、さっぱりと汗を流したように、つやつや光っています。
… あなぐま三兄弟6部終わり …
ハテナが巣穴の前に戻ってくると、大きな枯れ草のボールが穴をふさいでいて、それを押し出すようにしてドンドが出てきました。
「どこに行ってたんだよぉ!」
ドンドはハテナを見るなり、口をとがらせました。ハテナは、ドンドがかかえている枯れ草のボールに目をやって言います。
「すごい! ずいぶん上手になったね」
「だろ? おれ、呑みこみいいし、働きもんだし」
ドンドが得意そうに答えて、ハテナもその通りだと思いましたが、タヌキのおじさんが言っていたことを、つい口にしてしまいます。
「子どもは遊んだ方がいいんだって」
「そんなこと、だれが言った?」
「えーと、だれだっけな…」
ハテナはしらばっくれて話を続けます。
「大人になると、やらなくちゃならないことがたくさんあるから、子どものうちに、うんと遊んどいた方がいいって。じゃないと、タヌ」
言いかけてハテナは言い直しました。
「じゃないと、変な大人になるんだって」
「ほんとか!」
深刻な顔をして答えたドンドは、かかえていた枯れ草のボールを放り出すと、いきなりハテナに飛びかかりました。
「おっし! 遊ぼうぜ」
「ま、待ってよ、急に…」
逃げごしになりながらも、ハテナはドンドの攻撃をかわして、ドンドのシッポにかみつきました。
「お、やるじゃん!」
ドンドはそれをふりはらって、ハテナに体当たりします。倒れたハテナにドンドは飛びついて、ハテナとドンドは取っ組み合ったまま転がっていきました。
じゃれあいが真剣勝負になって、取っ組み合いを続けていると、ぽつぽつと雨粒が落ちてきました。でも、ハテナもドンドも手をゆるめません。相手のすきを見ては攻撃をしかけます。そうしているうちに、木々がざわざわと鳴りだし、あたりがみるみる暗くなって、遠くで雷がとどろき始めました。それでも、ハテナもドンドも一歩もゆずろうとしません。
雷鳴とともに走った稲妻に、空が切り裂かれたように、一気に雨が落ちてきました。ハテナもドンドも一瞬のうちにずぶ濡れです。でも、ここまできたら、もうどちらも意地でも退けません。
雨足が跳ね返る地面の上を、取っ組み合ったまま転げ回っていると、みるみる体中が泥にまみれていきます。ずぶ濡れで泥んこで、息はハァハァしましたが、ハテナもドンドも、お腹の底からむくむく楽しい気分がこみあげてくるのを感じました。クフフ… とハテナは鼻を鳴らしました。グフフ… とドンドも鼻を鳴らしました。その時です。
「なにしてるの! あんたたち」
母さんの声が雷のようにとどろきました。母さんの声には、ハテナもドンドも体がたちまち反応してしまいます。すぐに立ち上がってそっちを見ました。激しく降る雨の向こう、母さんが巣穴から顔だけ出してこっちを見ています。雨のせいで顔つきはわかりませんが、ものすごく怒ってるにきまってます。立ちつくしているハテナとドンドに打ちつける雨が、体の泥を落としていきます。
「早く中に入りなさい!」
おずおずと巣穴の前まで戻って、ハテナとドンドは、体についた泥水をぶるぶるっと振り落としました。
「ごめんなさい…」
小さくつぶやいて穴にもぐりこみましたが、しばらく母さんはお説教を続けていました。ハテナとドンドは、濡れた足をなめながら、じっとそれを聞いていました。
「わかった? もう、こんなばかなまねはしないでね」
そう言い残して母さんが行ってしまうと、ハテナとドンドは、ほっとして顔を見合わせました。そして、同時に言いました。
「また、やりたいね!」
ハテナは、タヌキのおじさんに報告したい気分でした。母さんに叱られる遊びをしたよって。
おじさん、これからどこに住むのかな… そう思って穴の外に目をやると、夕立は、あっというまに上がって、また日がさしはじめていました。ヤブツバキの葉が、さっぱりと汗を流したように、つやつや光っています。
… あなぐま三兄弟6部終わり …









