黄昏時

昔懐かしの少年ジャンプで連載されていた某・漫画の自己満足度MAX二次的文章駄置き場です。

冴蔵

2017-08-10 07:28:37 | 暁編・番外

「親分ーーーーーー!!」

廊下をバタバタと騒がしく、子分共がコチラへと向かって走って来る。


「うるせえぞ、廊下を走るな!!」

「す、すいません、でも、、、」


俺の近くの奴に怒鳴られ、恐縮しながらもそれでも俺へと報告しなければならないような「何事か」が起こっているらしく、、

動揺しながらも、困り果てた顔をしながらソイツは頭を下げていた。


「?!」

その子分の表情が気になり、動揺の根源であると思われる場所へと移動したのだが、、、、


でんっ・・・・・・・!!


塀の、、ど真ん中に、、、、

俺拘りの塀の造りの中でも、一番気に入っている細工を施したその中に、、、どこぞの子供がスッポリと嵌り込んでいるのだが。


「・・・・・・・・・・・・・なんだ、あれは。」

「子供だと思うんですが、、、」

「そうだな、大人には見えねえな。」

「、、、ですよね。す、すいません。」


俺の言葉に恐縮し又もその頭を下げている子分をそこに置き、その問題の根源として塀の一部に嵌り込んでコチラを見ている子供の所まで歩み寄った。


「お前、何をしている。」

近くにまで寄った所で片膝をつき、その視線を子供と合わせたところでそう問い質す。


「・・・・」

大きな子供の両の目が俺の姿を捉えていた。


「動けない。」

「だろうな、どこから来た。」

「ずっと後ろ。」

・・・・・・・・・・・・・・そうか。

と答えると、うん、と返事が返って来る。


「名前は?」

「さくら。」

「一人で来たのか?!」

「うん。」

「何処へ行くつもりだった。」

「もっと遠く。」


、、、、、、、、、俺の質問の仕方が悪かったのだろうか。


「ど、どうしますか、親分。」

「騒ぐな、子供のしたことだ、、、」


?!

と、そこに嵌りコチラを見上げている子供の顔を見下ろしたその時「ある男」の事を不意に思い出した。


この髪と瞳の色、、、、まさか、、、な。




「何をしている。」

「動けなくなった。」

・・・・・・・・・・・・・正解だった。


まさかとは思ったのだが、、、この人形のように愛くるしい見た目の子供の親が、、お前だったとはな、赤石。

塀に嵌ったままの子供、冴蔵(これで「さくら」と読むらしい、成程な、、、)に向かって奴は微動だにする事も無く、仁王立ち状態で訊ねていた。


「致し方ないな、、、」


はあーっ、、、と、眉間に皺を寄せ分かり易く大きなため息をコイツが吐いている。

それはそれで個人的に俺は面白い。


「では、伊達、、、俺はこの塀の向こう側に行くのでお前はこちら側で、念の為冴蔵の様子を見ていてくれ。」

「分かった。」


俺の返事を受けて、赤石の奴がひょいと塀の上に飛び乗るとそこから冴蔵の様子を一度確認したのか、チラリとその視線を落としたその後で、スッとその向こうへと姿を消していた。

思っていた以上に身軽に動きやがる、男塾にいた頃には滅多に見せる事の無かった姿だな。

塀の向こうに姿を消した赤石を見送りながら、そんなことを考える。


「・・・・・。」

奴は今、冴蔵の小さなその体を見下ろしている所なのだろうか??

そう思いながら赤石が次に動く時を待った。


「冴蔵、、、」

奴が、この子供の名を口にする。



「・・・・・・パンツ丸見えだぞ、お前。」



「あっ?!」

「っ!!」


今あいつ、、パンツと言わなかったか?!パンツ、、、と。

あの赤石が、、、パンツと言っていたようなのだが、、、、、



「えーーーーーっ、うっそおお、やだあ、恥ずかしいーーー!!」

もっじもじもじもじ、、、父である赤石のその言葉に冴蔵はその手足を全力で動かし、ついでに腰のツイストも効かせてスッポオーーーンと、自力でそこから抜け出すことに成功していた。


