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塩の表示問題

2008年04月30日 | よもやま

「自然塩」や「天然塩」といった言葉をよく耳にする。
中には「自然海塩」「自然結晶塩」というとても似た言葉も出回っている。
おそらく多くの方が一度は聞いたことのある言葉と思うが、
さて、いったい何が天然なのか?自然なのか?
すぐに説明できる人がどれだけいるだろうか。

話の前にまず最近の塩の業界事情のめまぐるしさを整理しておく。

まず、2004年に公正取引委員会が一部のメーカーに対して警告を行った

その内容は要約するとこういったことだ。

①「手づくりにこだわった」「太陽と風だけで結晶化した」などといった表示に対し消費者は品質等が優れていると認識するとみられる。
・・・でも実際には品質は結晶化させる装置と加熱方法によって決まる。
②「現代人に不足しがちな海のミネラルを豊富に含んでいる」 「海水中に溶け込んだニガリ成分がバランスよく含まれています」「海のミネラルを含んだまろやかでおいしい塩」などミネラル成分を強調する表示がみられる。
・・・でも実際には塩に含まれるミネラル成分の絶対量は極めて少ない。
③「無添加」という表示で消費者が体に良さそうなイメージを与えるがある。
・・・ でも添加物が使用したものと比べて品質が優良であるとは限らない。
④海洋深層水をつかっていることを表示することで消費者は「体によさそう」「味が良さそう」と認識するとみられる。
・・・でも海洋深層水特有のミネラル分の絶対量は極めて少ない。
⑤「○○の海水だけを原料とし」といった産地名の強調した表示で消費者は品質等が優れていると認識するとみられる。
・・・でも海水や天日塩の成分に差があっても塩の成分は製造工程において変化する。
⑥「自然塩」「天然ミネラルたっぷり」といった表示で消費者は「体によさそう」と認識するとみられる。
・・・どのような原材料?どのような工程どのような成分や風味?いずれも天然・自然と言えるのかについては明らかではない。
そして、こういった問題を解決するように促している。

次に、東京都から同年「自然」・「天然」という用語を塩の表示に使用しないように、との指針がでている。

その理由として
「それが最も自然な作り方であり、自然な組成や味を持ち、健康面から考えて優れたもの」という条件を満たす定義は、科学的に説明できないことから不可能。したがって、「自然」「天然」については消費者に根拠のない優位性を表示して誤認させるものであり、使用してはならないとするのが適当。 」
「各食品の表示に関する公正競争規約を見ると、33品目中、18品目の規約で、「不当表示の禁止」条項等で「天然・自然・ナチュラル」等の表示を使用することができない旨、定めている。」

といったところを挙げている。

こういった現状を踏まえ、
塩の公正競争規約が2008年4月21日の官報で告示された。

主なポイントとしては
・「自然塩」「天然塩」およびそれに類する用語は使用できない。
・「深層海水使用」により品質が優れていることを表示するにはその合理的な根拠を示す必要がある。
・ミネラル豊富を意味する表記は不当表示となる。

といったところだ。

事実関係としてはこんな感じだ。
いずれにしても、これからはメーカーや流通、情報発信元が、どれだけこの規約に対して真摯に向き合うか、
また消費者サイドでは正しい情報を把握し自分の目でいかに判断するか、という双方にとって責任がでてくることはおそらく間違いないところと思う。

(さて、ここからは本題とは少し違う話になるが
最近、食品添加物と関連させて「過度に消費者の不安を煽る」
という古典的な手法を用い、その中でさりげなく自社の塩の宣伝をすり込ませる

