Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

国連書簡の否定はこの国の孤立への道

2017-05-23 | Weblog
人権状況などを調査・監視する国連特別報告者で「プライバシー権」を担当するジョセフ・カナタチ氏が、18日付で安倍首相に書簡を送った。
共謀罪法案について「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」と指摘するものだ。
「法案の成立を急いでいるため、十分に公の議論がされておらず、人権に有害な影響を及ぼす危険性がある」としている。

菅義偉官房長官は22日午前の会見で、国連特別報告者が書簡を安倍首相に送ったことについて、「不適切なものであり、強く抗議を行っている」と述べたという。

菅官房長官は「特別報告者という立場は独立した個人の資格で人権状況の調査報告を行う立場であり、国連の立場を反映するものではない」というが、「国連人権理事会の特別報告者」という役職の立場の対応で、カナタチ氏は「個人の資格」でものを言っているわけではない。

菅官房長官はこの書簡に対し「政府や外務省が直接説明する機会のないまま、公開書簡の形で一方的に発出した」というが、安倍首相に送ったものを公開するのは、形式としてはたんに公正を期しただけであろうし、公開すべきだと判断したからそうしたのだ。そもそもこうした判断を招いた日本政府のやり方に問題があるのだ。

菅官房長や外務省が「強く抗議を行った」というが、それがどのような形でなされたかを国民としては知る権利がある。日本が国連に対してさらなる失態を晒しているかも知れないからだ。
ケナタッチ氏は、法案について評価し、質問を行っているのであり、見解や説明を求めている。批判のための批判をしているわけではない。
菅氏が「プライバシーの権利や表現の自由などを不当に制約する恣意的運用がなされるということはまったく当たらない」と「正当な抗議」をしたというなら、その「まったく当たらない」ことを証明する内容をぜひ国民にも示していただきたい。

政府は、本23日にも衆議院で法案を採決する構えのようだが、まず国連からの質問に答えるべきだとする識者が多いのは当然である。国連を説得してから出直すべきである。

菅官房長官は、「法案は187の国と地域が締結する(テロ対応の)条約の締結に必要な国内法整備だ」と、マスコミには相変わらず無内容な反論を展開しているが、これについてはカナタチ氏の言を待つまでもなく、国内で既に論理破綻が指摘されている。

京大の髙山佳奈子教授は「この法案は実はテロ以外にしか適用されない。テロ対策の法律は2014年までに整備が終わっているので、テロ以外のものしか残っていない。テロ対策にはまったく役に立たない内容ということが、国民にほとんど知られないまま強行採決されようとしているのが問題」と、あらためてテレビ番組で語った。
まったく「必要」ではないのだ。
この簡単な事実が、多くの人に共有されていないことが問題だ。

写真は、去年9月の高江N1ゲート前テント。
政府は、米軍基地建設に反対・阻止のための直接行動が、「新共謀罪」の対象になると明言した。
山城博治さんの拘留はその前倒しの「暴挙」だ。

アムネスティも山城さんの拘留を人権侵害と認定していたが、今回、国連まで蹴飛ばして、この国の暴走は留まることを知らない。

国連書簡の否定は、この国の、世界からの孤立への道への一步だ。「共謀罪」問題以上に、この国の姿勢自体が問題といえるのだ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« トビウオは本当に海面を飛ぶ... | トップ | 共謀罪にストップがかかった... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事