味噌汁 第18話

2016年10月14日 | 味噌汁(小説)
朝食を片付け終わった春子は、洗濯物を洗濯機に放り込み、おもむろにクローゼットから
掃除機を引っ張り出して部屋の掃除をすることにした。邪魔な『動物』が居ないうちに
この一週間で溜まったものを綺麗にしなければならない。

『ったく!そもそもなんでアタシがあのアンポンタレスケの部屋の掃除をしないといけないのよっ!』

そう、実はここは春子の部屋ではなく、諭吉が借りているアパートなのである。諭吉と違って
自前の交通手段を持たない春子は、仕事や遊びの帰りが遅くなると、『勝手に作った』合鍵で
転がり込んでは『家主よろしく』、まるで自分の部屋のように振舞っているので、実際
名義主の諭吉でさえ、自分が時々ご厄介になってるような錯覚に陥り苦笑いすることがしばしば。

やや放浪癖のある諭吉はよく友人の家に潜り込んでは1週間ほど帰ってこない事もあり、
同じアパートの住人の中には女性のほうが借主であると思い込んでいるものもいるほどであるが、
ある時、飲み屋で仲良くなってなんとか攻略したかわいい子をさて『いよいよだ!』と連れ帰った
ところ、普通にベッドで寝ていた春子と鉢合わせてしまってひっぱたかれた以降、
部屋には決して女の子を呼ばないことにした。

掃除の仕方でその人の性格が出ると言うが、割と男勝りでサバサバしていると学生時代から
言われる春子は意外な事に掃除が好きで、スイッチがONになるとその騒音がなかなか
鳴り止まなく、生活の時間差がある諭吉は安眠を妨害されることが多い。

部屋の隅から隅まで丁寧に掃除機がけを終えると、今度はフローリング部分を流行りの
簡単モップで水拭きを始め、同時に気がついた汚れを雑巾で丁寧に拭きあげては
再び床磨き。決して雑ではないがテキパキと進めるので、終了までにそう時間は掛からなかった。

すると、今度は掃除の合間に終わっていた洗濯物を洗濯機から順次取り出し、かごにいれ
ベランダに出て干し始めた。端から効率よく洗濯物を干していくと、正面のグラウンドでは
朝から続いていた野球の試合が最後の盛り上がりを見せていた。

片手間で何気にその試合を見ていたが、干し物を終えて本格的に観戦を始めると
急にある人物が気になりだし、部屋に戻るとメガネをかけて再び観戦を始めた。
ある人物とはフィールドを駆け回っている選手ではなく、赤色のユニフォームを着た
チームのベンチで、選手に大声で何かを指示しているコーチであった。

誰だったか、遠い昔の知り合いであるようにも思えるし、ひょっとしてTVか何かで
見るだけの芸能人かもしれない。記憶力は良いほうな春子であるが、その人物が
誰なのか?思い出すのに相当な時間が掛かった。
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