試してみよう!! からだの初期化

健康の維持・増進を図るための偏りのない、理想的な運動法を素人なりに考えていきます。

からだの初期化を試みよう 44 アローン操体法  あとがき

2016-08-23 17:45:46 | 健康
§ からだの「初期化」って?

からだの「初期化」についての第1回目(2015-03-27)の項で、次のように述べました。

『なんら難しいことを論ずる意図はありません。何だか疲れが残っているかな?、けったるい感じがするなあ、からだが重い、頭がボーッとしている….等々の自覚症状が、すっきり無くなり、からだの隅々まで改まった感じとなること、すなはち、次の活動へスムースに入っていける状態となること、これを仰々しく「初期化」と一言で表現したいのです。』

今日でもその定義は生きています。非科学的な表現ではあるが、最も的確であるように思われる。自ら体験して、“感じて”もらう以外、十分な説得力ある説明はなさそうです。

§ 「アローン操体法」の誕生

20数年前、不用意な運動で腰を痛め、不健康な状態を経験した。

司馬遼太郎の幕末歴史世界で大活躍する坂本龍馬(司馬世界では‘竜馬’)の、代表的な立位写真を想像して頂きたい。龍馬は、左腰に傷害があったのか、上半身が右前に傾いています。筆者は真逆で、右腰後方に傷害を得て、上半身が左前に傾いた姿勢でした。

立位で背筋を伸ばす、または上半身を右にひねるなどの姿勢変化で、ひどい痛みを起こす。通勤電車で、吊革にぶら下がっていながら、姿勢を直にしようとして、激痛を覚え、失神の一歩手前で、しばらく座り込んだ経験もある。ましてや右側への側屈は不可能であった。さらに右脚の上・下腿の皮膚に軽い鈍麻感を覚えた。

2,3年は整形外科で治療を受けた。以後、美容上また運動性向上の観点から、積極的に自ら訓練することにし、からだを動かすことを毎日の日課とした。先ず、痛みに堪えつつ、ゆっくりと“背伸び”から始めた。体調を見ながら、屈伸など姿勢を変える運動項目を増やし、訓練時間も長くしていった。

大通りに面したビルの大型ウインドウに映った自分の立ち姿が、一見、正しい直立姿勢に見えるようになったのは、訓練を始めて8年前後過ぎた頃であった。やっと美容上の難点を克服できたのでした。右脚皮膚の鈍麻感がなくなるのはもっと後のことであった。

上半身の右側への側屈やひねりは、可動範囲がかなり改善されたとは言え、やはり激痛を覚えた。ほとんど違和感なく、上半身の側屈、ひねりおよび回旋ができるようになるには、さらに10年前後の訓練期間を要した。

姿勢を正す訓練として、“背伸び”から始めて、徐々に運動項目を増やしていき、それらを整理して出来上がったのが、「アローン操体法」です。『何ら道具を用いることなく、どこでも、いつでも一人(アローン:alone)で実施できること、さらに自ら“身体をあやつる”要素が多い運動法である』との意味を込めて“操体法”とした。

単なる机上のプランとして出来たのではありません。強調したいのは、腰の痛みに耐えながら、痛みを減らし、姿勢を整えられるよう願いつつ、日々の実践を通して、工夫の末に出来上がった運動法であることです。

“背伸び”から始まる、20年を超す訓練を通して、痛みを消し、姿勢を正すことに成功した経験から、“背伸び”の動作に非常な‘こだわり’を感ずるようになった。“余話”の項で、“背伸び”について、特に多く記しましたが、その真意をくみ取って頂けることを願う次第です。なお、事項に述べる実践教室では、最後に“背伸び”をして健康運動の時間を閉じることにしています。

§ 「アローン操体法」の実践

地域活動の一つとして、「アローン操体クラブ」と称する「アローン操体法」を実践する健康体操教室(毎週1回、1時間)を実施している。『からだの「初期化」』を実感して欲しいとの願いを込めつつ進めています。幸い、14年経過して盛況を維持しています(我田引水)。

教室での実践を通して経験を重ね、新しい項目の追加やより良い操体法の工夫などを含めて、完成した形が『からだの初期化を試みよう』として、本ブログで2015.06.04から書き起こした“実際”編です。

「アローン操体法」の実践を日課としている経験から、“からだの初期化”を最もよく実感できる場面は次の様である。

激しい運動、あるいは家事やその他の年末大掃除のような不慣れな重労働(?)を行った後、特に翌日以降、足や身体が重たい、体の節々・筋肉の痛み、何をするにも気が乗らない、…等々。誰しも歳とともに、強い疲労感を感じ、回復が遅くなるという経験がある筈です。

