迷宮映画館

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バベル

2007年05月02日 | は行 外国映画
人間は怖がりである。生きとし生けるものはすべてその命を保持し、守り、伝えていかなければならないが、そうなると、怖がりでなければならなくなる。特に人間がそうだ。それは人間が弱いから。弱い生き物である人間は、恐竜が闊歩していた時代から、地べたに這いつくばり、身を寄せ合って、恐怖におののきながら生きてきた。

恐竜がいなくなっても危険なものは数え切れないほどにある。病気、ウィルス、事故、天変地異、そして一番恐ろしかったものは・・・人間なのかもしれない。何の理由もなく他者を殺めることが出来る生き物は人間だけだという。

しかし、一方で他者を慈しみ、子供を守り、愛するもののために命をかけることが出来る生き物。それが人間だ。この矛盾だらけの生き物はこの世で最大に面白く、怖く、いとおしい。そんな生き物がこの世界に65億もひしめいている。コレを恐怖と見るか、それとも幸せと見るか・・。それによって、世界はまるで違ってくる。

怖がりの人間は、理解出来ないものが苦手だ。自分とは違うものを排除して、自分の狭い世界を守ろうとする。そのためには排除されたもののことを考える余裕はない。ひたすら自己が大事だ。そうやって生き延びてきた人間が行き着く先は一体どこなのだろう。

映画にはすべてが描かれていた。裕福な暮らし、貧困、愛と憎しみ、虚栄、欲望、死、誕生、それらの感情に押しつぶされそうになりながら、悶え、苦しみ、生きていこうとする人間たち。なぜこんなに苦しまねばならないのかの答えを探してるかのように。

混沌とした世界に、何とか答えを見つけたい。そう願いながら映画を作っているのが、イニャリトゥの思想に思える。重く、濃く、熱い。重層的な作りは相変わらずだが、彼の濃すぎるエネルギーがいつも映画に乗り移っているかのような空気を感じる。しかし、今までの作風に比べ、随分柔らかに、かつ単純で、とってもとっつきやすいものに感じた。今まではあっち側で作っていたが、こっちに来たぞ、と上手く表現できないが、そんな風に感じられた。

自分の思想をより多くの人に見せたい、わかってもらいたいということを伝える最良の方法を選択したのではないだろうか。映画を見て、一番強く感じた事だった。

◎◎◎◎

『バベル』

監督 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
出演 ブラッド・ピット ケイト・ブランシェット ガエル・ガルシア・ベルナル 役所弘司 菊池凛子
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17 コメント

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はじめまして (clover)
2007-05-04 11:03:24
sakurai様初めまして。
山形市内に住むcloverと申します。
密かにこちらのブログに日参させて頂いていた者です。
映画に対する強いお気持ちを感じ、いつも楽しく感想等拝読させて頂いています(^−^)

『バベル』は私もとても素晴らしいと思いました。
世界をまたいで、いろいろな事を凝縮して伝えようとしているがために表現方法に批判もあるみたいですけど、
国家とか家族とか人間関係といったものに対する絶望感と希望をここまでにまとめあげて一本の映画として完成させた監督に、まず感動しました(一文が長くてすみません)。

お忙しい中の更新大変でしょうが、これからも感想を楽しみにしていますね!
また立ち寄らせてください!
clover
>cloverさま (sakurai)
2007-05-04 12:59:52
はじめまして。
読んでいただき、ありがとうございます。
なかなか上手くまとまらず、歯茶目茶な文章になっている事が多いのですが、どうぞ読んでやって下さい。
励みになります。

もともと批判を受けやすいつくりの映画で、「アモーレス・ペロス」なんか、絶対に一般受けしない映画だったと思うのですが、絶対的に見た数が少なかったと思うのですよ。
で、今回はこんなに多くの人が見る。それは賛否両論、噴出するでしょうね。
その辺もだいぶ意識して作ったんじゃないかなと感じました。
で、こっち側に来た、とも感じたのでした。

どうぞまたいろいろと感想をお聞かせください。
ありがとうございました。
ん〜 (GMN)
2007-05-07 23:29:50
逆に私は、アレハンドロ高い所から見下ろしすぎ!な感じがしてしまいました。そんな高いとこじゃなくてこっち下りてきてから話しようよ、っていうような。
「アモーレス〜」の方は地から天を見上げる感じで、「バベル」は天から地を見下ろしてる気がします。
>GMNさま (sakurai)
2007-05-08 14:16:57
紛れもなく上から撮ってましたが、観客の側にも立ってたかな・・という感じがしました。
それはやはりあの配役。
配役陣を見る限り、ものすごく不特定多数の人が見るでしょうからね。
それは今までの彼の姿勢とは大きく違ってたものではないかなあなどと思ったりして。
チエコのメモはとんと気にならなかったのですが、ガエル君の行方が気になる私。
『伝える最良の方法を選択』 (さくらスイッチ)
2007-05-09 20:36:15
鑑賞して数日が経った今、私もそう感じています。(観た直後にはそう感じませんでしたが・・・)

この映画の想いを伝えたいと願っている人達は、色んな意味で幅が広く、表現には苦慮したと思います。わたしは、映画を観終えるとあっという間に忘れてしまうんですが、この映画は鮮やかに記憶に残っています。

