イエローエンゼルの 小説集

明るい未来に歩いていこう
日々世の中の動きに目を向けつつ、希望をもって生きて行こう

書き直し『比翼塚』15

2016-12-28 00:47:15 | 創作
カンナの恋
眉山葉子
眉山葉子


その時、ウエイターがタコライスセットを運んできた。

「いただきましょう」と彼は言い、「それにしても、どう見たって、二十四、五にしか見えませんよ」と、順二は言った。

スミレはその言葉で、順二の年齢を計っていた。自分の半分に見えると言ったので、二十四の倍なら四十八歳かなと思った。順二のことも若く見える。スミレは四十三歳くらいと思っていた。

順二にはっきりと妻がいて子供がいると判明して、多分そうだと思っていたのだけれども、頭に血が上ってしまった。順二が今日の試合は、世界の強豪レアルマドリッドと、鹿島アントラーズの試合であると、ご飯を食べながら教えてくれているのに、相槌を打ちながら、心の中は、今夜こそこの人を家に招待しようと考えていたのに、どうしたらいいのかと、その事ばかりを考えていた。

順二は、サッカーの説明の合い間に、

「ご主人は、病気で亡くなられたの?」と聞いて来た。

「ええ、すい臓がんで、気が付いたときはもう手遅れでした」

「それから、ずーと一人でいられるのですか?」

「ええ」

「お付き合いした人もいない?」

「はい」

「それは、もったいない」と、順二は軽い調子で言った。

「いいえ」とスミレは答えていた。そう答えたものの、スミレ自身、何が「いいえ」なのか、自分でもわからなかった。

食事を終えると、順二はタクシーを拾い、サッカーの競技場までスミレを連れて行ってくれた。もう日が暮れてすっかり暗くなっていた。
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