じゃがブログ ~さいとう小児科~

じゃが院長のつれづれ日誌をメインに、趣味(合唱・囲碁・絵)や道楽(温泉・ラーメン・酒)にまつわるエッセーを掲載。

「蝉しぐれ」映画版

2007年04月06日 | ◎映画のこころ
テレビ版ですっかりイメージが出来上がってしまっている「蝉しぐれ」ですが、一度は映画版も鑑賞しておこうと思い、借りました。

テレビ版は、43分×7話=301分もあります。それを映画版では131分で仕上げてありました。・・・正しくは、仕上げた「つもり」になっていました。

原作の藤沢周平の小説は、文庫本でもかなり厚みがあり、読み応えがありました。細かな情景が、まるで目の前で繰り広げられてでもいるかのように描写されていました。いつもの設定「東北のとある城下町」(海坂藩)ですが、言葉が完全に標準語になっています。これは、「たそがれ清兵衛」のときの庄内弁のような郷土の情感にあふれる言葉遣いからみると、ちょっと違和感もありますが、まあ、あんまり方言にこだわると「字幕」が必要になってしまいますから、今回は筋書き中心ということで気にしないことにしました。

で、映画なのですが、ストーリーが随分端折ってしまわれましたね~。秘剣「村雨」の伝授のことはカット。宿敵、犬飼兵馬との因縁の勝負も、あっさりと片が付いてしまいました。竹馬の友、小和田逸平と島崎与之助についても、逸平にはいつも「腹が減った」としか言わせないし、与之助が剣はからっきしダメだが学問の才に優れているのを、妙にひょうきんなキャラに置き換えてイメージを損なってしまっている。。。

「ふく」とその子を川船で連れて逃げるシーンも、身を隠すものを何もかけず、ただ舟にしゃがみ込んでいるだけ、というのもヘン。しかも、橋の上の与之助と目を合わせて頷きあえるくらい明るいときたもんだ。そりゃないでしょ。

「ふく」役の木村佳乃・・・すぐ前に「寝ずの番」を観てしまったのもあるけど、ちょっと私のイメージの「ふく」とは違いました。顔立ちだけでなく、台詞回しが時代劇になってない感じがしました。これはやはり、テレビ版の「ふく」、水野真紀の和風な顔立ちや粒立ちの良い日本語に軍配を上げたいと思います。

「ふく」が仏門に入る前に文四郎に逢うとき、すでに亡父、牧助左衛門の名前を貰って名乗っていたはず。そのあたりのことはすっかりカットされていました。持ち時間が足りないので、どうしてもいろんなところを削らざるを得ないんでしょうが、あまりに説明不足だと、ストーリーが見えにくくなるだけでなく、映画全体が味わいの薄いものになってしまいます。

義父役の緒方拳、テレビでは勝野洋が演じていましたが、さすがに年齢設定に無理があるんじゃないかと思いました。もちろん、勝野洋のほうが似合う。義母役の原田美枝子もちょっと浮いていた感じ。テレビの竹下景子のほうに生活感を感じました。

テレビで横山家老(善玉)を演じた柄本明が、映画では欅(けやき)御殿の警護の武士になってたのには、アレレという感じ。

文四郎の剣の先輩、 矢田作之丞。助左衛門と一緒に詰め腹を切らされたのですが、その妻淑江の描かれ方がずいぶんあっさりしていて、あれでは何のための設定なのか分かりませんでした。これは、矢田作之丞そのものの印象が薄いからでしょうね。

テレビ版では、絶えず「蝉しぐれ」の降りしきる中での回想シーンが、物語の「今」と「昔」の違いのメリハリになっていて、うまい構成だと思いました。それと、背後に流れる音楽、モンゴルの独特の発声法による「ホーミー」も大変印象的でした。

いろいろ役者評をしてしまいましたが、なんといっても一番の違いは、文四郎役の市川染五郎と内野聖陽。キリリとした武士の気概を体中から発散する内野文四郎と、どこか良家のボンボン風な市川文四郎とでは、ご本人には失礼ながら、圧倒的に内野文四郎が勝っていました。

内野聖陽は、初めて観たのがNHK朝の連ドラ「ふたりっこ」で、将棋のプロ棋士の役でした。主人公の女流棋士と結婚・離婚し、最終回では将棋のプロ同士として主人公との対局に臨む、といった役回りでしたが、まだその頃はさほど注目しておりませんでした。

その後もいろんなドラマで活躍を続けていたのでしょうが、私にはなんといってもこの牧文四郎こそが、内野聖陽の分身ように思えるくらい印象が強烈でした。そういえば、大河ドラマで主役の山本勘助を演じていましたね~。忘れるところでした。私は日曜の夜は合唱練習でほとんどこの時間は不在のため、一度も観たことがないんです。

藤沢周平映画は、「たそがれ清兵衛」・「隠し剣鬼の爪」のDVDを買いました。「蝉しぐれ」は残念ながら、買うならテレビ版ですね。キムタクの「武士の一分」もDVD予約済みです。

今月末には、藤沢周平ゆかりの湯田川温泉へ、土地の名産「孟宗竹」を食べに出かけることになっています。今から楽しみです。

 木の芽がまたいっそう膨らんできた感じがします。桜はまだかいな~。
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