迷宮映画館

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イントゥ・ザ・ワイルド

2008年10月27日 | あ行 外国映画
傍から見たらなんと贅沢な!と思ってしまうのだが、人の価値観はそれぞれなので、何をしようと自由だ。大学を卒業した青年、クリス。いい大学で、いい成績。家もそれなりに裕福で、何も問題もなさそうだが、自分にとって問題は大あり。

父と母は複雑に結びついており、そのせいで仲は決してよくない。その仲の悪さを小さい頃から見てきた兄妹は、多感に育つ。

大学を卒業したのは親に対する最後の義務のようなもの。これを終わらせれば、あと義理はないだろうと、すべてを捨てて、旅に出てしまう。

貯金も慈善団体に寄付し、小金も燃やす。リュック一つで踏み出すが、サバイバルの力があるのかというと、そんなこともない。どうにも危なっかしくてしようがないのだが、何となく彼には手を差し伸べたくなる何かがあるらしく、何となくうまく言ってしまう。



車で放浪している夫婦とは、ものすごく意気投合。母の気持ちの一片を知るが、それでも彼の足は北、アラスカに向かう。

大自然の真ん中で、何にもない周りを見まわして、これぞ自分が望んでいたものだと晴れ晴れとした表情になる。どこか甘さをぬぐい切れず、見ているこっちはじれったい思いもつい抱いてしまう。

トゥルー・ストーリーなので、結末は知っているのだが、そうなってしまうのもやっぱなあ、とも思ってしまうのだ。いや、それは描き方で、実際に彼がどうやって暮らしたのか、どうやって2年を生き抜いたのか・・。本当のところはわかんないと思うんだけど。



世のシガラミをすべて捨てて、己の足と、己の力だけで生きる・・・。一度はやってみたいし、若い時には考えてもそれは全然かまわない。そして、そこから一体何を得たのだろうか。ものすごい充実した精神を養ったのかもしれない。しかし、悲劇的な結末が待っていると思うと、どうだったんだろう。

大学を卒業した時点で、今までのことをリセットできると思えたのかもしれない。しかし、家族はそうはいかない。母の気持ちを思うと、どうしても悔しかった。自分がいたこと、通り過ぎたことの痕跡だけで待てというのか。

その時の家族の気持ちも痛いほどに描かれていたが、その痛さはクリスには見えない。この辺の描き方がにくいほどにうまい。

この人間の生き方に、もろ手をあげて賛同はできないが、映画としては一級品。さすがショーン・ペン、渾身の作品というだけある。

最後に見つかったフィルムの中で満面の笑みを浮かべる青年の顔が写ったが、母としてはそんな笑顔を見ても、納得なんかできないだろう。

◎◎◎◎

『イントゥ・ザ・ワイルド』

監督・脚本 ショーン・ペン
出演 エミール・ハーシュ マーシャ・ゲイ・ハーデン ウィリアム・ハート ジェナ・マローン ヴィンス・ヴォーン ハル・ホルブルック
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8 コメント

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映画としては (miyu)
2008-10-29 06:31:24
確かにショーン・ペン渾身の一作と言えるのですが、
なんつ~かクリスを見ていると複雑な気持ちになりますよね。
本当気持ちは分からなくはないのだけど、
感動するというよりも痛々しい感じがしちゃいました。
>miyuさま (sakurai)
2008-10-29 08:59:31
作り上げられた映画に対しては、一切文句はありません。一部の隙もなかった。
やっぱりショーン・ペンはすごい人です。
でもねえ、クリスの生き方の選択がなああ・・・。
ニコッと満足に笑われててもなああ。
もし、あたしの息子だったらどうしましょうと考えてしまいますよ。
原作も読んでみました。 (KON)
2008-10-29 09:32:36
原作の現実のクリスは映画ほどには内面を露にしてる記録がなくて、あくまでも彼の最後の思いや死は(ある程度推測はしてますが)謎のままでした。映画はその辺のデリケートな部分を故人や家族の尊厳を損なうことなく脚色してますね。ショーン・ペンは凄い!クリスの溢れるほどの若さのきらめき・儚さを存分に表現してましたね。最後のロンじいさんとの交流は涙なくしては見られませんでした、うう・・・。役者がみんな素敵な人ばかり!!いつまでも心に刺さる感じがしました。
自然を甘くみてはいけない! (mezzotint)
2008-10-29 21:40:45
sakuraiさん
こちらにもありがとうございます!
ショーン・ペンは元々俳優業より監督が
希望だったようですね。映画製作のため、
俳優業で映画の資金作りをされたらしい
です。その思いがこの作品に注がれた
のでしょう。クリスの生き方ですが、
sakuraiさんもお子さんがおられるので
自分の子どもがもしこんな生き方を選択
されたら、どうしよう!と思うのは当たり前
ですよね。私の場合は、何で自然の驚異を
甘く考えていたのか?というところです。
登山していたこともあって、彼が地図も
持たない主義で、食料もあえて少なめにして
いたというのですから、愕然としたわけです。
だから死ぬことを覚悟していたのか?と
このような行動をしたのかと思ったのですが、
どうもそうではなさそうだし・・・・。
安易な思いだったと思う次第です。
やはり自然を甘く見てはいけないと言いたい
ですね。

>KONさま (sakurai)
2008-10-30 20:57:43
やはりショーン・ペンがどうしても描きたい問うだけあって、彼の思い入れがたっぷりと注入されていたような気がしました。
それがクリスの内面をどうにか見せたいというものになったのでしょうかね。
その心の交流を家族に向けられることができたら、とも思ってしまいましたが。
映画は本当に極上でした。
>mezzotintさま (sakurai)
2008-10-30 21:03:05
この人のすごさは妥協しないあたりでしょうかね。彼の映画はどれもボディブローのように、下っぱらにずんずんきます。
自分の子供がどう生きてもそれは本人の選択ですが、命を結果的に粗末にしたようなことは見ていて忸怩たる思いをしました。
その思いもちゃんと監督は描いたと思ういますが・・。
やはり、どこかで自然を甘く見ていた、傲慢な若い気持ちが見えました。その辺の描き方のバランスも見事でした。
こんにちは (はらやん)
2008-11-01 10:25:33
sakuraiさん、こんにちは!

若者が自分の進むべき道というのを選ぶ機会というのがどこかで訪れますよね。
最近の子はそれをせずズルズルと先延ばししている感がありますが、クリスはその選択が良かったか悪かったかは別にして自分で選ぼうという強い気持ちを持っていました。
ただ若い故にそれが独りよがりであったことが彼にとても家族にとっても残念でしたね。
>はらやんさま (sakurai)
2008-11-01 18:23:36
自分探しなんていう簡単な言葉では片付けたくはありませんが、どこまでも真面目に、真摯に、自分を求めたんでしょうか。
彼の選択は、彼の自由だし、彼の思いを遂げたものなのでしょうが、家族はやっぱりやりきれないです。
その辺の思いもちゃーーんと描く監督は、そつないですね。

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