「はい、国見ちゃん」
「え?」
昼休み、すれ違う廊下で、不意に手渡された、
それは、水色の封筒だった。
「返事ちょうだいね!」
「え・・・」
そう言って及川さんは手を振って、クラスメイト達と共に、
行ってしまった。
はじめてだ。及川さんから、手紙をもらうなんて。
俺は、自室の机で、その封筒を表に返す。
国見英様。綺麗な字でそう書いてある。裏を返せば及川徹、と、
書いてある。不思議。本当に及川さんが、俺に手紙をくれた。
「ふふ」
笑ってしまったのは照れくさいせいだ。このまま、開封しないで取っておきたい。
頬杖をつく頬が、緩んでくすぐったい。胸が、きゅんきゅんしている。
そして、
俺は机の、引き出しを開けた -
そこには、
白い封筒が、ひとつ。
俺はその封筒を取り出して、
真っ二つに破る。
そしてそれをまたふたつに、そして、またふたつに、
そしてくずかごに、突っ込んだ。
こうやって、
ずっと、ずっと、渡せない手紙を書き続けて、
新しいものを書いたら、古いのを破って捨てて、
そんな手紙が何通も、何通も、この引き出しには降り積もって、
(へんな、きぶん)
俺の手紙はもう、受け取る誰かが、いるのか。
- 好きです。
- 及川さん、好きです。
「好きです」
まだ、実感がわかない。足元がふわふわしている。この封筒を開けたら、
一体何がはじまるんだろう。
俺ははさみを取って、思い切って封を切ってみる。中には封筒と同じ色の、
便箋があって、
何かが、はさまっていた。
「チケット」
- 英、
ライブのチケットが取れたから、一緒に行きませんか。
場所は仙台サンプラザ、日時は -
俺と付き合ってくれてありがとう。愛してる、英。
「及川さん・・・!」
俺は、
思わずその封筒とチケットを、額に当てて声を殺して泣いた。
及川さんが俺の知らないところで、デートの予定を立ててくれる。俺の知らないところで、
こんな手紙を書いてくれている。
- 愛してる。
こんな幸福者が世界に、他にいるだろうか。
「及川さん。
俺だって、ずっと、ずっと -」
今日、俺の手紙は、片想いをやめた。
さぁ、返事を書こう。何色の便箋が良いかな。あなたは何色が好きですか?
(2015.08.21 公開/800話突破ありがとうございます。)
「え?」
昼休み、すれ違う廊下で、不意に手渡された、
それは、水色の封筒だった。
「返事ちょうだいね!」
「え・・・」
そう言って及川さんは手を振って、クラスメイト達と共に、
行ってしまった。
はじめてだ。及川さんから、手紙をもらうなんて。
俺は、自室の机で、その封筒を表に返す。
国見英様。綺麗な字でそう書いてある。裏を返せば及川徹、と、
書いてある。不思議。本当に及川さんが、俺に手紙をくれた。
「ふふ」
笑ってしまったのは照れくさいせいだ。このまま、開封しないで取っておきたい。
頬杖をつく頬が、緩んでくすぐったい。胸が、きゅんきゅんしている。
そして、
俺は机の、引き出しを開けた -
そこには、
白い封筒が、ひとつ。
俺はその封筒を取り出して、
真っ二つに破る。
そしてそれをまたふたつに、そして、またふたつに、
そしてくずかごに、突っ込んだ。
こうやって、
ずっと、ずっと、渡せない手紙を書き続けて、
新しいものを書いたら、古いのを破って捨てて、
そんな手紙が何通も、何通も、この引き出しには降り積もって、
(へんな、きぶん)
俺の手紙はもう、受け取る誰かが、いるのか。
- 好きです。
- 及川さん、好きです。
「好きです」
まだ、実感がわかない。足元がふわふわしている。この封筒を開けたら、
一体何がはじまるんだろう。
俺ははさみを取って、思い切って封を切ってみる。中には封筒と同じ色の、
便箋があって、
何かが、はさまっていた。
「チケット」
- 英、
ライブのチケットが取れたから、一緒に行きませんか。
場所は仙台サンプラザ、日時は -
俺と付き合ってくれてありがとう。愛してる、英。
「及川さん・・・!」
俺は、
思わずその封筒とチケットを、額に当てて声を殺して泣いた。
及川さんが俺の知らないところで、デートの予定を立ててくれる。俺の知らないところで、
こんな手紙を書いてくれている。
- 愛してる。
こんな幸福者が世界に、他にいるだろうか。
「及川さん。
俺だって、ずっと、ずっと -」
今日、俺の手紙は、片想いをやめた。
さぁ、返事を書こう。何色の便箋が良いかな。あなたは何色が好きですか?
(2015.08.21 公開/800話突破ありがとうございます。)