迷宮映画館

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そして父になる

2013年10月04日 | さ行 日本映画
なるべく映画は前知識を入れたくないのだが、こればっかりは半端ない大量の報道が流れて、シャットダウンはほぼ無理。既視感たっぷりで、どう感じるんだろうという自分の気持ちに対する興味もあった。しかし、それは全くの杞憂。是枝節は、じんわりとしみ込んできた。

本当に人はそれぞれ。世界中に70億近くの人が住んでるが同じ人は二人といない。そして家族も同じ。それぞれの家族は言うまでもなく全部違う。これこそが人間社会であり、面白くもあり、大変でもあり。。。

じゃあ、よすがは何なんだろう???やはり血なのか、それとも一緒に暮らしてきた日々の積み重ねなんだろうか。。。。

6年というのは長い。大人の6年なんて、ほんの一瞬だが、子供にとってはすべてだ。過ごしてきた毎日がすべてになる。その6年という日々のすべてがひっくり返るとしたら・・・・

やむを得ずひっくり返ることもある。事故、地震、津波。。。不可抗力でひっくり返ってしまったら、あきらめるしかない、、、と思う。いや、あきらめきれないけど、前に進まなければどうしようもない。

でも、映画の場合は納得の行くもんではない。いきなりこの子はあなたの子ではありません、と言われ、取り違えだったことが分かる。悩んで悩んで悩んだ末に、血をとった家族たち。苦渋の決断をしたのは、やはり血だろう、と。それが無難な選択だとの判断だった。

なかったのは、当の子供の気持ち。子供は親の所有物じゃない。子供の意志がある。何のために生きるのか、何のための選択か、幸せになるためじゃなかったのか?誰の?子供のためのはずだ。いや、父も母も人間。自分が幸せになることを優先してもいいはずだ。

さて、幸せになるはずの選択は、一体何をもたらしたのか?

一人の人間の小さな世界で、大きな大きな選択が待ちかまえている。とるに足らない何十億の中の一人。でも、その一人一人がまちがいなくこの世界を作っている。一人の人間の小さな幸せがなくて、この世界の幸せはない。その小さな幸せを大事にしていかない今の世の中が、変な方向に行ってるんじゃないかなあ~と、いろんなことを考えてしまった。

がむしゃらに3人の子育てをし、悩む暇なく突っ走ってきた。25年子育てしてきて、やっと最近一息つけるようになった。子育てに正解などない。とりあえずどうやらみんなまっとうな感じになってはいるが、それは親のせいではないと思う。彼らが彼ら自身の持っているもんで、ゴールに向かっているんだと思う。親は、その手助けと、心配の種をなくすこと。出来るのはそれくらいだ。

それは小さな時でも同じはず。いくらちっちゃくても子供の気持ちはある。それもそれこそ千差万別。その気持ちを受け止めることができるかが親だろうなあ。

映画の話を聞いた時、「いまどき取り違え?」と、頭をかしげたが、その辺もさすがに納得。いろんな親子の姿が映されていたが、まとめ方もさすがにうまい。淡々と描きながら、がむしゃらさが伝わってきた。相変わらず刺さる。

夏八木さんのお姿を、こうやって眺めることができるのが、うれしくもあり、悲しくもあり。ケイタ君は佇まいだけで、◎。こいつ只者ではないな・・・と思ったのは、リリー家の流星君。すとんと落ちない表情が秀逸だった。

◎◎◎◎●

「そして父になる」

監督 是枝裕和
出演 福山雅治 尾野真千子 真木よう子 リリー・フランキー 二宮慶多


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4 コメント

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むずかしいですよね (風子)
2013-10-06 16:54:05
一週間とか1ヶ月だったら、そんなに悩まないかもしれないけれど、6年ですもんね。
三つ子の魂百までっていうから、充分家族なってるし。
取り違えられた親子だけでなく、様々な親子がそれとなくまじっているのがよかったです。
淡々と美しく (Kon)
2013-10-06 21:14:20
やっぱり是枝さんの映画は好きです。
人に優しく厳しくじんわり染みてくる。
リリーさんの「子供は時間だよ」というセリフがすごくよかった。
自分が普段何を思っているか、この監督さんの作品を通して知ることがすごく多い気がします。
>風子さま (sakurai)
2013-10-10 15:10:52
人間ならではだし、人間だからこそ起こってしまう問題ですね。
これから先はいったいどうなるんだろ???などとも考えさせられました。
>KONさま (sakurai)
2013-10-10 15:15:42
ですねえ。
思いっきり時間を取られました。
わたしの人生50年のうち、半分は子供だな。そんだけおっきいということでしょうか。
良し悪しですが、いろいろあるんだ!と言うことで。
お母さんになったKONさんをみてみたいですよ。

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