さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

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さいたま赤十字病院局所麻酔下胸腔鏡2015年

2015年12月09日 | カンファレンス室

当科では2007年12月より局所麻酔下胸腔鏡を施行しています。局所麻酔下胸腔鏡は原因不明の胸水貯留疾患の診断目的に行う検査です。当院のような地域中核病院では、胸水貯留例全例に施行するわけには行かず、胸水検査などで診断のつかない症例に限定して行っています。過去7年間に約50例(年平均7例)の局所麻酔下胸腔鏡を行ってきましたが、何故か今年2015年は21例と今までになく多数例に局所麻酔下胸腔鏡を行いました。悪性胸膜中皮腫など胸膜悪性腫瘍診断に対する積極性が理由の大半かとは思いますが、原因不明の胸水貯留例に対して可能な限り確定診断したいという呼吸器内科医の気持ちも理由のひとつかと思います。

2015年に施行した局所麻酔下胸腔鏡21例の診断結果は、①悪性胸膜中皮腫が3例、②癌性胸膜炎が3例(肺癌が2例、乳癌が1例)、③結核性胸膜炎が3例、④良性石綿性胸水が3例、⑤細菌性胸膜炎(膿胸)が2例、⑥腎性胸水が2例、⑦非特異的胸膜炎が5例でした。胸腔鏡を施行してみると、多種類の疾患が診断されていることがよくわかります。決して悪性胸膜中皮腫ばかりではないのです。今後問題になってくるのが良性石綿性胸水、非特異的胸膜炎の計8例かと思います。良性石綿性胸水症例、本当に良性でいいかどうかは経過を見なければ分かりません。今年の3例においては今のところ大丈夫ですが、過去には胸腔鏡後に悪性胸膜中皮腫(desmplastic type)と診断された症例がありました。また、非特異的胸膜炎、本当の原因は何なのでしょうか?今のところ不明と言わざるを得ません。実を言うと5例中1例が胸腔鏡後に肺癌(癌性胸膜炎)と診断されました。非特異的炎症だからこそ、他の原因が隠れているかもしれない、厳重にフォローアップしなければいけないグループかと思います。肺癌と診断された1例を除く7例に対して、今後厳重に経過観察していきたいと思います。

局所麻酔下胸腔鏡の限界があるのは間違いないですが、2015年の症例においても21例中13例(60%以上)で確定診断出来たわけですから、胸水貯留疾患においては有用なツールであることは間違いないと思います。検査自体も安全性が高く、1時間弱で検査を行うことが出来るので、まだ施行していない施設においては、是非ともトライしていただけたらと思います。

 

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