迷宮映画館

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トスカーナの贋作

2011年05月21日 | た行 外国映画
なんとも不思議な味わいの作品。今までのキアロスタミの風味とはちょっと違って、イランが舞台でもなく、有名どころの役者が登場。それもジュリエット・ビノシュ!

男性の方の美術研究家のジェームズを演じたウィリアム・シメルさん!!最初は、「ジェレミー・アイアンズ?かなあ」と思ってたのだが、いやこれが渋くて、ハンサムで、素晴らしく素敵。なんだか久しぶりにいい男を発掘した!という感じだった。

贋作研究家のジェームズの講演を聞きに来た女性。息子を連れているが、子供にとっては面白くない。やむを得ず中座した女性は、伝言を残す。また、この息子が腹立つ野郎で、あたしだったら、2、3発、ヒットしているのは間違いない。子供はわがままなもんで、自分をもっとも大事に生きてるんだ!の前提だが、子供相手でも譲れないこともある・・。

翌日、女性の経営するギャラリーを訪ねたジェームズは、彼女とトスカーナを散策することにした。夫婦と間違われた二人は、それを否定もせず、長年連れ添った夫婦のようにふるまう。他愛のない間違いに添った二人の会話。15年連れ添ってきた夫婦のように、自分の思いのたけを吐き出す女。

いつもいない夫に対する不満を吐露する姿は、偽りなどない。装いだったはずの姿はどこかに消えていく。心の奥底のものにあった思いがわき出てくるよう。今日は結婚記念日。それが本当なのか、偽りなのかなど、どうでもいい。彼女のほとばしる言葉は、15年の詰まった思いに聞こえる。


途中からならば、ほとんど倦怠期を迎えた夫婦の会話のような、何の変哲のない長年交わされてきたようなやり取りだ。夫の不在を嘆き、子供との関係が思ったようにならず、夫のために装ってもそれを気付いてるやら。。。見なれた普通のやり取りなのに、そこにあるのは緊張感のようなもの。本物にはない、作り上げていく力・・・みたいなもんか。

まあ、よくしゃべる。15年も連れ添うと、会話をする、しなくてはならない。。と言うより、話さなくてもいい安ど感の方が強くなる。あれだけしゃべると、逆にわざとらしいかもしれない。そこに時々見えるビノシュのイラッとする存在感。さすがだ。どんな役をやっても、いろいろとなぜか叩かれる女優さんだが、なんでだろう?もの欲しげに見えるのかも。そんな風に感じてしまったが、その感じが今回ばかりはピッタリだ。

少々疲れた中年の女性、、、ブラを外したくなるお年頃。。。わかるなあ。ここもキアロスタミの演出だったら、何と言うお爺さん!!

いつも表情をたっぷり見せる大写しのキアロスタミの見せ方。車の中をじっくり写し、その道筋を丁寧に撮っていく。いつもだと、薄汚れた土埃の道すがらなのだが、さすがにきれいだ。そして絵になる。そこはひとえにいい男のせいだと思うなあ。
私目、このロマンス・グレーの紳士に一目ぼれでやんす。素敵でした。実際はオペラ歌手だとか。。。うーーん、今度は歌を聞いてみたいところ。

◎◎◎○

「トスカーナの贋作」

監督・脚本 アッバス・キアロスタミ
出演 ジュリエット・ビノシュ ウィリアム・シメル


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2 コメント

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こんばんは (KLY)
2011-05-21 23:50:18
>2、3発、ヒットしている

いやぁ、なんだかsakuraiさんの力強い母親振りが目に浮かぶようで、なんだか嬉しくなってしまいました。(笑)最近ヒットできない親ばっかりだけど、親がヒットせんで誰がヒットするんかと。

それはさて置きこの作品。

最初は解って観ているはずが、途中から???
でじぶんが誤解していたのかとともったり、いや、そんなことないやっぱり合ってると思ったり…なんだか色々考えながら観ていました。
そういう意味ではちょっとした推理小説並みに考えさせられちゃったかも。
普段はあまり観ている間に考えさせられるのは好きではないのですが、こういうのも面白いですね。

p.s.先日ちょっと話に出たセミフ・カプランオール監督の『蜂蜜』。こちらでは『卵』と『ミルク』も三部作の一挙上映が決まったようで、とても楽しみにしています。
>KLYさま (sakurai)
2011-05-23 10:43:00
最近は、母ちゃんエネルギーも枯渇してきて、なかなか一喝まで行かないというか、あっちも巧妙になってきてるというか。。
母ちゃん業も長くやってると、きつくなってくるのですが、ジュリエット母ちゃんは、たかだか10年ソコソコの設定でしたモン。
そのくらいきちっとやれよと!子供を嘆く前に、あんたはちゃんとやったんかい!と、まず言いたかった。

お互いに、架空の設定に身を任せ、会話を楽しみながら、己の心情をここぞとばかりに吐露した・・・という感じでしょうか。
でも、ちゃんとわかっていた・・・という大人だと思います。

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