Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

くじらと共に、「時」を旅する

2017-10-11 | Weblog
写真は、Tシャツの表のプリントである。
クジラの骨格の絵。
下の文字は、アルファベット。

Whale Skeleton
TAIJI
WHALE MUSEUM

つまり、太地の鯨博物館へ行った人の、おみやげである。
かなり前だと思う。
プレゼントにもらった。
私がくじらマニアだということは、近しい人は昔から知っている。

この骨格は、セミクジラだ。

気に入って着ていたが、さすがにもうよれよれだし、プリントされた字も絵も褪せて、消えかけている。
ここ数年は、アンダーシャツとしてしか着ていない。

この夏、初めて太地に行ったさい、その博物館で同じ物を買おうと思った。
土産物売り場で、シャツは、売っていた。
しかし同じデザインのものはなかった。
売っているものは、子供っぽかったり、今風でありすぎたり。
こんなすっきりしたデザインのものは、ないのであった。
何も買わなかった。
買えなかった。

………

クジラのことを調べていて、いつも感慨深いのは、彼らが常に海洋を旅しているという事実である。
たいていのヒゲクジラは、一年に地球を半周くらいの距離は移動する。
毎年である。
旅が人生なのだ。

ニンゲンは、家などに住んで、定住しているつもりでいるが、本当にそうだろうか。
私たちも旅しているだけではないのか。
この夏、二ヶ月あまりの間に、東京の家に居た期間は、十日に満たない。
そのことになんの感慨もない。
長く生きている間に、旅に慣れてきたということもあるかもしれない。
いや、そうではなく、生きているということは、ただ、流されているだけだという認識が、強くなっているからかもしれない。
旅が人生だ。
人生が旅だ。
その旅は、どこかに行くという種類のものではない。
いつか帰ってくるためでも、ない。

私たちは、「時」を旅している。
旅は、ひょっとしたら、ひとり旅かもしれない。
でも、道連れは、いる。
思いがけず、大勢、いる。
どこからかやって来て、いろいろな出会いを得て、そうして自分の「時」を旅して、またどこかに消える。

今年は、多くの海を見た。
太地以外は、それぞれ、何度目かの、海である。
そうしているうちに、海が私に感じさせるものが、「時」だということに、気づいた。

このシャツを太地の博物館で買ってきてくれた彼女は、もう旅を終えている。
まもなく一周忌になる。
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