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ジャック・メスリーヌ ノワール&ルージュ

2010年03月09日 | さ行 外国映画
1960年代から70年代にかけて、銀行強盗、誘拐、脱獄などを繰り返し、フランスのパブリック・エネミーズといえば、このジャック・メスリーヌ。

アルジェリアの従軍から帰還。朴訥な両親のもとに帰ったものの、普通の生活には収まるような男ではなかった。血気盛んな青年が、羽目を外すのもわからないでもない。うまく行ってしまった犯罪は、彼の才能を目覚めさせた。

空き巣、銀行強盗、誘拐。自分が手を染める犯罪は、金持ちから奪うだけ。女性には限りなく優しく、仲間をいつくしみ、裏切りには容赦ない。そんな犯罪王を、ヴァンサン・カッセルが、生き生きと演じている。

どう転んでも、真面目な青年役はふられないカッセルだが、若い時の危なげな様子から、顔つきが徐々に自信たっぷりの貫禄ある人物になって行くのがよーくわかる。無軌道な感じと、男気、茶目っ気もあって、女性がほっておかない男の雰囲気がよく出てる。

話は本人も書いてる事実を忠実に再現しているが、派手すぎることもなく、それでいて緊迫感が満ちている。カナダの刑務所のまるで人権無視の様子には唖然とするが、メスリーヌの脱獄がきっかけで、改善されたというのも興味深い。

次々と女性があらわれるが、妙に人懐っこく、女性たちがほっておかない・・・という雰囲気も匂ってくる。自分の娘に見せる愛情たっぷりの笑顔は、掛け値なしだ。おまけに、若いときと、晩年のあの体型の変化のお見事さ。すげーー、役者根性だ。

「社会の敵、ナンバー1」とでっかいレッテルを貼られる。訳し方の問題になるが、『社会』といった場合と、『民衆』といった場合と、そのニュアンスはずいぶんと違ってくる。後半になって、かのブルサール警視が出てくる頃になると、『民衆』とあえて押し出していたような。そうでもしないと、警察のメンツが立たなかったのでしょう。

銀行や金持ちからからしか、金を奪わなかった・・・と豪語するが、ま、泥棒には違いないわけで、その金持ちだって、昔は真面目にせっせと働いて、金を貯めたのかもしれない。それを銃で奪うのは、紛れまもなく正義ではない。そこんとことを忘れずに見てないとならないが、何といってもカメラワークがいい。

引きで撮る、視点を変える、疾走するカメラ、縦横無尽に動くカメラワークが、映画全体に緊迫感を張りつめさせていたように思えた。

そして脇を固める豪華な役者陣。。。。ドパルデューの貫禄に、アマルリックのちょっと神経質な感じがいい。いつも脱ぎっぷりのいいリュディヴィーヌちゃんは、今回も惜しげもなく見せております。

最初から、前後編にわけ、たっぷりと見ることを前提でこっちも臨むので、心構えが違ってくるが、その期待にそぐわぬ見た甲斐たっぷりの、4時間だった。


さてさて、この映画の題名を見たときに、「あー、この人知ってる!ジャック・メスリーヌ!!」と、思ったのだが、なんで知ってるかさっぱり思い出せない。実在の人物で、フランスの犯罪王・・というのをなぜか知っていた私・・・。でも、なんで知ってるのかがわからないのが、どうにも気持ち悪かったのだが、何と思いだした!!!「ゴルゴ13」!!!

「メスリーヌの猫」という話に登場したのが、このジャック・メスリーヌだったのだ。ちゃんとブルサール(漫画ではブサールになっていた)も登場。デューク・東郷と遭遇しているではないか!!

広場の銃撃戦もちゃんと再現。さいとうたかを氏は、この話を1980年に書いていた・・・。いつもながら凄すぎます。

◎◎◎◎

「ジャック・メスリーヌ」

監督 ジャン=フランソワ・リシェ
出演 ヴァンサン・カッセル セシル・ド・フランス ジェラール・ドパルデュー リュディヴィーヌ・サニエ マチュー・アマルリック オリヴィエ・グルメ


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8 コメント

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嬉しいのは… (KLY)
2010-03-11 22:12:16
変に時間空けないで同時上映ってのがありがた
かったです。この直後にデップのを見たんで、
いかにもフランス的なのと、いかにもアメリカ
的なのとが対照的で面白かったです。もっとも
脇役は個人的にこちらに軍配ですが。(笑)
>KLYさま (sakurai)
2010-03-12 11:33:56
そうそう。
えーー、一本ずつ金払わないとならないの!と、ちょっと不満気味だったのですが、時間の都合上、二日に分けて見なければならなかったので、ちょうどよかったです。
たっぷり時間をかけて、じっくり作ったというのが感じられる力作だったと思います。
見てる人は、おっさんだけでしたが・・・。
あたしもかなりおっさん化してるかな!
わあ~~! (mezzotint)
2010-04-06 00:10:53
そうなんですよ。多分シアターの都合?
なんかで一度に上映出来ないようです。
そんなことで来週にまたがります。
パート2はマチューが出演しているので
楽しみです♪おぉ~やはりおじさんが
多かったんだ!こちらもおじさんが大半
でした(笑)
>mezzotintさま (sakurai)
2010-04-06 09:26:04
アタシは時間の都合で、翌日に見たのですが、忘れないうちの鑑賞でよかったです。
最近は、一週間以上覚えてられない・・。
後半は皆さんお待ちかねのマチュー登場ですもんね。
結構キュートな感じでした。どうぞお楽しみに。
またまたお邪魔♪ (mezzotint)
2010-04-17 11:56:00
sakuraiさん
何度もおいで頂き恐縮です!
ようやくパート1・2鑑賞終了しました。
マチューはやっぱり良いですね♪
ヴァンサン・カッセルは苦手なキャラ
でしたが、今回見直しました。
社会の敵NO・1を見事に演じて切って
いましたものね。
>mezzotintさま (sakurai)
2010-04-19 15:56:13
いやいや、いつもTBありがとうございます。
マチューさん、結構人気がありますね。
どこかイッテル雰囲気は、ひきつけられます。
今回のヴァンサンは、圧倒的でしたね。
役者根性も凄かったと思いますわ。
カッセルの (miyu)
2010-05-26 20:26:24
体つきの変化といい、カリスマ性といい、
とてもハマり役でしたねぇ~。
でも、本当脇役も豪華で、見応えありましたね!
観ているとついついジョニデのが思い起こされて
しまいましたけど。
>miyuさま (sakurai)
2010-05-27 19:41:28
なんか、あの堂々とした体躯は、お見事にぴったりでした。
カッセルさんって、なにかがでかいですよね。
なんでしょ??
ちょっとジョニーさんのパブリック・エネミーがかすんでしまいましたよ。

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