という自然海塩メーカー関係者がいる。
それが科学的に正しいものならいざしらず、著書を読んでみたが
どうみてもマユツバなところが随所にある。
これについては既に複数の専門家が著書などで矛盾点や恣意的な表現について指摘されているし
(まあ、本を買うのが億劫ならばこの佐藤達夫氏のサイトが氏の問題点をよくまとめてます)
著書で主義主張することは自由なので、ここで個人名などはあえて出さない。
ただし「あざとい」とまでは言わないが、非常に巧妙な手口で読者を説得させる手法が垣間見られる。
塩についても例えばこんな記載があった。
『それか塩。この業界も「うそ」「ごまかし」が相当はびこっています』(P93)と著書で彼は述べているが
『ミネラルが十分に含まれている塩は、甘いし、おいしい。よく「塩は血圧を上がるからだめだ」と言われますが(たしかに99%の食塩はそうなのですが)、こういう塩は血圧も上げないし(むしろ下げます)、体にいいのです。この4つ(精製塩・輸入塩・再製加工塩・自然海塩)のうち、もっともミネラルの豊富なのが「④自然海塩」なのです』(P95)
の記述は残念ながら彼の述べる「うそ」「ごまかし」そのものと言わざるを得ない。
塩と血圧の関係は「自然海塩」という不明確な定義の塩にに限った話ではない上に
血圧の上昇は食塩感受性をもつ人とそうでない人で個人差がある。感受性の有無を調べる方法も非常に難しいのが現状だ。
ましてや体内に入ったナトリウムが自然海塩のものかそうでないかを区別する機能など人間にはないはず。
医学界でも明確な結論が出ていない段階で医師でもないのに「下げる」などと断定するのは非常に危うい。
「いたずらに恐怖感を煽り、相手の心の隙間にスッとつけこむ。
そして科学的な検証や議論は情に訴える内容と見事にすり替えかわす。」

どこぞで散々お見かけする手法だが
宣伝目的ではなく、本当に消費者サイドに立った立場ならば、
ちゃんと食品添加物の問題点を含めて科学的に正しい証明をされたらどうだろうか?
真面目な消費者にこそ
「裏側をみたつもりが実はそれにも裏側があることに気づかない」
ような目にはあってほしくない、としみじみ思う。)

参考にした資料
http://www.siojoho.com/s02/04.html
http://www.siojoho.com/s12/index.html
http://www.geocities.jp/t_hashimotoodawara/salt6/salt6-98-07.html
http://www.geocities.jp/t_hashimotoodawara/salt5/salt5-4.html

ジャンル:
食と健康・美容
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7 コメント

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とても参考になります (Shogo)
2008-03-10 02:30:19
理系なものですので、塩とか天然ものとか、どうも科学で説明が付かないような解説がいっぱい付いているのを眉唾で見ていました。
Unknown (asu)
2008-03-12 03:23:15
とても興味深く読ませて頂きました。
こんばんは。 (たまたく)
2008-04-21 23:04:48
私も読みました。
「食品添加物の神様」というのが
「自称」だっていうのが笑えますよね。
正論と感じます (suzukiyu)
2008-04-23 11:54:12
塩問題には表示も含めて注目してきました。ソルトマスターさんの論評はよくまとまっているし、一部の自然海塩メーカーに対する批判についても妥当と感じます。なお、天然自然表現の使用にあたっての例外規定「塩を直接修飾しない表現として使用する場合についてはこの限りではない。」については、天塩の「自然をこの手に」程度であっても実際には問題となりうるのでは、と懸念されており、メーカーでは自主的に文言を変更する動きがあるようです。
そうだったのか・・・ (junna)
2008-09-16 21:36:54
じっくり読みました。
食品添加物と関連させて「過度に消費者の不安を煽る」以降は、
何度も読み返しました。
率直な感想としては、
「そういうことを考えていないわけではなかったけれども、そこまで突き詰めては考えていなかった」
です。
今後はそういう視点も忘れず読んでいきたいと思います。
とても勉強になりました。
Unknown (グミ)
2009-01-28 08:24:13
母が腎臓が悪く食事に気をつけています。
医師に食塩も無添加なものをと言われているのですが、似通った言葉が多く表示をみてもよくわからず…
どぅいったものがよいのでしょうか?
 (Leopanda)
2009-04-11 16:48:59
はじめまして、Leopanda と申します。
食品関係で真面目に分析をされている御HM、妙味深く、今後、勉強させていただきます。 
藻塩製造者が全国にかなりの数ありますね。 
私は藻塩は美味しいと思いました。

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