激しい運動・重労働の翌日、仕事を始める前に「アローン操体法」を実践する。‘硬い’からだが‘軽く’感じられて、スムースに仕事に取り掛かれるようになる。まさに「初期化」の感覚が実感できます。疲労感からの回復も促進されます。

また、終日、PCと睨めっこする、あるいは、書き物に没頭するなどのデスクワークで暮れたその日。夕方以降に、やはり足や身体が重たい、けったるい気分、肩が凝っている感じ、…等々。

終日没頭したデスクワークの終わりに「アローン操体法」または静的ストレッチング(「アローン操体法」第一部)を実践する。できることなら仕事の途中、休憩時間を設けることをお勧めしますが、その際に軽く静的ストレッチングを実践する。やはり「初期化」の感覚が実感できるでしょう。

「アローン操体法」を実践することにより、他の体操法と異なり、「からだの初期化」を実感できるのは何故か?

要点を挙げると、次の2点が挙げられるでしょうか:
☆1 手の指先から足のゆび先まで、身体の動きに関わるほとんどの筋群に対して、比較的選択的に静的・動的ストレッチングを課するよう工夫してある、
☆2 筋力、持久力、瞬発力および柔軟性の向上、さらに平衡感覚を養うなどバランスの取れた構成になっている。

下図は、☆2に関して「アローン操体法」(赤線)と「ラジオ体操第1(青線)」の相違を的確に示すレーダー図です。詳細は投稿済(2015.06.11)ブログご参照頂きたい。




要は、実践することに尽きます。「アローン操体法」の実践が、日常生活リズムの一部となることを願って‘あとがき‘とします。

”Exersise must be a way of life.” (運動が生活リズムの一部となるように)
(Rene Callier)

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からだの初期化を試みよう 43 アローン操体法 余話-3 運動と認知能-8

2016-08-02 11:17:15 | 認知能
これまで学習に関わる脳内での過程・動き(分子機構)について見てきました。いよいよこれらの動きに運動がどのように関わっていくのかを見ていきます。

本論に入る前に、初めて出る新用語について簡単に解説しておきます。

・IGF-1 (インスリン様成長因子):
筋肉が働くのに必要なエネルギーは、筋細胞内にブドウ糖を取り込んで代謝することにより供給されます。インスリンは、この細胞内へのウドウ糖取り込みを促進するホルモンです。IGF-1は、分子構造上およびその働きもインスリンに似ていて、ブドウ糖の細胞内取り込みを促進する働きをします。脳の唯一のエネルギー源は、ブドウ糖ですから、脳にとっても重要な物質です。肝臓で生成されて、血液中に出てきます。
・VEGF (血管内皮成長因子):
組織で虚血など酸素や栄養を必要とする環境変化が起こった時に生成される成長因子です。脳で新しく神経ネットワークが形成されると、血液の供給が必要となります。VEGFは、血管新生を促進し、新ニューロンへ酸素や栄養を供給するよう環境を整えます。
・FGF-2 (塩基性線維芽細胞成長因子):
繊維芽細胞ばかりでなく、神経細胞や血管内皮細胞などの成長を促す因子で、血管新生の促進や損傷の治癒に関与している。

これらの3因子は、いずれもポリペプチド性のホルモンの一種です。BDNF (脳由来神経栄養因子)と同様、ミツバチの仲間と考えてよく、運動と学習・記憶(認知能)との関わりで、BDNFと緊密な連携プレイをします。

・血液脳関門:
体組織の毛細血管と違って、脳や脊髄の毛細血管では、血管壁の内皮細胞同志の間で細胞膜が癒着していて細胞間に隙間がなく、血液と脳組織との間で自由に物質の交通ができないようになっています。また内皮細胞自身も、体組織の場合とは異なっていて、血液中の物質を細胞内に取り込む性質(’飲作用’と言われている)に制限があります。つまり脳内に物を取り込むに当たってかなり高い選択性を示し、細菌や有害物質が脳内に入り込まないよう、脳を保護する仕組みが備わっています。その性質は‘血液脳関門’と呼ばれています。
・長期増強:
ニューロン同志がつながっているシナプスでの信号伝達に関わる専門用語です。実験的にシナプス前のニューロンを数秒間高頻度で電気刺激すると、その後長時間にわたってシナプス後のニューロンの興奮性が高まる現象が見られます。シナプスの伝達効率が高まっているのです。特に学習・記憶と関連のある海馬でその傾向が強く、数週間以上も持続することから‘長期増強’と名付けられています。記憶形成に関わるシナプス機構の一つであろうとして、大きな研究テーマの一つとなっています。

