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書評 “マスコミはなぜここまで反日なのか” 

2017-11-06 16:37:01 | メモ帳

ケント・ギルバート氏の著作“マスコミはなぜここまで反日なのか”(宝島社)は、日本のマスコミの偏向ぶりを概観するとともに、一部のメディアが反政府的観点で編集されている背景を詳細に説明している。

本書のキモの部分を要約すると次のようになる。

1945年、日本を占領した米軍は日本人を思想的に改造する War Guilt Information Program(WGIP 戦争に対する贖罪意識を植え付ける宣伝計画)活動を行った。具体的には、新聞・ラジオ(NHK)はすべて占領軍の下部機構である民間情報教育局(CIE)の意向に沿って報道するよう命じられたのである。

GHQ(連合国総司令部)が定めたプレスコード(べからず集)は、GHQが日本国憲法を起草したことに対する批判、戦勝国への批判、朝鮮人への批判、などの30項目にわたっている。

そして、各新聞はCIEが作成した「太平洋戦争史」を連載するようよう命じられた。その内容は、戦争当時の事実を歪曲し、それ以前の日本政府の行動をすべて悪と決めつけるものだった。その結果、日本人は完全に洗脳され、マスコミは反政府的主張を述べることが当たり前になった。

WGIPはこれまでにも読んだことがあるような気がするし(ことによると、ギルバート氏の著作で知ったのかもしれないが)、特に目新しいニュースではない。しかし、日本のマスコミ(特に朝日・毎日・東京・日経の各紙とNHK・TBSの2局)が反安倍内閣を基本とする論調であることとWGIPを結び付けた論旨には、ある程度説得力がある。

マスコミ各社の反安倍政権的態度には、憲法改正(特に9条)をなんとかして阻止しようという姿勢が窺えるが、ギルバート説によれば、9条改正反対という主張はWGIPに洗脳されている証左だ、ということになる。

ギルバート氏の主張には、ひとつだけ矛盾がある。それはWGIPに洗脳された人々は、すでにほとんどこの世から消えているという点。私も小学生のころ、WGIPの一環だった “真相はこうだ”というラジオ番組を何度か聴いた記憶があるが、内容は覚えていないので、洗脳されたはずがない(笑い)。実際問題として、私は9条改正に賛成である。

だが、現実にはマスコミの態度はWGIPに今でも汚染されているとしか思えないから、先輩の思想を脈々と受け継いでいると考えればなんとかつじつまが合うが...。

さて、読売新聞だけは安倍政権に対し中立として、なぜ産経新聞だけが蚊帳の外なのかについて、私はこれまで他社との差別化を図る経営戦略によるものと理解していた。しかし、調べてみると産経新聞の実質的創刊は昭和30年であり、戦争直後に実施されたWGIPに汚染されなかったことも理由なのかと思い当たる。

ところで、ギルバート氏はWGIPばかりを論じているのではない。沖縄問題や加計学園問題におけるメディアの偏向報道も批判している。すなわち、報道しないこともしくは報道量を一方的に調整することによる情報操作である。社説で主張を述べるのはいいが、その他の部分で情報を操作するのはマスコミとして正しい態度とは言えない、というギルバート氏の意見には全く同感である。