迷宮映画館

開店休業状態になっており、誠にすいません。

ミケランジェロの暗号

2011年11月13日 | ま行 外国映画
うーん、聞くからに傑作の匂いのぷんぷんする作品の予感がしてたのだが、あたり。お見事な一本だった。こういうのが見たかった!と言うつぼをぐりぐりと刺激してくれる。ドイツならではの題材を、うまーく料理している。

冒頭、暗い中に一斉射撃をくらった飛行機。撃っているのはパルチザン。と言うことは狙っているのはナチスの飛行機だ。一体、何がどうなったの??という展開の中、物語は戦争前にさかのぼる。ひたひたと軍靴の足音が忍び寄る頃、ウィーンのユダヤ人の画商、カウフマンのところにも、いろいろといやがらせがあった。

父の仕事を手伝うヴィクトルには、使用人の息子のルディという親友がいた。ヴィクトルがユダヤ人としていやがらせを受けていても、ルディは変わらず彼を守りっていた。

カウフマン家が所有していたお宝があった。それこそ、400年前にバチカンから盗まれたと言うモーセを描いたミケランジェロの絵。ありかを知っているのは、カウフマン家の人たちとルディ。そして戦争が始まると、ナチスの政権下におかれたオーストリアはユダヤ人狩りを始める。

財産を没収し、収容所に入れる。。。カウフマン家も同様であったが、まずはカウフマンが所有しているミケランジェロを手に入れねば!ナチスがやってきた。その中には、あのルディもいた。。隠し部屋まで知っているルディ。もうミケランジェロはヒトラーのものになってしまう・・・と誰もが思ったとき、絵はなかった。

絵を渡せば、無事に出国させてやる・・・との言葉を受けて、絵はナチスに渡るが、出国どころか、カウフマン一家は、収容所に入れられてしまう。しかし、その絵は贋作。父が、これらのことを想定して、贋作を用意していたのだ。本物の絵のありかはわからないまま、父は亡くなる。

ヒトラーは、ムッソリーニとの同盟のために、どうしてもこの絵を探しだして、同盟の絆の証としたい。何としても見つけ出そうと、再度、収容所にいたヴィクトルを問いただす。母が生きていると知ったヴィクトルは、母を助け出すために一芝居うつ。スイス銀行に絵はある。しかし、母と自分のサインがないと金庫はあかない。なんとかして国外脱出を図ろうとする。

母はなんとかしてスイスに行った。問題は、自分だ。ここが冒頭の飛行機の襲撃。ここからの怒涛の展開は、見ていただくことにして、ユダヤの収容所に・・・と言うと、悲惨な希望の灯りのさっぱり見えない、どよどよ~んとなるものが多い中、この作品の痛快さは気持ちのいいくらい。

作品に【暗号】なんてあると、そこ何が隠されているんだ!!とついつい裏読みしてしまいそうになるが、そんなもんじゃなく、そのときの立場や社会状況、あとあとの展開等々、うまーーく、身を処して生きてくユダヤ人のしたたかさが、とにかく面白くてしようがない。

これ見ながら、その昔の傑作、「僕が愛した二つの国 ヨーロッパ/ヨーロッパ」を思い出した。監督は、絶対これからインスパイアされたんだと思う。あっちは子供のユダヤ人が、ポーランドと、ソ連と、ドイツをその時々の運命に操られるように、潜り抜けて生きてくものだったが、あの痛快さをすっかり思いだした。