本論に戻って、認知機能と運動の関りを示唆した最初の知見は、1990年前後に得られたカール・コットマン(当時、カリフォルニア大、アーヴィン校、脳老化・認知症研究所 所長)という研究者の次のような臨床知見です。

彼は、老後も健全な精神状態を維持している人に何か共通点はないかと、長期間にわたって調べました。その結果、認知機能の低下がもっとも少なかった人には、共通点として次の三つの要因が認められた。教育、自己効力感(ある行動や課題を達成できるという信念や自信)、そして運動でした。

その中で、前の二者はよしとして、運動が挙げられたのは意外なことであり、運動は、“何らかの形で脳に働きかけているのではないか”と、コットマンは興味をそそられた。

その頃、脳内でBDNFの発見がなされています。そこでコットマンは直ちに、マウスに回し車を用いた運動をさせて、脳内のBDNFを測定する実験を行っています。その結果、運動により脳内、特に海馬でBDNFが増加することが確認されたのです。

すなわち、学習のプロセスで重要な働きをする分子BDNFの脳内での生成が運動によって刺激されることを実験的に証明して、運動と認知機能が生物学的に結びついていることを明らかにしたわけです。以後、多くの研究がなされてきて、今日では運動と認知能の関りについて‘物質’の動きで説明できるようになってきました。

IGF-1、VEGFおよびFGF-2は、運動により血液中で高まることが明らかにされています。これらの因子は、血液脳関門を通過して脳内に達し、BDNFと協力して学習に関わる分子機構を活性化させることが、最近明らかになってきました。それらの連携プレイの模様は次のようです。

運動で増加したBDNFは、すでに詳細を述べてきたように、ニューロン・シナプスの形成を促進し、ネットワーク作りを進める。他の3因子は、次のようにBDNFの働きを側面から補佐していく。

IGF-1は、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖の神経細胞内への取り込みを促進して、細胞活動に必要なエネルギー産生を確保している。そればかりでなく、ニューロンを活性化して神経伝達物質の産生を刺激し、またBDNF受容体の生成を促して、ニューロンの結びつきを強くして、記憶を確実なものにしている。

新しくできたニューロン・ネットワークに酸素その他の栄養物質を送るには新しい血管が必要になります。そこでVEGFは毛細血管の新生を促し、栄養物供給を助けるようにする。さらに、血液脳関門の透過性を変えて、他の因子の脳内への供給を増しているのではないかとも考えられています。

FGF-2も、ニューロンや血管の新生を促す作用を持っています。さらに脳ではニューロンの長期増強に重要な働きをしていることも示唆されている。

以上、概略を述べましたが、運動という体性の物理的な動きが、いろいろな働きを持つミツバチの生成を促し、それらの連携によって、いかに学習、認知能の向上に関わっていくか、ブラックボックスの中身の一部がようやく解ってきたように思えます。

ところで、運動が学習向上に関わっていることは明らかになりました。しかし「運動する」こと、すなわち「頭がよくなる」ことを意味するのではなく、両者は別次元の話であることを忘れてはならないでしょう。この点、今一度原点に返って考えてみます。

運動に続いて、脳内では一連の分子機構が発動されてニューロンの新生、さらにシナプス形成が始まります。運動を何度も繰り返し行うことによりニューロン・シナプス形成はさらに進み、三次元の神経ネットワークが完成されます。この段階では、この神経ネットワークは、実施中の運動をスムースに行うための神経ネットワークと考えて良いでしょう。

運動後に学習を行うならば、運動で形成された神経ネットワークは、この学習にも利用されるということです。この原理は、シカゴのネーパーヴィル高校での、「0時限」運動に続く「一時限」での読解力向上の授業で実証されました。

「運動する」ことは、
・成長因子の生成を増すことによりニューロン・シナプス形成を促進する環境を整える、とともに、
・運動のための既存ネットワークの一部を利用することができるため、学習のための神経ネットワーク形成が容易となる。

すなわち、運動は、学習能力を高める素地を用意しているに過ぎないと考えるべきでしょう。

運動後にしばらく時間をおいて学習するというスケジュールばかりでなく、運動しつつ、並行して学習を行うこともまた同様に有効の様です。

いずれにせよ、運動、学習ともに繰り返し行うことが重要です。途中で中止するならば、形成されつつある、あるいは完成されたそれぞれのネットワークは、徐々に消滅していく運命をたどることになります。筋肉の場合と同様、「使え、さもなくば衰える」ということが言えます。

最後に、注意すべきことは、激しい運動は却って学習能力を阻害するという研究結果もあります。適度の運動を心がけることが大事でしょう。

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