「嘘だがな。」

見事、塀から抜け出したその時 赤石のそんな言葉が聞こえてきた。


塀に引っ掛かっていた最大の原因は、冴蔵がその肩から下げていたポシェットだった。

その中に、赤石と共に食べる予定にしていたお菓子を詰め込んで、一人で奴の住まう家に向かっていた所、、何故か俺の家の塀の穴に嵌り込んでしまったらしい。


まあ、あれだ、、、子供のする事、、だから、な。


「・・・・・・・・・・食べる?」

俺の視線に気が付いた冴蔵が、スプーンの上のプリンを俺に向かって差し出してくる。


「いや、お前が食べろ。」

「食べる?」

「・・・・・」


今度は自分を膝の上に乗せている父親の赤石にそれを向けていた。

ぱく、、、何の躊躇いもなく食っていやがる。


「そういえば、お前、倅がいなかったか?確か、、、十蔵だったか、、ガキ、いや、生後間もなくに見た時からもやたらとデカかった、あの、、」

「あー、、、十蔵か、、、この冴蔵と十蔵とは双子の姉弟だ。」


、、、、、、、、、、そうか。

双子か。


双子、、、ねえ。

そう思い、目の前にいる子供のその姿を見下ろすと、その大きな瞳がまたも俺の姿をジッと見上げていた。













「・・・・・カッコいいねえ、それ。」

「あ?!」


あれから、、何が気に入ったのかは分からんが、この子供にとっては俺の家に立ち寄る事が当然の日課と化してしまったらしい。

今朝も正面から堂々と入って来て、子分共に丁寧にあいさつ。

にこにこふわふわと、その愛くるしい笑顔を振りまいている。



そして、奥の庭で早朝鍛錬に励んでいる俺の所へとやって来ていた。

お前、早起きだな。


「かっこいい。」

冴蔵が見ているのは、俺が手にしていた槍だった。


「・・・・やらんぞ、おもちゃではないからな。」

「うん。」

縁側に腰を下ろし、子分共のアイドルと化している冴蔵は、あいつ等が用意したおやつとジュースを交互に口にしている。


「うまいか?」

「うん。」

足をぷらぷらさせながら、そう返事を返して来た。


我が伊達組は、、、一体いつからこんなふにゃけた雰囲気になったのだろうか?!


気が付けば、ここが伊達組内とは思えない、甘ったるい雰囲気があちこちに於いて充満しつつあった。

雰囲気だけでなく、菓子やジュース等の匂いのせいもあってか、最近は空気自体さえも甘ったるい匂いが立ち籠めている。


これは、、由々しき事態、、、だよな。


「冴蔵。」

「?!お父さん。」


自分の名を呼ぶその姿を発見し、それ迄手にしていたジュースを素早く置くと、冴蔵はパタパタとその声の主である奴の方へと駆け寄っていた。

確かに、、子分共が虜にされてもおかしくない事は、俺も認める。


「余り勝手に此処に入り浸るな、、、」

「どうして?!」

「考えろ。」

「、、、、、分かんない。」


赤石は自分の方へと寄って来た娘を抱き抱えながら、そんな会話を交わす。

気が付けば、コイツもすっかり父親としての顔が板についてきていやがる。


だが、、、それ以来、冴蔵が当然の様に我が家に立ち寄ることは無くなってしまっていた。

分からないと言ってはいたが、、子供なりにも「何か」感じる所があったのだろうか。


こんなことになるのなら、もっと旨い菓子を馳走してやったのだが、、等といった考えが過ること自体、俺自身も相当あの子供の存在によって影響を受けていたものと思われる。








、、、、、、、、、、、。

その事に対して子分共は随分と意気消沈していた様なのだが、、、、


「冴蔵ちゃん、、、」

中でも特に落ちこんでいたのはコイツ(メガネ・スキンヘッド・ヒゲ)だった。


その場にしゃがみ込み、膝を抱えてそこに顔を埋めた状態で落ち込んでいるお前の姿を見たのは、俺は初めてなんだがな。









暁編・番外『冴蔵』-完-


 案内

ジャンル:
小説
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 弥月 5 | トップ | ごあいさつ »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

暁編・番外」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。