最後のヴィクトル@モーリッツ・ブライプトロイのどや顔がスカッとするお見事な作品だった。いやーー、面白かった。肝心なところは是非、見てください。

◎◎◎◎○

「ミケランジェロの暗号」

監督 ウォルフガング・ムルンベルガー
出演 モーリッツ・ブライプトロイ ゲオルク・フリードリヒ ウルズラ・シュトラウス


最新の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (KLY)
2011-11-13 23:29:38
勿論ナチスといえば悪逆非道な描写が多いですし、
実際この作品でもそういう面はありました。
ただ、そこを逆手にとって笑わせてくれるような
シーンの数々がまた楽しい。
まあヨーロッパの方々の中には嫌な感覚を抱く人
もいらっしゃるのかもしれませんけども。^^;
最後のドヤ顔もいいんですが、相手もあまり悔し
そうでもないというか、やられた顔というか、そ
の辺がいわゆる「最高の敵」なんでしょうね。
>KLYさま (sakurai)
2011-11-15 15:04:33
同じ戦争中のことを描かせても、ナチスものを描くあちらのものは、余裕すら感じさせますよね。
自虐的な部分もありますが、冷静にきっちりと状況を理解しているからこそ描けるんでしょうね。
最後は、やったーー!!てな感じでした。すっきり。
狸に化かされたような、それでいて、心地いいだまされ方みたいな終わり方が、またよかったです。
ユダヤ人のイメージ (mezzotint)
2011-12-12 18:29:07
たくましくてユーモアがある人たちでしたね。
今までは暗くて辛いとか苛酷なものが
多かったけど、、、、。
カウフマン家、やったり!と最後は拍手もん
でした
>mezzotintさま (sakurai)
2011-12-15 20:32:34
そうですねえ!どんな時でもしたたかで、ユーモア忘れず、なんとしてでも生き抜くぞ!と言うのがよーくあらわれてました。
傑作だと思いましたよ。
面白かった~ (マリー)
2012-01-24 22:34:00
こんばんは~~♪
ごめんなさい~コメント書いたつもりでした・・・TBだけだった?あれれ。。。

さて本作、本当に面白かったです。
ナチもので面白いってどうだろって思ったりするけど、面白い!しか浮かばない。
だって何度も笑ったもの~。
あんなに簡単に入れ替わるなんてあり~?それがことごとくうまくいくなんてあり~?
でもそれがおっけ~っていうのが素晴らしい。

ラストのドヤ顔にやられた!!あ~すっきり!(笑)
>マリーさま (sakurai)
2012-01-27 20:20:09
いやーー、お気に召してもらったようで嬉しいです。ってアタシの作品みたいなこと言っちゃって!
ナチものって、ドロドロのものも多いですが、結構自虐的だったり、自分で自分を笑ったりするものも多いかも。
この辺が、日本が戦争を描くのと全然違うとこなんですよね。
入れ替わると言うか、立場が変わるとまるで変わっちゃうみたいな話で、「ヨーロッパ/ヨーロッパ 僕が愛した二つの国」というのがあるのですが、なかなかお奨めです。
雪はもうじゅうぶん。 (hori109)
2012-02-04 18:03:14
ユダヤ人とアーリア人が(ある一点をのぞいて)区別がつかない
というあたりの皮肉はさすがでしたね。

機知のあるストーリーの積み重ねが、ユダヤ人差別のばかばかしさを
払拭するときが来ると信じましょう。
あ、だからハリウッドはユダヤ人が。違うか。
>hori109さま (sakurai)
2012-02-06 12:56:42
ほんとに面白かった。
こういう話を作らせると、ドイツの方々のセンスのよさを痛感します。
日本が戦争の映画を作っても、粋な作品は絶対に出来ませんもんね。

あ、なぜにハリウッドはユダヤ人なのかってのは、究明してます。
どこかに載せよう。
これは面白かった (maki)
2012-12-20 09:18:05
こんにちは♪
これは面白い作品でしたね~!
ヴィクトル@モーリッツ・ブライプトロイのラストのウィンクがたまらなくいいです。
ブラックユーもアナ展開とテンポのよいスピード感あるストーリー、二転三転する二人の男の入れ替わりが面白さを倍増させてましたね
なによりナチスものなのに悲惨さがあまりない、カラッとしているのがとてもみやすくていいです
>makiさま (sakurai)
2013-01-04 11:07:45
よく出来た作品でした。
人間そう変わんないのに、何をそんなに違わせたいんだ!みたいな。
痛快な終わり方が、すきっとしました。
また見たくなってきた。

コメントを投稿