内容紹介
他者による救済の宗教である浄土教が、なぜ自覚の宗教である仏教の中に生まれ、発展し展開していったのか、その思想史を歴史的社会的影響を踏まえ解明する。
浄土や念仏の世界思想史に関わる様々な問題を提起した仏教再考の好資料!
………………………………………
著者: 松岡由香子
体裁: B6判
定価: 2500円+税
総頁:276頁
ISBN 978-4-903470-75-7
刊行年: 2013年10月11日
もくじ
第一章 原始経典の天界往生
一 初期経典の天界往生話とその批判
二 信と天界往生
三 ヒンドゥー教への後退
四 後期経典における出家者の生天話と天界の変貌
第二章 弥勒伝承とヒンドゥー教
一 弥勒伝承の原型
二 元来はゴータマ・ブッダの教えではない慈悲喜捨
三 ヒンドゥー教バーガヴァタ派の慈悲の教え
四 ペルシア宗教とバーガヴァタ派
五 仏教における梵天(ブラフマン)思想の受容
六 初期大乗経典に至る弥勒伝承の展開
第三章 西アジアから来た阿弥陀
一 阿弥陀伝承の核心
二 ミスラ信仰と阿弥陀原伝承
三 アナーヒターと観音
四 ペルシア宗教との接触の歴史的可能性
五 東方と西方に流布したペルシア思想
第四章 大乗経・論における阿弥陀伝承の批判的摂取
一 削除された初期無量寿経の諸伝承
二 阿弥陀原伝承と諸大乗経典の不協和音
三 『阿弥陀経』と後期無量寿経の阿弥陀伝承
四 龍樹は阿弥陀信仰者か
五 世親『願生偈』から後期無量寿経の四十八願へ
第五章 曇鸞における空思想と無量寿経
一 慧遠の観念仏と般若思想
二 曇鸞の挫折と長生の法
三 「往生」とはどのようなことか
四 「誰」が往生するのか
五 「何処」へ往生するのか
六 「どのようにして」往生するのか
七 浄土に往生したら「どうなるのか」
八 難点のある難行道
第六章 唐代の阿弥陀原伝承への回帰
一 主流仏教と『観経』
二 道綽による末法時代の浄土門
三 臨終往生の復活
四 善導の偏依『観経』
五 感覚的な欣求浄土・厭離穢土
松岡由香子・まつおか ゆかこ
1945年静岡県に生まれる
京都大学農学部中退、同志社大学神学部卒業、京都大学文学部修士課程、同博士課程満期終了
現在:日本キリスト教団牧師、花園大学非常勤講師
著書:『親鸞とパウロ』(筆名:真木由香子、教文館、1988)、『古仏道元の思惟』(花園大学国際禅学研究所、1995)、『道元(大乗仏典 中国日本篇23)』(共著、現代語訳担当、中央公論社、1995)、『総ヒバクの危機?いのちを守りたい』(共著、游学社、2001)、「恵能と仏性」(禅文化研究所紀要第31号、2011)ほか論文多数