迷宮映画館

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トーク・トゥー・ハー

2003年08月24日 | た行 外国映画
看護士のベニグノは4年も事故で植物状態になっているバレエダンサーのアリシアの面倒を見ている。献身的という言葉を通り越して、彼のすべての人生を彼女のために介護している、いや生きているといった方が正しいかもしれない。聞こえないはずに彼女に見てきた舞台や、映画の話を聞かせる。見えない目に写真をみせ歌を聞かせる。奇跡を信じるというより、そうやって彼女の世話をすることが彼にとって無上の喜びになっている。

女闘牛士のリディア。恋人と別れて、失意の日々のときに旅行ジャーナリストのマルコと出会う。彼らが恋に落ちるのに、時間はいらなかった。「試合が終わったら、話がある」といって彼女は雄牛に立ち向かった。そして物言わぬ体となってマルコの元に帰ってきた。意識不明。彼女の触ることも出来ないマルコ。しかし、ベニグノの介護を見たマルコは衝撃を受ける。彼をそうさせるものは何なんだ?

旅行の仕事に戻ったマルコに待っていたのは悲劇の知らせ。スペインに戻った彼は、衝撃の事実とあまりに深い愛を知る。

実際にあった事件、15年も昏睡状態にいた患者が意識を取り戻したとか、昏睡状態の女性が出産したというようなことからインスパイアされたという。しかし、そのことをアルモドバルが描くと、非情な無上な愛になってしまう。男のねちっこい愛は今風に言えば、うざい。ベニグノの愛は深く、熱い。通常の世界ならば、ストカー、逮捕ものだ。

しかし、彼の愛が報われるときがきた。それが彼女にとって悲劇であろうと、いいのだ。彼はそのためだけに生まれ、そのためだけに生きたのだから。理解されなくてもいい。ただ一人、彼の気持ちを心から理解してくれたマルコがいたから。

マルコは、やはり昏睡状態に陥った恋人を持った男として描かれているが、狂言回し的な役割を担っている。彼の、とっても人間的な存在が救いのような、ホッとさせてくれた。

私の涙を誘ったのは、美しい歌声、カエターノの愛の歌。あの歌声は魂に染み入
る。そして、最後のダンス。美しい女性をただひたすら愛する男、自分達の愛は報われたのか、報われなかったのか・・・。あまりにその結末は・・・だが、あのダンスには、男を必要とする、愛にこたえる女が描かれていた。最後の音楽にやられてしまった。アルモドバルの演出は、人間の、私の、魂の一番弱いところをさりげなく刺激する。

「トーク・トゥー・ハー」

原題「HABLE CON ELLA」 
監督 ペドロ・アルモドバル 
出演 レオノール・ワトリング ハビエル・カマラ 2002年 スペイン作品


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