とても印象深い映画になりました。

Unknown (kayamaeiyon)
2007-05-09 22:04:55
かなり賛否が分かれている映画ですが、私は良かったです。感動しました。
人間の本質が愚かであり、それに翻弄される人々が、的確に描かれていたと思います。

>映画にはすべてが描かれていた。裕福な暮らし、貧困、愛と憎しみ、虚栄、欲望、死、誕生、
そうですね〜〜。あれだけさまざまな地で起きる事件を、ほんとうに1発に弾丸が結んでいました。

>さくらスイッチさま (sakurai)
2007-05-10 14:10:52
アレハンドロ監督の映画って言うのは、見るたびに思うのですが、生半可な決意で作ってない。
どの監督も全身全霊をこめて作ってるのでしょうが、ハンパじゃない。
その辺の決意を感じました。
印象深いです。
>kayamarionさま (sakurai)
2007-05-10 14:21:30
もともとクセの濃い監督ですから、どっちかというとアート系なんでしょうが、ここはブラピを持ってきて、多くの人に見せようと。
監督の観客に対する挑戦のようにも思えます。
かなりの人が見るでしょうから、やっぱ評価は分かれるでしょうね。
しっかし、頭いい人ですね。
一体、どういう脳みその構造をしてるんでしょう??
と思うくらい。
そうですねえ (カオリ)
2007-05-14 18:55:40
内容が重いのに、これだけ話題になり、皆が見ようと思った映画は珍しいんじゃないでしょうか・・・まあ、日本では、日本人が登場してると言うのもあると思うんですが。

そういう意味で、みんなに考えてほしい、伝えたい。と言う監督の試みは成功したんじゃないでしょうか。

後は、それを受け取った私たちがどうあるべきかと言うこと・・・
>カオリさま (sakurai)
2007-05-15 22:39:44
かなりの人は、普通の映画系のつもりで見ちゃった人が多かったようですよ。
んで、よくわかんなかった・・・みたいな感想を持っちゃう。
見てから随分時間が経ってしまい、色々と考え直したい事があって、もっかい見たいなと思ってます。
やっぱ、ブラピ様は強いですね。
なるほど〜 (カオリ)
2007-05-17 14:28:22
聖書の世界も奥深いですね。
なんせ、世界で一番読まれてる本ですものね・・・

昨日は「約束の旅路」観てきました。
山形でもそろそろですよね?
そこでもどっぷり聖書の世界でした。

そうそう、大森キネカと言う映画館でsakuraiさんのオススメだった「蟻の兵隊」やってるので、今度は逃さないようしっかり観てきたいと思います。こないだは、遅ればせながら「チーズとうじ虫」みたところです・・・

ではまた!
約束の旅路!! (sakurai)
2007-05-17 21:17:21
今週末から一週間なのですが、はよ見たい!!
聖書、面白いです。とっても人間臭くて。
全然教条臭くなくて、アホな人間がいっぱい出てくるあたりがユダヤ人のユダヤ人たる所以なのかなぁ、などと考えてます。

「蟻と兵隊」!是非見てください。どっかの戦争映画作った知事にも是非見てもらいたい。
あ、でもその戦争映画見てないから、なんともいえない。見る気もないけど・・。
ご無沙汰しています。 (mezzotint)
2007-05-22 23:58:38
sakuraiさんへ
今晩は
私も結構お気に入りの作品です
聖書ですか!かって私もカトリックの
学校で学びましたが・・・・。ほとんど
記憶がましてや旧約聖書
なんて覚えていませんし。だめですね
暗くて重たい作品でしたが、鑑賞後、色々考えさせ
られるところが多かったです。
>mezzotintさま (sakurai)
2007-05-23 17:31:00
どうもです。
いろんな場面が聖書の場面に見えてきて、そういう世界がカトリックの人たちには日常であるんだなあと感じさせられました。
人間は創世記の時から、ちっとも変わってない。そんな生き物だ・・・みたいな問いかけだったのでしょうか。
こんばんは (はらやん)
2007-06-04 18:43:40
sakuraiさん、こんばんは!
ココログどうも調子良くないようでご不便かけて申し訳ないです。
最近はちょっとTBはしやすくなり改善はしているようですが、まだまだですね。

>怖がりの人間は、理解出来ないものが苦手だ。
自分自身も含め、人間てそういうところありますよね。
でもそれがわかったうえで、それを乗り越えようとすることもできる。
そんなことが言いたいのかなと思いました。
確かに (miyu)
2008-01-10 09:58:43
随分と分かりやすくなってましたよね。
有名かつ人気のあるキャストを使っているし、
多くの方の目に触れることを意識した結果なんでしょうかね。
sakuraiさんのレビューを読んでやはり
人間は弱く脆く臆病な生き物だと感じました。
同時に強く勇敢な生き物でもあるんですね。
>miyuさま (sakurai)
2008-01-10 15:47:41
「アモーレス・ペロス」の衝撃が大きすぎて、あれ見た後、一週間位は(大げさじゃなく)ガツンと脳天打たれたような気分でした。あれだけのものはなかなかないですが、ずいぶん、こっち側にきたなああ、と。
人間の酸いも甘いも、弱さも強さも、みんなひっくるめて描かれてました。
やはりすごい監督です。

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